【短期集中連載第2回】落ちないための二回試験対策 総論② 致命傷を避けるための基本戦略

※前回の投稿から大幅に日数が経過してしまいすみません。なんとか二回試験に間に合わせます…笑。

 

1 第1回の訂正

前回の記事で二回試験不合格の際の流れについて,こちらから退職願を出すらしい旨記載しておりました。確かに過去にはそのような運用になっていたらしいのですが(参照:https://www.snowstarinstitute.org/mail/ など),現在はそのような運用ではなく,不合格発表の翌日に一律罷免という運用になっているようですので(参照:https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/04/27/nikaishiken-happyougo/ ),あまり連載の本編と関係ないですが,訂正させていただきます。

 

2 「致命的なミス」の例

それでは第2回の本題に入っていきます。二回試験に不合格にならないために気を付けるべきポイントについては,下記のとおり複数の記事があり,参考になります。他にも記事があるかもしれませんが,とりあえずいくつか示しておきます。

参照先
①『弁護士山中理司のブログ』「二回試験落ちにつながる答案」

②『アディーレ法律事務所 総合求人サイト』「失敗談から学ぶ二回試験対策」

③『司法修習ナビゲーション』「二回試験不合格【禁止事項】 司法修習生最後の難関」

④『法務の樹海』「二回試験対策とNG行動」

 

⑴ 具体例

以上のリンク先なども参照しつつ,不合格になりかねない致命的なミスとして例えば以下の要素があります(他にもあるかもしれません)。

【共通】
・時間配分を間違える
・書き直し・差し替えを繰り返す
・終了時に紐でつづっていない
・途中答案
・起案要領に沿わない・読み間違える
・誘導に素直に従わない(裏を読む)
・当日の閃きに引っ張られる
・客観的証拠や記録上当然に言及しなければならない重要な間接事実に言及しない
・強引な経験則
・事実と評価の混同

【民裁】
・訴訟物を大きく間違える
・4類型の判断枠組みを記載しない
・争点を全部外す
・従前の口頭弁論期日調書において既に撤回された請求や主張について記載する
・最も重要な書証に言及しない
・重要な間接事実,固い事実に言及しない

【民弁】
・訴訟物を大きく間違える
・原告・被告を取り違えて逆の立場から書く
・重要な書証に一切言及しない
・最終準備書面の起案において,これまで全く自ら主張していなかった事実を証拠に基づかずに記載する
・相手方の主張に対する反論を書かない
・民裁のように書く(当事者目線で書かない)

【刑裁】
・争点整理の結果を無視する
・供述の信用性を一切検討しない
・推認力の検討に際して反対仮説を一切考慮しない
・無罪判決を書く
・被告人の供述が信用できないことを主たる理由として有罪判決を書く
・被告人の供述を無視する
・証拠構造の区別ができていない

【検察】
・「終局処分起案の考え方」の形式と異なる形式で起案する
・犯人性の検討しか求められていない事案で犯罪の成否だけ検討するなど、問題文が求めていることを全く理解していない
・不起訴裁定書を書く
・罪名を大きく間違える

【刑弁】
・無罪弁論の起案で情状を書く
・無罪弁論の起案で有罪弁論を書く
・有罪弁論(認定落ち)の起案で無罪弁論を書く
・争点を無視する
・被告人のアリバイを無視してアリバイに関する主張をしない
・証拠関係の評価をほとんどしない
・検察官の立証構造を読み間違える
・刑裁のように書く(当事者目線で書かない)

⑵ 整理

上記あるいはリンク先のように,挙げればきりがないんじゃないかというくらい気を付けるべきポイントがあることがわかりますが,これらを抽象化して整理すると次のようになります。

① 実体法,手続法(司法試験レベル)の知識不足がうかがわれるもの

② 科目ごとの起案のフォーマットルールに沿わないもの

③ 試験当日処理スタイル(時間配分ミス・記録の検討不足や誤解・起案要領の逸脱等)に問題がある(本来の実力が発揮できていない)もの

このうち,特に不合格につながりやすいのは②と③です。①についても,もちろん起案をしていくにあたって最低限の知識がないとお話になりませんが,少なくとも司法試験をクリアしている以上は,条文から探していけばなんとかなりますし,多少のミスは直ちに致命傷にはならない印象です。

それよりも,②③のように科目ごとの起案のルールに沿っていないためにめちゃくちゃになっている起案,知識や書式は身についているのに,当日のパフォーマンス面で何かしらやらかしたために,実力を発揮できずめちゃくちゃになってしまった起案は致命傷になりやすいと考えられます。


3 最低限の対策方針

以上を踏まえると,絶対に不合格しないための最低限の具体的な対策としては,以下のものを重視してすると良いと考えられます。なお,上位の成績を取りたい場合にはこれだけでは不十分だとは思います。

⑴ 知識量より起案のルールや当日のパフォーマンス面を固めておく

まずなによりも,それぞれの科目ごとに起案のフォーマット,書き方のルール・視点を確実に身につけるようにしておきたいところです。どれだけ知識があっても評価される書き方をしないとどうしようもないので。

また,どういう流れで記録を検討していくのか,記録や起案要領で注意しなければならないところはどこかなど,当日に取るであろう行動を踏まえた処理手順を盤石にしておくことも必要です。要はイメージトレーニングですね。

これらの事前に準備できる起案対策をしっかり固めたうえで,知識面を再確認したり,小問対策に手を伸ばすなどすればより確実といえるでしょう。

⑵ 適切な危機管理ができるようにしておく

⑴のように事前準備を入念に行っておくことに加えて,当日万が一やらかしてしまった場合にどう対処すべきかについても想定しておけばより安心です。

例えば,午後になってそれまでの起案がまるっきり間違っていたことに気づき,全面的に書き直す必要が生じたが,考えたことを全部書く時間的余裕がない場合に,何を優先しどこまで書くかなど。緊張・動揺・焦りなどで思考停止に至ってしまうのが最も危険であるため,当日慌ててしまわないように,最悪のケースを想定し事前に対処法を考えておくことがおすすめです。

 

4 総論まとめ・次回予告

第1回と今回で二回試験対策の総論として,致命的なミスをしないような対策をすべきこと,具体的には起案のルールを身につけ,当日の動きや注意点を固めたうえで,最悪の事態に備えておくことが有益だろうという話をしました。
第3回以降は各論として,科目ごとに上記対策について説明していきます。
具体的には設問の形式・傾向,起案のルール,記録の読み方など触れていければと思います。

※時期が時期で詳細に書きすぎると時間が無くなりそうなので,ひとまずざっくりめに書きます。

5 本連載について(付言)

今更いうまでもないことしれませんが,本連載は周囲から得た情報などをもとに落ちないための最低限の戦略として各科目の書き方などを,筆者独自の視点などを交えながら提示していくものであり,その内容の正確性を保証するものではありませんので,記載内容をどう取り扱うかは各自の責任でお願いしたい点,念のため申し添えておきます。

ここで紹介する方法論は一例ですし,裁判官や検察官を志望する方からすれば「今更何を…」というくらい当たり前のことばかり書いていると思います。また,本連載で示していく方法論の他にもっといい方法もあるかもしれません。あくまで1つの例として参考にしていただけると幸いです。

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