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センスは経験の蓄積だ

「頭がいいですね」
「センスがありますね」
「美人ですね」
「優しいですね」
「強い人ですね」

自分が言われたら嬉しいであろう「人間の女性を褒める言葉」をあげてみた。

そもそも褒められたい言葉でこの5つが上がること自体に自分の人生の優先順位が見て取れる気がする。

この中で一番言われて嬉しいのは「センスがありますね」なのだ。

断然! 私は物心ついた頃から「センスがないと思われない」ためにどうしたらいいかばかり考えているような子だった。

例えば中学の頃にはセンスのいい文房具を持っていたら男の子に振り向いてもらえるって本気で思って、自分でかっこいいと思うペンケースを買った時にはわざと人目につくような所に置いてみたりした。これは完全に中学生男子の男心のリサーチ不足。特に私が好きになったスポーツマンタイプの男子は筆記用具なんてかければよくて、まして隣の席の女の子がどんなペンケースを持っているかなんか興味のかけらもなかった。ってことくらいあれから40年近く経てばさすがに理解できる。

まあ、これは今となってはおバカな笑い話だが、その後の人生で何かを選ぶ時いつも基準としてきたのは「センスがいい」かどうかだった。

センスというのは服装のことだけでは、もちろんない。服装は色の配色とバランスを押さえるくらいで、むしろ流行を追うのは「センスのない生き方」って思うタイプなので。一般的に私のことを「洋服のセンスがいい」と思っている人は少ないかもしれない。

やはり一番「センス」が気になるのは空間。

仕事柄当然といえば当然。自分が作る空間はもちろんだけど、訪れるお店なども「センス」がないと思う所はできるだけ避けたいほうだ。

で、みんな気を使ってくれるのか「珠緒さんってセンスいいですよね」と言われることは確かに多い。真に受けてはいけない。日本人は忖度な民族だから。でもセンスが悪い方じゃないんだろうとは思っている。

で、その「センス」なんだけどあたかも生まれつき、才能みたいに思っている人が多いと思うけれど、私は圧倒的に後発的に身につくものだと考えている。

つまりどれだけ多くの「良質な空間」を意識して経験したか

それがその人の空間的センスに繋がると思っている。

大事なのはただ経験するのではなく「意識して経験」すること。

これは特別な所に行かなくてもできる。

数分前に私はこのnoteの記事を書くために適当な写真を自分のアルバムからピックアップした。まずこの「適当な」写真を選ぶ時にある「意識」があった。センスの話をするのだから、センスが良さそうな写真。でも特別な何かを意味しないような写真。それで数ヶ月前に撮った夕焼けの写真を選んだ。
実はこの写真は縦長のアングルなのだ


これが写真の全貌である。でも、noteの仕様で横長にトリミングしないとならない。どこをトリミングするか? 都市の夕焼けということを意識してもらうために建物を少しだけ入れた。そしてトリミングされたのが、トップの画像だ。別にこれが最良の選択かと言われると疑問だけれど、たかだか一枚のトップ画像を選ぶのにも2段階の「意識」があった。noteを書いていなければ、こんなこときっと考えもしなかったし、noteに何か画像をつけるって自分のルールがなければ、こんなことは考えもしないと思う。

少し大げさだけれど今日私は空間を切り取るということについて一つ意識を持って決断をした。これは経験だ。もちろん他の仕事もしたのでその中でもいくつか経験をしている。その分昨日よりちょっとだけセンスがよくなったはずだ。

そう、ちょっとしたことでいい。

例えばお気に入りのカフェ。気になる写真集。どんなものでも見る時に「どっちが素敵か」「なぜ素敵か」それを意識して見るだけで、センスは磨かれていく。

反面教師でも良い。ファミリーレストランは概して私は落ち着かないのだが、なぜなのか。よくないと感じた時もその理由を考えてみる。

実際の空間が一番良いけれど、それを体験するにはお金も時間も必要だ。
インターネットの上には多くの空間の写真が溢れている。そういうものをできるだけ「意識して」体験する。見る。

その積み重ねが「センス」になっていくのだ。

これからの時代は法律的なこと、構造的なことはAIが検証できる時代になるだろう。そうなった時に、知識だけでセンスのない建築士やデザイナーよりもセンスのある一般の人の方が私たちのような仕事をするべきだと思っている。そしてセンスは先天的ではない意識ある経験によって必ず磨かれる。

私はいずれはこの「センス」もAIに教え込めないかと思っているけれど、まあそれは遠い先の話として。当面人間にしかできない仕事「センス」をもっともっとみんなで切磋琢磨したい!

「お前は何様だ?」と言われるのを恐れずに書いてみたので、言ったからには私も日々精進したいと思います。

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