ジェットラグプロデュース『終わらない世界』

2019年12月11日(水)~12月15日(日)

博品館劇場

作・演出:益山貴司(劇団子供鉅人)

出演:
緒月遠麻/上遠野太洸/中尾拳也/十碧れいや/シューレスジョー/花陽みく/藤田奈那/結城洋平/間瀬富未子/安楽信顕

田野聖子/成島敏晴

博品館劇場
2019年12月11日(水)~12月15日(日)

守口トモル 役

カンパニーの下っ端で、主役演じる七瀬ミワコには名前も覚えて貰えていないような青年。だけど誰よりも舞台を愛して、ミワコに憧れて、ミワコのためにある、ようにも見える。

巻き込まれたドタバタのなかで、まるで仔犬ちゃんのようだったトモルが「一人の男」に見えるシーンがとても印象的で良かった。あれは演じ手の大きな手と筋肉質な腕があってこそなんだと思う。見た目とのギャップというか、ミワコ同様に観客がドキリとするのがポイントなんだろうな、と。
劇中劇に使われる拳銃をトモルが手入れするシーンが印象的で、あまりにも手慣れた仕草で弾倉を戻す仕草にそれがキーになることがわかるという演出もいい。実際それがあったせいで劇中の発砲数を無意識に数えてたし(笑)。

ミワコが撃たれてトモルが咄嗟に犯人に駆け寄るのは、ミワコの側には恋人がいるから。自分が出る幕じゃないのを理解しているのは舞台が好きで脚本家志望の彼だからこそなのかなぁ。でもそうやって線引きすることで、ミワコとトモルは最高の仕事仲間の関係で居続けることができるよなぁとも思えた。実際ミワコは、この物語が終わる頃にはトモルの名前を覚えていた。スタッフの一人としてではなく、共に舞台を作る仲間として。

ストーリーテラーとして、劇中の一人として、二役を演じわけながら物語を進めていくのはさすがで、彼の語りに観客の視線が集まるのはファンとしても堪らないものがあった。

なによりも千穐楽のカーテンコール、ミワコ役の緒月さんが衣装のハットを隣にいる上遠野くんにすぽ、と被せた瞬間に「物語が完結し、そしてはじまっていく」と思わせてくれたのがものすごい子憎い。無意識なのか演出なのか、そこまで培った信頼関係なのか……二人の関係が格好良すぎた。

男女の間にもブロマンスは成立するんだな、と。

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