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シノビガミ探訪帖 -斜歯忍軍編①-

 はじめましての方ははじめまして。そうでない方も新シリーズなのではじめまして。三度の飯よりTRPG、YT_Astolfoです。
 普段は無意識組ってところでTRPGをしたり、動画を投稿したりしています。最近はTRPGに使うイラストのタスクが消化しきれず押しつぶされながらアークナイツで心を癒しています。アンデッドなので普通の回復ではダメージを受けてしまうんです。
 今回は斜歯忍軍について語るnoteです。当初の予定では忍法名の元ネタを考察するnoteでした。後者のみを求めている方は下の目次から該当する忍法へ飛ぶと長々と考察が書いてあります。他は読み飛ばしましょう。
 だって前置きだけで2000文字超えてますからね。

本作は、「河嶋陶一郎」「冒険支援株式会社」「株式会社新紀元社」が権利を有する『忍術バトルRPG シノビガミ』の二次創作物です。
(C)河嶋陶一郎/冒険支援株式会社/株式会社新紀元社


前置き

 有名な話に「優秀なプログラマーは調べ物が上手い」という話があります。これは既存のコードをゼロから書き直す、いわば車輪の再発明に対しての皮肉として用いられる話で、コードの現状を把握して適切な解決策を調べるというのが肝要だという話です。よく過去に学べとか温故知新とか言う奴ですね。
 そんな自分は元プログラマ志望だったのですが、労働というコンテンツが自分の身を滅ぼすということに気付き、現在は自分の限界と折り合いをつけながらほどほどに働いています。最近大怪我をしたのでなんか理不尽に仕事が減りましたが。

 とはいえ調べ物をする力というのは一朝一夕で失われるようなものではないんですね。昔取った杵柄です。
 前置きが長くなりましたが、自分の好きなコンテンツであるシノビガミの忍法名について私見も交えて調べながら書いてみました。当然開発になんら関わっていない身である以上(むしろ、だからこそこのノートを書いても怒られないんですが)わからないものはわからないです。
 何か知っている方はお気軽にコメントだとかをしていただけると確認して追記していきますのでよろしくおねがいします。

きっかけ

 きっかけは至極単純、なんか調べてたら廻鴉の忍法の元ネタがたまたまめちゃくちゃ見つかったんだよね。
 せっかくなら備忘録として公開しておけば後々助かる人も出てくるのかなと、そう思った訳です。

小噺

 今回のサムネイル画像は写真AC様からお借りしています。
 俺たちの味方、写真AC。クレジット不要だけど感謝を伝えたい。
 画像の歯車は斜歯忍軍の名前の由来となった「はすば歯車」、ヘリカルギヤという奴です。その名の通り歯が斜め(斜、はす)についていますね。
 見た目の異質さに反して結構幅広い製品、特に僕らが中身を普段見ないような大きな製品に使われていることが多いらしいですよ。車とか。

斜歯忍軍について

 こういう場で語るのはよくないと思うんですが、どうせ長々と長文を読みたくない人は目次から目当ての忍法のところを読むと思うんですよ。
 という訳でシノビガミに詳しくない人向けに斜歯忍軍の解説をしよう。

 斜歯忍軍のルーツは雑賀衆だそうです。
 雑賀衆は戦国時代に実際に存在したとされる鉄砲軍団で、傭兵として活躍していたらしいですね。有名な雇い主だと伊達政宗とかでしょうか。有名ですね。すごく。
 そうして火器だとか忍具・忍器を磨き、新しい技術を取り入れて現代まで連綿と繋がれてきた流派が忍具、忍器、そして機忍のスペシャリスト、斜歯忍軍です。

 基本ルールブックには斜歯忍軍の忍法は「応用性が広く」、と説明されていますが、その実態は非常にピーキーです。
 特定条件下で強化される忍法や、特定の忍法構築で映える忍法が多く、他の流派に比べて「とりあえずこれ」と言った定番メニューが少ない点がピーキーさに繋がっているのでしょう。

