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木漏れ日は光のダンス

立春らしい暖かい日になりました。
そこで春らしい暖かい話題を。

私と親しい方はそろそろ聞き飽きたかと思いますが。私が大好きな木漏れ日の話です。

木漏れ日という言葉って英語でなんというでしょうか?実は一対一で対応する英語も熟語もないそうです。Oxford Blogに興味深い記述があるので抜粋します。

Komorebi: This word refers to the sunlight shining through the leaves of trees, creating a sort of dance between the light and the leaves.
この(木漏れ日という)言葉は、木の葉の間に輝く日の光、そしてそこに創出されるダンスのようなものを指している
―― OxfordBlog, 15 Japanese words that English needs

日の光のダンスとは素敵な表現ですね! 

普段私たちが何気なく使っている木漏れ日という言葉、その概念自体が日本独特のもののようです。
平明で美しい日本語に気づくたび誇らしい気持ちになったりします。(自分が偉いわけではないんですけどね笑)


さてこの木漏れ日ですが、私が携わっている仕事、外部の庭や門周りではとても大切な材料の一つです。
料理を作るのに砂糖や醤油が必要なのと同じくらいに大切な材料だと思っています。砂糖や醤油というより「お出汁」に近いかもしれません。美しい木漏れ日は日本料理の出汁のように屋外の空間に深みをましてくれるのです。
パックに入った鰹節よりも削りたての鰹節でとった方が香り豊かなだし汁が取れるように、木漏れ日にも種類があります。どういう木を選ぶと美しい木漏れ日で庭の景色を美しく彩れるのか。
まず断然落葉樹の方がきれいです。落葉樹というのは今の季節葉が付いていない木のことです。現在葉っぱが付いていない木にまずは注目しておいてください。春頃芽吹いてきた頃観察して見ると葉っぱの雰囲気が良くわかります。
現在葉っぱが青々と付いている木は常緑樹と言います。
常緑樹の下に立ってみるとわかりますが、木漏れ日というより「木陰」「緑陰」という感じで、暗い木陰になっています。葉っぱの厚みが厚くて、葉っぱの密度が高いので暗くなるのです。風に揺れる感じもあまりありません。
(中には柔らかい枝ぶりの常緑樹もありますが、葉っぱが分厚いことに代わりはありません)
さて、庭の景色の良い「お出汁」となるような木漏れ日を作る樹種はというと……。落葉樹の中でも
1.葉っぱが薄い
2.葉っぱが細かい(もしくは紅葉のように割れ目のある形をしている)
3.枝がしなやか
この3つの条件を満たしていると木漏れ日が美しくなります。
それはもう、細い金の糸が降ってくるような木漏れ日になります。

私が思う木漏れ日の女王と言える樹種は

コハウチワカエデ(カエデ系は全て綺麗ですが、現代の住宅に良くあうのでこの樹種をあげました)
カツラ
の2種類です。

木漏れ日の写真を撮ろうとすると逆光でなかなかうまくいかなかったので、カツラの木の下に立って見上げた様子をイメージしたスケッチを書きました。カツラは葉っぱが黄色味を帯びていて、薄く、ハート形をしているのが特徴です。可愛らしい感じの葉っぱです。木漏れ日が美しいだけでなく、葉っぱが甘いキャラメルのような香りを発するのも特徴的です。

自然樹形が楕円形に成長するのも紅葉が美しいのも素晴らしいオールマイティな樹ですが、現代のお庭に良く似合う株立ちの樹形は人工的に植木屋さんが作らないとできないのがちょっと使いづらいところではあります。
庭木としては成長が早い方なのも使う場所を選びますが、広めのテラスの真ん中あたりにシンボル的に植えるのにはもってこいの素敵な樹種です。

お庭に植える木を選ぶとき、花や実に目が行きがちですが、木漏れ日の繊細さにも目を向けて見ると違った視点で植木が選べると思います。

ちなみに良く庭木で植えるヤマボウシとハナミズキは落葉樹で、花が美しいので有名な木ですが、葉っぱが落葉樹のわりには分厚くゴワゴワしていて、密集しているため木漏れ日的にはあまりお勧めできる木ではありません。

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