【短期集中連載第9回】落ちないための二回試験対策 民弁① 主張書面の構成

  検察・民裁の豊富な資料を使って刑事系・民事系の基本を押さえてしまえば,他の科目はそこまで苦労しなくて済むはずですので,第9回以降はかなりあっさりめになると思われます。あらかじめご了承ください。

  第9回,第10回で民弁をさらっと確認していきます。民弁はおそらくもっとも楽な科目といえますが,主張の構成に手間取るとあっという間に時間を浪費してしまう点が個人的に怖いです。

1 出題傾向と基本対策

 民弁起案は民裁・検察ほど形式が固まっているわけではありませんが,基本的には①主張書面起案と②小問集合から成っています。

⑴ ①主張書面起案

 主張書面の起案としては,大きく分けると❶訴状・原告準備書面の起案,❷答弁書・被告準備書面の起案,❸いずれかの立場からの最終準備書面の起案,に分けることができます。基本的には❶❷❸のどれかが問われると思ってよいかと。問われ方については,書面そのものを起案するよう求められるものと,主張や反論を整理するよう求められるものが混在しているようです。また,起案要領に具体的な記載例が付されていたり,記録中に見るべき視点について先輩弁護士からの誘導が書かれていたりするため,それらを無視して書いてしまわないように注意が必要です。

 ❶❷については主張書面であるため,依頼者の立場から依頼者の説明を全面的に信用して主張を展開していけば足ります。筋の悪い主張を強いられる可能性はありますが,❸の最終準備書面に比べればまだ書きやすいのではないかと思います。起案要領に指示がない限りは,訴状や答弁書のお決まりの記載文句などもしっかり書けるようにしておくと伸びます。

 ❸は準備書面ですが実質的には一方当事者からの事実認定書面です。尋問調書が付されており,全体的にページ数が多いため,要領よくやっていかないと大変です。民裁的な事実認定構造を軸に,依頼者の供述も適切に取り入れ,相手方の供述を反駁することが求められます。かなり時間がタイトになってきます。

 また,依頼者の主張のうち書面に記載しなかったものがあれば,その理由を枚数指定ありで書くことも求められます。

⑵ ②小問集合

 小問は,❶民事執行・保全,❷和解条項,❸証拠収集,❹弁護士倫理などから2つ程度出題されます。❶~❸は穴埋めであることが多く,❹は枚数指定があります。穴埋めについては導入修習で扱った白表紙などを再確認しておけば基本的に対応できるレベルですし,わからなくても条文を検索したら割と見つかることも多いです。❹の弁護士倫理は配布資料から条文を特定して司法試験のようにあてはめれば基本的に足ります。これも事前準備があるに越したことはないですが,当日なんとでもなると思います。

 とはいえ,小問全体の配点はそれなりにありそうであるため,なるべく取りこぼさないようにしたいところ。

2 民弁起案のフォーマット

 民弁については,起案要領で具体的な記載例がない限りは,白表紙の訴状,答弁書などのサンプルにあるような形式で起案することが求められます。以下は一例です。

⑴ 訴状

第1 請求の趣旨
 1 被告は,原告に対し,…
 2 訴訟費用は被告の負担とする
との判決並びに仮執行宣言を求める。
第2 請求の原因
 1 ~(略)
 〇 よって,原告は,被告に対し,…
第3 関連事実
 1 当事者
 2 事件の概要
 3 予想される争点に対する主張
 4 結語
   したがって,原告の請求は認められるべきである。

⑵ 答弁書

第1 請求の趣旨に対する答弁
 1 原告の請求を(いずれも)棄却する
 2 訴訟費用は原告の負担とする
との判決を求める。
第2 請求の原因に対する認否
 1 …(略)
第3 関連事実に対する認否
 1 …(略)
第4 被告の主張
 1 総論
 2 各論
 3 結語
   したがって,原告の請求は棄却されるべきである。

⑶ 最終準備書面

第1 総論
 1 事件の概要
 2 争点及び主張の骨子
第2 各論
第3 結語
(原告)したがって,本件請求はただちに認容されるべきである。
(被告)したがって,本件請求はただちに棄却されるべきである。

 上記各フォーマットを見ればわかるように,冒頭と結語の決まった言い回しさえ押さえておけば,中身の具体的な議論は割とフリーハンドです。民裁のように過不足ない記載にこだわる必要はなく,ある程度余分な記載を含めて書いて,読み手に話が伝わるように展開していくと評価されやすいです。

 各論でそれぞれの主張をする際も,初めに見出しで結論を書くなどして読み手に予測可能性を与えながら起案していくといいと思います。

3 書き方解説① 訴状・答弁書・準備書面

 最終準備書面以外の主張書面は平たくいえば言いっぱなしでも問題ない書面であるため,依頼人から聴取した事項を引用しつつ,効果的に文章を構成すれば基本的に問題ありません。

 請求の趣旨やそれに対する答弁の言い回しは決まっているため,ここは覚えてしまいましょう。

 請求の原因は,要件事実を意識しながら,漏れがないように注意しつつ,適宜要素を補いながらストーリー展開していきます。何回もみてきた訴状のように書けば問題ありません。なお,関連事実は主要事実と一緒に書いてもいいですが,混乱する可能性があるため,分けて書いておいた方が無難です。

 関連事実では,請求原因で当事者の記載がなければ当事者の説明,紛争に至った経緯,予想される争点に対する原告の主張などを書いておきます。起案要領で指示がある場合もあるかもしれないので,指示があればそちらを優先させましょう。

 答弁書訴状に対する認否をもれなく行うことを忘れないようにしましょう。認否の仕方としては,依頼者に不測の不利益を及ぼさないという観点から,認めても良いものは認めると明記し,その余は否認(or不知)というように書くのが基本です。その余は認めるだと印象悪くなる可能性があるので気を付けましょう。

 認否に加えて,被告の主張も展開していきましょう。否認の主張をする場合には,どの要件に関する主張であるのか,どういうストーリーを展開しているのかが分かるような整理をしていきます。抗弁の主張については,請求原因と同様に要件事実を意識しながら,民裁よりも若干肉付けをして主張を展開していくことになります。

 主張を展開する際には,ナンバリングや見出しを有効に活用して,読み手に予測可能性を与えられるようにしておくことが推奨されます。

 訴状・答弁書・準備書面は実務修習でそれなりに見てきているはずなので,書くこと自体はあまり苦労することもないはず。

4 書き方解説② 最終準備書面

 最終準備書面は実質事実認定書面であるため,民裁的な動かしがたい事実を軸にしつつ,尋問で獲得できた依頼者の供述で補強しながら,裁判官を説得するような論述を展開していきます。

 最終準備書面についても,ナンバリングや見出しを有効に使って,予測可能性のある記述を心がけたいところです。

 まずは総論で事件の概要と争点に簡潔に触れ,それに対する依頼者の主張の骨子を提示しておきます。

 そのうえで各論としてそれぞれの主張を支える事実が証拠から獲得できることを,証拠を引用しながら説明していくことになります。必要に応じて,相手方が供述する異なるストーリーが信用できないことも述べていけるとなお良きです。

5 まとめ

 細かく突っ込めばもっと注意点があるところですが,このように民弁の起案は構成自体はそこまで難しいものを求められるわけではないのが特徴的だと思います,そのためそれなりの方向性で説明していけば一定程度の点はもらえるはず。

 他方で事案自体がややこしくて主張内容に四苦八苦する可能性があるため,当日突拍子もないひらめきをして脱線してしまわないよう注意しましょう。

 

 次回は具体的戦略編です。

 

(続)

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