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瞳が輝き始める時

「で、完成するとこんな感じになります」

だいたい私の初回のプレゼンは最初は平面図で説明してから、さっとスケッチを取り出してお見せするという手順になります。
平面図を見せられて口頭で説明を聞いてイメージを広げるというのは結構苦痛を伴う作業なので、ほとんどの方は眉間にシワを寄せて聞いていらっしゃいます。

そこでそれまでページの下に隠れていたスケッチが登場! スケッチは自分で言うのも何ですが、ホワッとした雰囲気に描くので、リアルなCGよりも印象が優しくなるのだと思います。だいたいはこの瞬間にお客様の眉間のシワが消え、目に星がキラリって入ります。

この瞬間が実は私はとっても好きです。プランが難しく苦労した時であればあるほど、心の中で右手をグ-の字にしてガッツポーズをとっています。(あ、もちろん顔は穏やかにしたままですが。笑)

この瞳の輝き度合いで、後の展開が変わってきます。

瞳が輝くばかりかニコニコ! って感じだとその次に見積書を出して、予算を超えていても、余裕のある方ならそれで決まることもありますし、「いくらなら出せるから、どこを削ろうか」と言う話になることもありますが、「高いから他にしようかな」って雰囲気にはまず、なりません。

そこまで輝いていないと、「やっぱり素敵だけど高いから他にしようかな」ってなってしまいます。

これは仕方がありません。私の力不足。 それだけのお金を払えるプランだと思っていただけなかった訳ですので。

ところで、本当にたまにですが、平面図の後にスケッチをみていただいても目が輝かない方がいらっしゃいます。こういう場合も私は小さなガッツポーズを心の中でとります

1回目にお会いした時にヒアリングをしますが、お客様の細かい好みまでヒアリングができきれなかったり、聞いたとしてもプランをする中で私が取捨選択した結果、お客様にとって「しっくり」くるプランにならなかったということなので。
お客様の目が曇っていたら、それまでの説明を中断してでも、そこにフォーカスしてお話を振ります。改めて細かやかな部分の好みをお聞きするためです。

「あんまりピンと来なかったですかね?」

そうたずねると今度はお客様は堰を切ったようにご自分の好みを、断片的にお話されるようになります。

ここからがキャッチボール! 断片的なお客様のお言葉を受け、ほぼ同時通訳的に頭の中で形にしていきます。

「青いガラスが好き」「ボォ〜っと眺める時何か照明がある方がいい」

などなど、具体的になってきます。 その言葉をそのまま形にするのではなく、プラスアルファの要素を入れてその場でスケッチの上から赤いボールペンでラフに描いていきます。 ご自分のおっしゃった希望が入るだけではお客様の目は輝きません。プラスアルファを入れた時、それが当たり! だとやっと目が輝いてくれます。

最初にスケッチで輝かなかった瞳がやっと輝いた瞬間! その瞬間が最高に嬉しくなるのです。そうなれるチャンスだから、最初のスケッチで目が輝かなくても「小さなガッツポーズ」をとってしまうっていう訳です。


ここまで来ると打ち合わせの雰囲気はガラッと変わります。時間の立つのも忘れて、いろんな話が飛び出して、どんどん良い方向に向かっていきます。

最初がイマイチだっただけにそのギャップは大変です。

あとは持ち帰って気持ちが熱いうちに「打ち合わせの時に描いたラフ」を具体的にしていくだけです。

変更後の提案をご覧になった時のお客様の瞳の輝きを想像しながら。

私がこの仕事を好きで好きでたまらないのはこの「お客様の瞳の輝き」をみられるからなのかもしれません。



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