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あなたは大人か、それとも

僕たち、あるいは私たちが大人になってしまったのはいつからだろう。


自分のことだけを考え不恰好ながらもなんとか成人したあの時からなのだろうか。

確かに思い返してみれば、あの時は大人に憧れ大して飲んだこともない日本酒をカッコつけて飲んでみたり、夜になれば実感を求めてクラブに通い詰めたりしていたかもしれない。
必死に大人になろうとしていたような気がする。

それとも大人になるということは

いえいえ、そんなことないですよ〜!!
〜さんの方が立派ですよ!

謙虚さを覚えた時なのかもしれない。
それなら僕は周りの子よりも早く大人になれていた。
怖かった(小さい時はそう感じていた)父親がコーチを務めるスポーツチームに所属していたこともあって常に誰かにどう思われているか考え続けるような少年だった。
相手を気持ちよくさせてあげなければいけないと思い込んでいた。


上記に挙げたものは全て違う。
そんなもので人は大人にはならない。
僕はその答えを知っている。それは誰にも言ったことがないし、もちろんネットにも載ってない。
本当は僕だってこんなことは言いたくない。
だが、もうこれを自分の心の中だけに留めておくのは苦しすぎて思い詰めてしまいそうになったので、今日みんなにも共有しようと思う。





大人になるということ。
それは





オムライスを好きじゃなくなったその時だ。


やっと楽になれた。
そう、そうなのだ。

これは絶対である。これは世の真理だし国の最高機関だってこれに気付いているか怪しいものだ。
これに気付いてしまった僕は明日にはこの世にはいないかもしれない。
それほどまでの機密情報だ。



厳密に言えば子どもが好きそうなご飯、である。
僕はこれらを通称ガキ飯と呼んでいる。もちろん敬意を込めてだ。日常僕は小さい子のことはちゃんと子どもと呼んでいる。
かくいう僕もガキ飯ハードユーザーである。
唐揚げは間違いなくハズれない。
寿司屋に行けば玉子、焼肉類も欠かさない。
店にエビフライがあれば間違いなく頼む。
全ての料理にはオマケが付いていて欲しいし全てのライスには旗が立ってて欲しいものである。

ガキ飯を好きじゃなくなることが大人になってしまうということについて特段これといった理由はない。
だが、周りにこう言ってくる人が少なくとも1人はいたと思う。

お前子どもが食べるようなやつ好きだよな笑

何を半笑いで話しているんだ
そいつらはもう大人だ。大人になってしまった。子供が食べるようなと前置いたことで相対的に自分が大人であると位置づけてしまっている。そんなやつらはきっと縁石の上は歩かないし、好きなアイスはハーゲンダッツだ。決して夏に凍らせて折って食べる例のあのアイスではない。家まで同じ石を蹴って帰るチャレンジももうしない。

僕はガキ飯が好きだ。
これは紛れもない事実であり現に僕はまだ自分のことを子どもだと思っている。

そんなことを考えていたある日。

後光を浴びるオムライス

もう疲れたので口調をいつも通りに戻します。
はあ〜疲れた!大人になるかと思った。

これ、ヤバいでしょ。すごいでしょ。仰天でしょ。美味しそうでしょ。

喫茶さくらで食べられます。
from千葉は浦安から、ギリギリ東京になれなかったあの街です。


オムライス、それは黄金色の掛け布団にくるまった美味しい照れ屋さんです。
いざテーブルに運ばれてくるとテンションは最高潮。
大きめのお皿に乗せられてくるのがまたかわいい。

全ての料理に言えることですが、まずは見て楽しみましょう。
黄色、赤、そして緑。
各々が主役級にハッキリとした色なのに全てが共存しています。
白のお皿の上に乗っかればもうそこは舞台の上です。
きっと僕たちは幼少期の頃からその3色を見ることでオムライスを思い出すように刷り込まれていたのでしょう。
言うなれば食べられる絶景です。
少し脱線しますが、名前にピース(平和)が入った食べ物はグリーンピースだけでしょう。
グリーン(緑)も入っているのでSDGsやらサスティナブルやらを掲げる現代にはまさにジャストな食べ物なのではないでしょうか。
グリーンにピース。オツだなあ。
でもそんなグリーンピースは子どもたちに嫌われているという…それもまた趣がある



まあええわ…よし……食うか………

そこから記憶は定かではありません。
気がついたら皿が下げられてました。
ここからは断片的な記憶を頼りに話していきます。

まずは一口。
ウ……ウメーーー!!!!!!!!!

一瞬よく焼きだと思われるこの玉子、もちろんよく焼きの部分もあるんだけど巻いてある部分はトロッとしてる…
なのに分厚いんですよ。家で作るともっと薄くペラペラになるのに分厚い。
そんなことがこの一枚のフライパンの上で可能なのか?

こんなん家で真似できるわけない…

中のライスも主張しすぎてないけどちょうどいい味付け。そこに上にかけられたケチャップのはっきりとした味がくる。くぅ…
あいにく僕にはこの美味しさを表すだけの語彙を僕はまだ持ち合わせてない。
ただ、この美味しさはなんなのかわからないからこそこれだけワクワク出来る、ワクつけるのかもしれないですね。語彙いらねー!

テカリすぎて反射するグリピス

これは一つの作品なのではないか?
全ての味が混ざり合ってこのオムライスを形成している。
調べてみると昭和から続いているとのこと。
1人の人間の人生を食べていると言っても過言ではないような気がしてきました。
それほどに美味しい。
よくアイドルと握手した手は洗わないというけど、その感情に似てるな。
ずっと体の中に残しておきたいとさえ思ってしまうオムだぜこいつは。

広くて平らなお皿で食べるから最後の方になってくるとスプーンですくえなくなってくるのもまたいい、それも含めてオムライスなんだ。

僕が覚えてるのはここまで。
一心不乱に食べていたら愛しのあの子は僕の前から姿を消していて、気が付いたらご馳走様と言って開きにくい自動ドアの前で必死にセンサーを探していました。

ごめんなさい、最初の前置きが長いくせにオムライスはこんだけしか話さなくて。
なんか感覚に伝わる味でした。




都会で食べるスゲー綺麗な見た目でデミグラスがかかってるようなオムライスもいいよね。
でもサ店で食べるこのオムライスはもっといいと思うんだ。
次はナポリタンを食べたい。
ダブルクリームソーダも頼んじゃおうかな。


トキメキは止まらない。
あの頃虫かごを肩から掛けてトンボを追い回していたあの感情と一緒だ。
またすぐに食べに行こう。





これが食べられるのなら当分大人にはまだならなくていいかな。



※オムライスの話以外は全てフィクションです




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