【短期集中連載第6回】落ちないための二回試験対策 民裁① 主張整理

 今回から民裁3連発です。試験的には2日目の民弁が先にあるのですが,第1回で触れたように民裁を先に押さえた方が応用が利くと思っているので,先に民裁から触れていきます。民弁間に合うかしら…。

 何度も触れていますが直前期であるため内容はわりとざっくり必要最小限です。細かい詰めの部分は試験後にぼちぼち更新していくことになるかと。まあ,「落ちないための」というタイトルをつけることによって,高度な解説をしなくても良いという安心感はあるわけですが。

1 出題傾向と基本対策

 ますは民裁の設問の傾向から見ていきます。民裁の出題形式は大きく①主張整理と②事実認定の2つからなっています。枚数指定ありの小問も出題されますが,いずれも要件事実に関する設問であるため,①の主張整理に含まれます。

⑴ ①主張整理

 主張整理では❶訴訟物と個数,併合形態,❷当事者の主張整理,争点,❸主張整理の理由,❹主張撤回の理由,❺別事例の主張整理などが問われます。この内❶❷はまず確実に出題され,それ以外は事案によるといった感じです。

 いずれについても,要件事実の理解を前提とした解答を求められていることが明白です。したがって対策としては要件事実を勉強する,これに尽きるしこれ以上言及することがないくらいです。

 ❶❷に関しては,附帯請求は記載不要,第〇書面の○○の主張は除く,などの制限が入る場合があるため,起案要領を読み落とさないように注意しましょう。白表紙の要件事実くらいは頭に入れておきたいですし,『事実摘示記載例集』にある書き方も覚えておくと便利ですが,最悪条文からなんとかなるとは思います。分からなければ条文から素直に書いておけばまず不合格はないんじゃないですかね。請求の趣旨から訴訟物を導くことさえ守れば,大失敗は防げるでしょう。

 ❸❹については実体法上の要件からどのように主要事実が導かれるのかが聞かれているみたいです。❹については要件不足で主張自体失当,当該主張に抗弁以下の内容が含まれるため主張自体失当,といった帰結になることが多いかと思われます。枚数指定があるため簡潔に説明して事実認定に行きたいところ。

 ❺は記録の事例に類似する事例を出して要件事実を問うたりする問題です。こちらも素直に取り組めば大丈夫じゃないかと思います。

 いずれにしても要件事実は司法試験の段階からある程度やってきていると思いますし,難しい場面もなくはないですが,なるべく素直に検討していけば問題ないはず。不安があれば最低限白表紙,もっと上目指すなら『要件事実30講』などやればいいと思います(筆者はやってません)。

⑵ ②事実認定

 事実認定問題は,争点に対する結論及び思考過程を問う設問でほぼ固まっています。もっとも,争点のうちどれについての判断を検討すべきか起案要領で指示がある場合があるため,その点は注意が必要です。

 民裁の事実認定は結構独特であるためしっかりと枠組みを押さえておくことが必要です。白表紙のうち『事例で考える民事事実認定』,通称ジレカンは確実にマスターしておくべきでしょう。あとはその理解をベースに,充実した起案講評資料で復習すれば基本的には大丈夫です。詳細は次回に触れていきます。

2 民裁起案のフォーマット(主張整理・事実認定)

 民裁についてもまずは小問を除いた起案のフォーマットを示していきます。検察とは異なり,必ずこうじゃなければならない,というものはないので(だいたい似たような傾向にはなりますが),以下のフォーマットはあくまで一例です。

(主張整理)
第1 訴訟物
 ○○権 1個
 △△権 1個
の合計△個,××併合
第2⑴ 主張整理
 1 請求原因
  ⑴請求原因1(○○請求)
   あ ~
   い ~
   う ~
  ⑵ 請求原因2(△△請求)
   か ~
   き ~
 2 抗弁
  ⑴ 抗弁1(○○-請求原因〇に対し)
   サ ~
   シ ~
   ス ~
  ⑵抗弁2(△△-請求原因〇に対し)
   タ ~
   チ ~
 3 再抗弁
  (以下略)
第2⑵ 争点
  〇,〇,〇の各事実(符号でOK)

(事実認定)
 1 結論
  〇の事実が認められる。
 2 理由
  ⑴ 判断枠組み・争点分析
   →中心的争点の明示,4類型の指摘
  ⑵ 事前の事情(細分化できれば更に分ける)
   ① ~
   ② ~
   ③ ~
   →評価
  ⑶ 当時の事情(略)
  ⑷ 事後の事情(略)
  ⑸ 総合考慮

3 書き方解説① 主張整理

 主張整理の書き方については特にいうことがありません。摘示が必要な主要事実について,極力『事実摘示記載例集』の書き方に沿って書けば普通に評価されます。書き方云々というよりは,事前の知識や当日の思考力・検索力がものをいう感じでしょうか。
 
 各事実に付す符号としては,原告側はあ,い,うのようにひらがなで,被告側をカ,キ,クのようにカタカナで書くことが多いと思います。とはいえわかればいいので好みの範囲ではないかと。

 請求原因の見出しにはかっこ書きで○○請求のように中身を示すようにしましょう。抗弁以下は,それぞれ見出しで同様に中身を示すとともに,反論対象が複数ある場合にはどの主張ブロックに対する反論であるのか分かるように,○○に対し,と記載しておきます。細かいですが意外と重要です。
 
 争点の摘示については,当事者間で否認ないし不知となっている事実について,その事実をそのまま書く必要はなく,符号を列挙すれば足ります。後で主張整理を書き直した際などにずれてしまわないように注意しましょう。

 次回は事実認定を掘り下げます。

 

(続)

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