友との語らい

楽園にいた頃は、こうでは無かった
 
葡萄をひとふさ
口にはこぶ
 
口元に輝く
草原の緑のように
かおる甘い香り
 
人ひとり分の荷物を背から下ろすと
長身の彼女はひとごこち
フードをめくり、髪をかきあげる
 
この土地に降り立ち
多くの友と時を過ごした
 
時に虹色の髪をもつ少女
時に白き聖獣を従えた男
時に水色の髪を束ねた髪
 
スパイスを多く使う肉料理を口に運び
旅の話をする
大酒飲みのドワーフは隣で喧嘩を始めている
 
彼女はこの土地が好きであった
 
星々をわたり
時の狭間を旅する彼女
 
龍神と恋をした時もあった
 
人が輪廻と呼ぶ輪から外れ
好きな時を旅する彼女
 
彼女を神と称える種族もいた
白と緑の植物をかかげ
赤い辛味のある実を振りまき
深い祈りを捧げてきた
 
漆黒の長い髪はいつも男たちに囁きかける
彼女からいつも甘い葡萄の香りがした
その瞳はいつも遠い
 
この旅に終わりはくるのだろうか
そんな事を思うこともやめた
今は、ただ、
友との思い出に酒坏をかかげる

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