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ウクライナ語文法シリーズその15:処格、処格支配の前置詞

処格は必ず前置詞と共に用いられ、単独で現れることはありません。早速処格を要求する前置詞を見ていきましょう。



в/у 「~(の中)に/で」とна 「~(の表面)に/で」

この二つの前置詞は「対格、対格支配の前置詞」でもセットで取り上げましたが、対格と共に用いられる場合は方向などを表すのに対し、処格と共に用いられると動作が行われる場所を表します。в/у と на の使い分け方は対格の時と同様で、в/у は「中」というニュアンスを含むため、建物や部屋、国、都市、庭などの何らかの境界線で囲まれた場所に関して用いられます。

бу́ти в кімна́ті/ха́ті/мо́рі/Украї́ні 「部屋/家/海(の中)/ウクライナにいる」
Дро́ва горя́ть у пе́чі. 「薪がかまどで燃えている」
У шко́лі зустрі́вся з дру́зями. 「学校で友達と会った」 

これに対して на は「表面」というニュアンスを持っており、場所としては屋根がなく囲われていない場所(もしくは少なくとも昔はそうだった場所)、すなわち通りや市場、地方や駅について用いられます。

бу́ти на ста́нції/ву́лиці/база́рі/мо́рі/чужині́ 「駅/通り/市場/海/異郷の地にいる」
На стіні́ ви́сять малю́нки. 「壁に絵が掛かっている」
Знайшла́ кота́ на тротуа́рі. 「歩道でネコを見つけた」 

なお、в/уは「中」というニュアンスから、「~に包まれた、覆われた」という表現にも用いられます。

сад у росі́ 「露に覆われた庭」 

また、時間的意味も表します。特に、週が на で表され、月が у/в で表されることに注意してください。

на тім ти́жні 「その週に」 

в че́рвні 「6月に」
в молоди́х літа́х 「若いころは」 

そのほか、抽象名詞や、距離などの単位と共にも用いられる特定の表現を紹介しておきます。

в п’яти́ кіломе́трах від шко́ли 「学校から5kmの距離に」
у ро́лі Га́млета 「ハムレット役で」
крича́ти во гні́ві 「怒りで叫ぶ」
жи́ти в дру́жбі 「友好的に暮らす」
у неду́зі лежа́ти 「病で寝込む」 

на глибині́ 200 ме́трів 「200mの深さに」
жи́ти на карто́плі 「ジャガイモを(主に)食べて暮らす」
бу́ти на самоті́ 「独りきりでいる」
ма́ти на ду́мці 「頭にある、考慮している」 

при 「~に、~に付属して、~に際して、~のころに」

日本語への訳し方は非常に色々なのですが、空間的にも時間的にも、後ろに置かれる語で表される対象に「くっついている」イメージを持ってください。このイメージさえあれば、うまく訳せるはずです。

при вхо́ді до кімна́ти 「部屋の入り口のところに、部屋に入る際に」
При на́шому інститу́ті є ка́федра лінгві́стики. 「我々の研究所には言語学科がある」
при захо́ді со́нця 「日没時に」
при О́льзі 「オリハがいた頃、いる前で」
При здоро́в’ї він мав такі́ си́ли. 「健康な頃、彼はとても力持ちだった」
Він живе́ при ма́тері. 「彼は母親と同居している」 

по 「~のあたりに、~の後に」

こちらも非常に意味と用法の多い前置詞です。「~の後に」という時間的意味の方は分かりやすいのですが、空間的には、特定の地点というよりは広がりのある場所を表します。また、時間帯に関して恒常的に行われることに関し、「~毎に、毎~」といった意味を表すこともあります。

жи́ти по Дніпру́ 「ドニプロ川沿いに住む」
ходи́ти по кімна́ті 「部屋を歩き回る」
уда́рити по голові́ 「頭を叩く」
по війні́ 「戦後」
по трьох ро́ках 「3年後」
годи́на по годи́ні 「何時間も、毎時間(直訳:一時間の後の一時間)」
рік по ро́ці 「何年も、毎年、来る年来る年(直訳:一年の後の一年)」
по ноча́х 「毎夜」 

по にはこのほか、「~を通じて」という用法もありますが、この用法はおそらくロシア語の影響によるものだとされています。ロシア語では по は与格支配のときに非常に広い意味を表します。

пізна́ти по го́лосі 「声でわかる(認識する)」
транслюва́ти по ра́діо 「ラジオで放送する」 ※ра́діоは不変化の中性名詞
това́риш по шко́лі 「級友(直訳:学校を通じての同志)」 

о 「~時に」

古い文や方言、文学作品などでは「~について」という意味を表すこともありますが、現代標準語での用法は、基本的に序数詞(及び省略されることが多いが годи́ні 「~時間、~時」)と結びついて「~時に」と時刻を表します。

о дев’я́тій (годи́ні) 「9時に」
о сьо́мій (годи́ні) 「7時に」
о котрі́й (годи́ні) ? 「何時に?」

по́при 「~のいる前で」

приとほぼ同義ですが、意味範囲は狭くなっています。

по́при осо́бі на́шого тетра́рха 「我々の領主その人がいる前で」

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