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バンプのアルバムを全部聴いてみる① FLAME VEIN +1

突然ですが、バンプ派? ラッド派?

僕が中学生くらいの時には、こんな会話がまるでお天気の話でもするかのように、教室の隅で交わされていました。それくらい、バンプ(BUMP OF CHICKEN)とラッド(RADWIMPS)は当時のキッズたちが聴くバンドの代表格だったわけです。時々、アジカン派とかいたけどね。

僕はまあどちらかと言えばバンプ派でした。そもそもバンプとラッドって単純に比較が成立するようなバンド同士ではないので(演奏技術とかテーマ性とかにかなり差がある)、どうしてこんな二者択一みたいな質問がなされるのか、あんまり理解できなかったのですが。

そんなバンプ、サブスクが解禁されました。

隠しトラックを除くカタログが網羅されていますね。便利な時代になったものです。

そこで、これまでにリリースされたアルバムを時系列順に聴き返していきたいと思います。あまり熱心に聴かなくなってしまった10年代の作品も、これを機に腰を据えて聴いていきましょう。という趣旨です。

とりあえず、第1回目はインディーズ時代の1stアルバム、FLAME VEIN +1をレビューしていきたいと思います。

1. ガラスのブルース

オープニングナンバーにして、良くも悪くもバンプの特徴をこれでもかと押し出した曲。基本藤原が言いたいことを全部言ううえに、アレンジ技術が足りていないため、とにかく曲が冗長。2Aのブレイクとか、何となくやってみたかったからだとしか思えない。初期バンプの特徴として、チャマのベースが無駄に動くというものがあるが、増川と升ができることが少なすぎるため、結果的にその俺様ベースに救われている場面もある(自爆している場面もある)。

2. くだらない唄

藤原のキレキレのリリック、「かみさまぼくはふるえてる 背広もネクタイも見たくないよ」が飛び出す佳曲。

藤原の歌詞にはガラスのブルースのように、童話ファンタジーっぽいものと、やたらしみったれたリアル路線のものがあるが、この曲は後者。存在の矮小さとか滑稽さみたいなものを突き付けられる。曲もアレンジも過剰になりすぎず良い仕上がり。

3. アルエ

タイトルは『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する綾波レイのイニシャルから、というのは割と有名な話。オタクが良くないハッスルをしてしまった歌詞は一読の価値がある。シングルカットもされたので、このアルバムの中では知名度もある方で、中高生のコピーバンドにも人気。実際に僕も高校の時にコピーしたこともある(惨憺たる有様だった)ので、思い出深い曲。

4. リトルブレイバー

こちらは小さな存在であることを認めたうえで、前に進もうとする希望が垣間見える曲。このアルバム中、恐らく最もたくさんギターがオーバーダビングされている……のだが、いくつかのパートはやたらと弾き方がおっかなびっくりだったり、歪み過ぎて何やってるのかイマイチわからなかったりと、誰とは言わないが増川の技術的な未熟さが目立つ。ギター重ねすぎて謎のシューゲみたいになってるとこもちらほら。

5. ノーヒットノーラン

藤原の言いたいことは理解できるが、ノーヒットノーランの誤用が気になってそれどころではない曲。これもテーマ的には小さき存在の肯定で、前曲と共通している。というか、今作と次作ではそんな感じのことばっかり言ってる。流石にまだ若いので、後々のようにやたらと説教臭くはないが、「ボクになにがのこるんだろう? 臆病なボクにナニガデキルンダロウ?」の歌詞表記には胸がキュっとなる(悪い意味で)。演奏は普通。できれば前曲のように天然で面白いことやってほしかったのだけれど。

6. とっておきの唄

いきなり「何でもない日も記念日にしよう」とか野田洋次郎みたいなことを言いだす。バンプは明らかにラブソングだろという曲も、頑なにラブソングだと認めない謎のこだわりがあるが、この曲は数少ない公式ラブソングのひとつ。3サビの「地図にもない場所へ 手をつないで」のとこのブレイクはこのアルバムの中でベストアレンジ。でもこの内容で演奏時間5分半はやっぱ長い。

7. ナイフ

個人的にこのアルバムの中で最も好きな曲。Bメロの出来が非常に良く、サビ前のギターフレーズもベタながらハマっている。また、同じAメロでも1Aと2Aで変化をつけるという技術を学んだらしく、6分半あるもののそれほど冗長さを感じない。ガラスのブルースの延々と終わりが来ない感じとは大違いである。また間奏も精いっぱいのお洒落(?)という感じで微笑ましい。アウトロのギターはそれなりに思い切りが良いので、多分藤原。最後、音を切るところの右チャンネルで、かすかにミュートを失敗しているのが増川。

8. バトルクライ

1stシングル「LAMP」のカップリングで、トイズファクトリーからこのアルバムが再発される際に収録された+1の部分。流石に1~7の曲と比べると演奏がこなれてきている(それでも下手だが)。歌詞のテーマ的にはリトルブレイバーと共通するものがある。アルバムを通しで聴くと、ナイフで満足してしまうので、どうしても蛇足に感じてしまう……。

以上、やはり演奏技術の未熟さと、それに伴うアレンジの手札の少なさがどうしてもネックに感じてしまいましたね。特に増川と升はできることが少なすぎて、自分たちの首を絞めている印象。逆にチャマと藤原は前に出すぎな感じでなんともアンバランスですが、個人的にユグドラシルあたりまでのバンプの面白さは、「弱小チームを率いて強豪校を倒していくエース藤原」みたいな少年漫画のテイストにあると思っているので、これはこれで楽しいのですが。次回はインディーズの2nd、THE LIVING DEADを聴きます。

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