 しかし決して弱いという訳ではなく、カードゲーム的に言えばコンボデッキ、つまり自分のやりたいことを押し付けて勝つことが得意な流派とも言えます。【機忍】によって構築の幅が大きく広がるため、多種多様な戦術や、通常であれば断念せざるを得ないロマン構築を成功率はともかく「実現可能」の域まで押し上げることができるというのも大きな特徴です。
 どのぐらい大きく広がるかというと、著者である河嶋氏当人が生放送で「斜歯忍軍は【機忍】があるので他の流派ブックも実質自分たちの流派ブックですよね。だから斜歯忍軍は申し訳ないですが最後に回すことにしました。」といった旨の発言をしたくらいです。
 自覚あったんですね、そりゃまぁ機忍ってそういうものですからね。その万能性が売りですから。

 とはいえ複雑なコンボを好まない人には扱えないのかと言われるとそうでもなく、あくまでも「忍法同士を組み合わせることで効果を発揮する忍法が多い」ことでこうなっている訳です。
 例えば【水霊】という忍法は戦場を水中に変更できる忍法があれば、それだけで充分強い(水中の効果自体が回避の難易度を上げる点も非常に相性がいい)ですし、【土竜吼】なんかは組み合わせる先はもはや【接近戦攻撃】でも構いません。

 そう、斜歯忍軍の魅力は「個々の忍法で戦うのではなく、その組み合わせによって真価を発揮する」ところです。当人たちは研究ばかりしていて人と関わるのは苦手そうですが、忍法自体は「戦いは個人戦ではなく、団体戦だ」と認識しているんでしょうか。
 その性質上、「呪い」などの忍法を未修得にする効果とは相性が悪いとされます。最近登場した流派ブックではその呪いへの対策として忍法【保守】や仕掛け【描き】が追加されたのは記憶に新しいですね。

 とまぁデータ面での魅力ばかりを語ってきましたが、これは仕方ありません。正直設定の話はルールブックや流派ブックに書いてあるのが全てですので大人の事情で詳しいことが言えないんですね。
 そういう方向の魅力としては「機械かっけー!」「ドリルは俺たちのロマン」「かがくのちからってすげー!」「自分の研究に向かって全力で進むひたむきさっていいよね」「最高の頭脳でバカなことやるのって楽しいよね」とかそういうのが挙げられるんじゃないでしょうか。多分もっとあります。
 筆者は斜歯大好きです。だってドリルってかっこいいじゃん。機忍が好きなのは多分仮面ライダーフォーゼとかの影響です。モジュールを使い分けて戦うのってかっこいいじゃん。

流派忍法

 という訳でここからは忍法の元ネタを絡めて話をしていきます(《絡繰術》だけに)。既に2000文字超えていますが気にしてはいけません。読み飛ばしてください。オタクが早口で喋っているだけなので。

・【鳳凰】ひのとり

 鳳凰(ほうおう)とは中国神話に登場する伝説の鳥、霊鳥ってやつです。
 ホウオウってポケモンもいるので結構知名度はあると思います。逆にルギアってなんなんですか?
 しかし鳳凰の鳳は風冠(かぜかんむり)がついていることから分かる通り、鳳凰は元々風を司る神とされます。何故炎なんでしょう。
 それは鳳凰そのものが西洋のフェニックスと同一視された結果、イメージがフェニックス側に寄ってしまったからとされます。

斜歯忍軍の流派紋。ヘリカルギヤ(はすば歯車)で囲まれた八咫烏が描かれている。

 また、斜歯忍軍の流派紋(上図)は八咫烏がモチーフとなっています。
 八咫烏は太陽の化身として伝わっており、ここから火の鳥というイメージをすることも容易でしょう。

 とここまで真面目なことを書いていて、一部の読者はこう思ったかもしれません。「作者の人別にそこまで考えてないと思うよ」と。

 僕もそう思います。間違いなく元ネタは「科学忍者隊ガッチャマン」に登場するメカ、「ゴッドフェニックス」が放つ必殺技、「科学忍法・火の鳥」です。
 すべての辻褄が合います。トドメにしか使えない高火力技なのも必殺技だからです。
 何ならフレーバーテキストに「科学忍法」だとか「炎で包み」だとか「体当たり」だとか書いてあります。100%ガッチャマンです。

