ウクライナ語文法シリーズその18:形容詞の変化と用法
今回から2回にわたって形容詞の変化と用法を簡単に見ていきましょう。まずは形容詞の格変化からです。
形容詞の変化
ウクライナ語の形容詞は品詞としては名詞類に分類され、名詞とのつながりが強いです。
名詞は基本的に性が決まっており、各名詞ごとに数と格に応じた変化をしますが、形容詞では一つの形容詞が性・数・格全てにおいて変化します。この変化は修飾する名詞の性・数・格によって決定されます。
例として、до́брий 「良い」が男性・女性・中性・複数の名詞に付く場合、主格では以下のような形となります。
上記から分かるように、複数では性の区別はありません。ほかの格でも同様です。
形容詞の格変化形は名詞とはかなり異なっていますので、変化表を元に何度も唱えて覚える必要があります。しかしながら、ありがたいことに、硬変化・軟変化で若干異なりはするものの、格変化語尾は常に一定で、形容詞によって語尾が違うということはありません。
また、これまたありがたいことに、主格と対格を除き、男性形と中性形は全く同じ形になります。更に、形容詞には呼格形がありません。呼格の名詞を修飾するときは主格形が用いられます。
注意すべきは名詞と同様、単数の男性形、そして複数形では有生・無生が区別され、有生名詞の対格を修飾するときは形容詞も属格と同じ形を取ります。見た目上は名詞の属格と対格が同じ形になっているところにそれぞれ同じ格の形の形容詞が付くだけなので、それほど難しくはないでしょう。
また、男性・中性形では処格形が二通りあります。これはどちらを使ってもOKです。
それでは、いくつか例を見ていきます。対格は、/の左側が無生名詞、右側が有生名詞の場合です。
до́брий 「良い」
га́рний 「美しい、良い」
вели́кий 「大きい」
主格のアクセントが語尾にある場合、語尾に母音が二つある格のときは一つ目の母音にアクセントが置かれます。
мали́й 「小さい、少ない」
次に、軟変化のパターンを見ていきましょう。軟音になるだけで硬変化と大して変わらないことが分かると思います。軟変化の形容詞は比較的少数です。
си́ній 「青い、濃青の」
коли́шній 「過去の、いつかの」
безкра́їй 「無限の、限りない」
数はそれほど多くありませんが、変化語尾の直前が -ц- になっている形容詞は少し注意が必要です。基本、軟変化系統なのですが、男性・中性の主格、対格(男性名詞は無生のとき)及び具格、そして複数形では硬変化と同じ語尾になります。
念のため紹介しておきます。
білоли́ций 「白い顔の」
形容詞から作られる副詞
大半の形容詞は語尾を -о に変えることで副詞になります。その際、アクセントが移動することがありますので注意してください。
一部の形容詞は -о ではなく -е をつける(つまり中性主格・対格形と同じ)ことで副詞を作ります。ただし、-о と -е どちらでもよいこともあります。
述語としての用法
形容詞は、名詞を修飾するほかに述語にもなり得ます。
これはさほどたいしたことはないでしょう。
一部の形容詞は意味上、特に述語でよく用いられます。これらの形容詞では、男性形で語尾 -ий が取れた形(短形といいます)になることがあります。ただし、-ий の付いた形のほうが好まれ、よく使われます。女性・中性・複数の時は通常通りの形になります。
このタイプの形容詞は意味や用法上重要なものが多いので、主なものを紹介しておきます。
これらの形容詞は特定の格または前置詞を伴った名詞、もしくは動詞の不定形とともに述語句を作ります。
このほか重要なのは、形容詞の副詞形の述語としての用法です。
特に無人称文、つまり英語でいわゆる「形式主語の it」が現れるような、気象や感覚などを表す時によく現れます。この場合、ウクライナ語では主格の主語は現れません。
「~~にとって~~だ」というような意味を表したいとき、つまり日本語で「私は寒い」のような文を作るとき、意味上の主語は与格で表されます(与格、与格支配の前置詞参照)。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?