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銅版画制作メモ(黒インク編)

試して具合の良かったインク配合の感想メモ。黒インク編。

※こちらは、銅版画を制作していたり、インクに興味がある方「だけ」に向けたマニアックな内容になります。インクのメーカー名などが省略されていますがご了承ください。

このページの作成経緯

銅版画の制作の際、インクの配合について、相談されることがよくあったので、2012/09/09にFacebookの「ノート」にまとめ、以降、更新を重ねていました。しかし、気が付いたらFacebookのノート機能が縮小されていたため2020/12/27にこちらnoteへ移動しました。

以降に記載するインクは、メゾチント用ですが、アクアチントやドライポイントでも具合がよいかもしれません。また、できるだけ早く、簡単に入手・配合できるインクのみ記載しています。(顔料から作るインクは記載していません。)あくまで個人的感想です。今後、また発見があったら書き足していきますね。note的にこのような使い方はは違うかもしれないけども。

更新履歴

・Facebookからnoteに移行(2020/12/27 作成)
・インク配合情報追加:55985:55981=1:1(2020/09/13 更新)
・インク配合情報追加:銅夢版画工房特製インク:ラックスC =6:4~7:3(2018/08/09 更新)
・インク配合情報追加:東洋インク風(2013/03/13 更新)
・インク配合情報作成:(2012/09/09 Facebookにて作成)

※以降、インクに会社名が無いものはすべてシャルボネ社のインクです。

試してみたインクの配合と、パラメータの説明

以降、試した順番(古い順)に記載していきます。あ、そうだ、前提として、すべて、メゾチントの技法を用いた銅版、紙はハーネミューレのスノーホワイト、雁皮刷りで判断しています。

詳細は以下のパラメータで評価しています。(あくまで個人の感覚値)
【硬さ】インクを練ったり版に詰めるときの力加減で判断
【濃さ・色】刷った時の色の出方で判断
【油膜】インクを詰めた後の拭き取り~刷り上がりまでの経過で判断
【拭き取り】インクの拭き取り作業で判断
【メモ】全体を通した説明と感じたことを記載。


55985:ラックスC=1:1~1:3

【硬さ】かなり硬い~硬い
【濃さ・色】かなり濃い・すこし茶系
【油膜】残りやすい
【拭き取り】拭き取りにくい
【メモ】
黒もびしっと出るし、油膜も55985だけよりずっと残ってくれる。
でも刷り難い。ちゃんと版を暖めないとインクが入って行かないので注意。
拭き取りにくいけど、だからといってうっかり力を入れすぎて拭きすぎると、油膜が綺麗に残らない箇所が出来ちゃったりする。
硬めのインク同士なので、よーく練らないとちゃんと混ざらない。

F66:文房堂の黒(No1)=1:1

【硬さ】普通
【濃さ・色】普通・ニュートラルな黒
【油膜】残りやすい
【拭き取り】拭き取りやすい
【メモ】
刷り師さんに教えてもらった配合。インクの硬さもちょうど良く混ぜやすいし、とーってもすり易い。
油膜も綺麗に残るし、かつ、白くしたいところが簡単にスキッと抜ける。
ただし黒の濃さは55985より弱い。

ラックスCのみ

【硬さ】硬め
【濃さ・色】普通・赤みというか茶系の黒
【油膜】残りやすい
【拭き取り】拭き取りにくい
【メモ】
55985よりインクの伸びが良くて、油膜が残りやすく、ハーフトーンが出しやすい。
ただ白く抜きたいところは、よーくふき取らないと、クリアに抜けない。
黒の濃さは55985と比べると若干薄い。赤みの強さを消すには、プルシアンブルーを少し足すといいかも。
(もともとラックスCにはプルシアンブルーが入ってる)

55985+馬油

【硬さ】柔らかめ
【濃さ・色】濃い・少し茶系の黒
【油膜】残りやすい
【拭き取り】拭き取りやすい
【メモ】
この間、初めて馬油を配合してみたら、黒がびしっと出るし、しっとり油膜も残るし、白くしたいところも馬油を入れない時より、ずっと拭き取りやすくなって、よい感じだった!
でも、配合が多すぎたり、よく練らないと、紙に油染みが出来ちゃいそう。
あと、この配合で雁皮刷りは試したことが無いので、今度試そうと思う。
(2020/12/27現在 今だ試しておらず。)

東洋インク風

(2013/03/13 追加)
文房堂 青口 1
カーボンブラック 1
スワロー(リトインク) 1
プルシアンブルー 0.3~0.5
ダイヤモンドブラック(粉) 0.5

【硬さ】柔らかい
【濃さ・色】普通・青みのある黒
【油膜】残りやすい
【拭き取り】拭き取りやすい
【メモ】
Yさん考案のインク配合。頂いて刷って見たら、とてもよい感じだったので追加。(Yさん承諾ありがとう!)
今は無き東洋インクの色をばっちり再現しています。
なつかしの青みのある黒インク。
違うのは若干油膜が多くて柔らかいことかな?おかげで、メゾチントとの相性もよいです。
でもまぁシャルボネの赤みのあるインクに慣れてると、ちょっと青すぎると感じるかも。
東洋インクで刷ってた作品を刷り増しする時用にメモ。

銅夢版画工房特製インク:ラックスC =6:4~7:3

(2018/08/09 追加)
【硬さ】普通
【濃さ・色】濃い・ニュートラルな黒
【油膜】残りやすい
【拭き取り】拭き取りやすい
【メモ】
ビシッと黒を出したいし、油膜も欲しいけど、楽にふき取りたい。
っていう要望が、今までで一番叶えられたインク。
F66と文房堂のブラックNO.1の配合より、黒が強いです。
銅夢版画工房特製インクは、HARUZOインクのブラック(NO1)に
ダイヤモンドブラックの粉末を混ぜ(配合量は不明)2時間以上練ったものだそう。
このインクはエッチングやビュランの版には最適ですがメゾチントには油膜の量が足りない。
その分をラックスCが補った感じです。
深い腐食のアクアチントにも合うかもしれません。
ただこのインク、しっかり練りこまないと細かいダマが出来るので要注意。

55985:55981=1:1

(2020/09/13 追加)
【硬さ】普通
【濃さ・色】濃い・ニュートラルな黒
【油膜】残りやすい
【拭き取り】普通
【メモ】
メゾチント作家のH中さんに教えていただいた調合。
このインクの素晴らしいところは、刷り上がりにほんのりツヤがあること!
雁皮刷りだと、もともと刷り上がりに少しツヤは出るのですが、がっつりインクがのったところは、今までのインクはマットになりがちでした。
それはそれで良いのですが、自分的にはすこしツヤが欲しかった。
このインクは濃いニュートラルな黒でありつつ、うっすらツヤが残ってくれるのです。これには感動!
この二つのインクは、どちらも缶から出した時には固めになっているので、しっかり混ぜてインクを柔らかくするのがポイント。
油膜も細かい調節が効きます。腕があれば、油膜だけで何段階でも調節が出来そう。私はまだ出来ないけど。

まとめ(2020/12/27現在)

黒インクは最近、55985:55981=1:1の配合で刷ることが多いです。もっと良いインクが見つかったらまた更新します。


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