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精神疾患に有効とされる「認知行動療法とは?」

認知療法・認知行動療法は、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種です。認知は、ものの受け取り方や考え方という意味です。ストレスを感じると私たちは悲観的に考えがちになって、問題を解決できないこころの状態に追い込んでいきますが、認知療法では、そうした考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていきます。

知らないうちにできてしまった「認知のズレ」とは?

何らかの出来事や状況に対して、自動的・瞬間的に頭に浮かぶ考えやイメージである自動思考や「考え方のクセ」であるスキーマの中には、問題や悩みの原因となる認知の癖や偏りというものがあります。代表的な認知の癖や偏り(ズレ)には、以下のような10個の種類があります。

①全か無か思考
「国語のテストが99点だった」
「これじゃだめだ!次は絶対100点を取らなければ!!」

このように、出来事や状況を「ゼロ」or「100」という極端な捉え方をすることを全か無か思考とよびます。全か無か思考による認知は、多くの出来事や状況をネガティブに捉えることになり、ストレスの原因となることがあります。

②過度な一般化
「A社の就職面接に落ちてしまった!!」
「ということは、B社もC社も落ちるに違いない!!」

このように、何か1つの出来事や状況に対する認知を、無関係な出来事や状況へも広げてしまうことを過度な一般化とよびます。1つの出来事や状況がネガティブだから、これから先に起きる出来事もネガティブだと考えてしまうと、不安になり、モチベーションも落ちてしまうのではないでしょうか。このように、過度な一般化という認知は、ストレスの原因となることがあります。

③選択的抽象化
「デートの終わり際に彼女を怒らせてしまった」
「このデートは全て失敗だった」

このように、本来は多面的な出来事・状況の悪い面だけを選択し、しかも、抽象的に捉えてしまうことを選択的抽象化(心のフィルター)とよびます。この例でも彼女が怒ったのは「デートの終わり際」だけであり、デートという出来事全体では「楽しい瞬間」や「笑顔の彼女」という良い面もあるはずです。しかし、例のように“フィルター”を通して捉えてしまうと、ネガティブな部分ばかりがクローズアップされてしまい、ストレスの原因となることがあります。

④マイナス化思考
「テニスの試合に出場して優勝した」
「この大会は優秀な選手も出場していない、自分が優勝したのは偶然だ」

このように、自身にとって都合の良い出来事や状況も、全て「悪いこと」として捉えてしまうことをマイナス化思考とよびます。マイナス化思考は「良い面」しかない完全な「良い出来事・状況」さえも、「悪いこと」に変換してしまうというものです。完全にポジティブな出来事や状況は、現実には少ないでしょう。しかし、数少ないポジティブな出来事・状況でさえ、マイナス化思考で「悪いこと」として捉えると、常にストレスにさらされ続けることになってしまいます。

⑤恣意的推論
「友達が自分に気づかずに通り過ぎてしまった」
「友達に無視された。きっと私は嫌われているんだ」

このように、出来事や状況について、誤った推論をしてネガティブに捉えてしまうことを恣意的推論とよびます。本来、何らかの推測をする場合、論理的かつ客観的に考えるべきです。友達とすれ違った際の例では、友達がただ気づかなかっただけで、特に理由もない「なんでもない出来事」だと解釈することもできます。出来事や状況は様々な解釈が可能ですが、恣意的推論ばかりしてしまうと、出来事や状況を誤って解釈してしまい、ストレスの原因となることがあります。

⑥拡大解釈と過小評価
ちょっとした失敗⇒「何もかもダメだ!!」
大成功⇒「こんなのは、みんなにとっては当たり前」

このように、出来事や状況を実際よりも大袈裟に捉えてしまったり、逆に過小評価してしまうことを拡大解釈と過小評価とよびます。これらは、ストレスの原因やモチベーションの低下につながります。

⑦感情的決めつけ
「自宅で家族と口論になり、怒っている」
「その日、職場で初対面の人と会ったが印象が悪かった」

このように、物事を考える際に「感情」を交えて考え、感情に左右されて物事を捉えることを感情的決めつけとよびます。例のように、本来は直接関係のない「怒り」という感情を抱えたままで相手に対する印象が悪いというのは、認知が感情に左右されている状態であり、ストレスの原因となることがあります。

⑧すべき思考
「部屋の掃除は毎日すると決めているが、インフルエンザで熱が39度あったとしても、絶対に掃除をするべきだ」

このように、物事を「~すべきだ」や「~すべきではない」と極端に考えてしまうことをすべき思考とよびます。物事の解釈は様々であり、やり方が1つしかないとか、この方法以外では絶対にダメだということはあまりないものです。しかし、すべき思考に囚われてしまうと、選択肢が少なくなり、融通の利かない状態になってしまい、ストレスを感じることも多くなってしまうでしょう。

⑨レッテル貼り
「大学の教授はみんな厳しいに決まっているから、私が苦労して書いたレポートなんて評価してくれないに決まっている」

このように、自分自身や他者に対する認識が1つに固まってしまい、他の考え方や捉え方ができなくなってしまうことをレッテル貼りとよびます。貼られたレッテルに左右され、実際とはズレた認識をしてしまうことは大きな問題となることがあります。レッテル貼りによる認知は、自身の行動の自由度を狭めてしまうことになり、ストレスの原因となることがあります。

⑩自己関連づけ
「チームプロジェクトが上手くいかないのは、全部私が悪い」
「私がみんなの足を引っ張っている」

このように、本来は自分と無関係な出来事や状況に対して「自分のせいだ」とか「自分が悪いんだ」というように、自分と関連付けて考えてしまうことを自己関連づけとよびます。何が悪かったのか、なぜ上手くいかなかったのかを冷静に考えれば、色々な原因が複雑に絡み合っている可能性が高いでしょう。しかし、自己関連づけによる認知ばかりでは、現実の状況とはかけ離れたところで、「自分が悪い」という考えにさいなまれ、ストレスを感じることになってしまいます。

これら10個の代表的な認知の癖や偏りは、誰の身にも起きる可能性のあるものです。まずは、これらの認知の癖や偏りを理解することが、自分にはどんな「考え方のクセ」(スキーマ)があるのかを知るきっかけとなります。

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