・【水霊】みずち

 蛟(みずち)は日本神話に登場する伝説の蛇であり、水神です。
 語源は水(み)+つ+霊(ち)であり、日本神話的には実に正しい漢字表記となります。雷も厳(いか)+つ+霊(ち)、火の神カグツチも輝(かぐ、かぐや姫も輝夜姫と表記しますね)+つ+霊(ち)で、日本神話にチで終わる名前が死ぬほど多い理由になります。多すぎる気もします。アシナヅチとテナヅチもそう言っています。

 蛟や大蛇(おろち)と呼ばれる怪物群にまつわる伝承は一説によれば太古の昔、川の氾濫に悩まされたことを伝えているとされます。
 大蛇退治の伝説は当時の治水事業の比喩だとする説です。
 実際、蛟は水の主として伝わっており、水を自在に操るというのもここから来るものでしょう。

 蛇と忍者との関係性についてはまず真っ先に思い浮かぶのは「甲賀三郎伝説」でしょうか。一説によると甲賀流の祖とされる人物である甲賀三郎が自分の嫁を天狗に誘拐されて兄弟と一緒に探しに行ったら、兄に裏切られて地底から戻れなくなり、地下で暮らすうちに身体が蛇になってしまった……って感じのお話です。なんやかんやあって諏訪の神になります。
 そんなに詳しくはないです。FGOの望月千代女を調べた時に知りました。
 実際諏訪には諏訪湖という(琵琶湖のせいで霞みがちですが)バカでかい湖があり、諏訪の神=水神と言われてもまぁ納得できますね。

 ちなみに余談ですが日本には昔、「蛟龍」という名前の潜水艦がありました。もし斜歯忍軍に意図して割り振られたのならこれがその理由の一助になっている可能性が高いです。さらに中国にも「蛟竜」という名前の深海探査艇があるらしいです。こっちはさっき調べて初めて知りました。

・【土竜吼】どりゅうこう

 土竜はモグラの事ですね。吼は「吼える」と送って「ほえる」と読みます。
 もぐらを土竜と書く理由は「土を掘って出来たトンネルが竜のように見えるから」らしいです。嘘っぽいですよね。一説って書きそうになったけど、どの文献でもこう記述されてるんで多分事実なんだと思います。少なくとも学説上は。

 土竜に吼えるイメージってないですよね。意外としっかり鳴くんですよ、モグラって。気になる人は調べてみてください。
 あと土竜って元々中国の方ではミミズって意味だったらしいですね。
 実際モグラとミミズでどちらがドラゴンかと言われたらまだミミズな気がします。

 【土竜吼】のモデルは恐らく掘削機械、ドリルでしょう。
 工具ではなく、トンネル工事に用いたりする重機の方です。
 モグラもドリルも穴を掘るものですし、特技もしっかり《掘削術》です。

 個人的には【土竜吼】という名前の由来は「ドリルの駆動音を暴れモグラの吼号に喩えたんじゃないか」と推測しています。所謂暗喩という奴です。
 ほえると読む字は他にも「吠」、「咆」、「吽」、「哮」、「呴」、「嘷」、「噭」、「虓」と枚挙に暇がありません。多分探したらもっとある気がします。半分くらい常用範囲からはみ出てますが。
 どれも意味に大したニュアンスの違いはなく、どれを使ってもだいたい同じ、なんならコウと読む漢字は先程挙げた中に複数存在しています。

 なら何故「吼」なのか。多分そこまで考えて作られていませんが、漢字に「孔」が含まれていますね。
 孔子の孔。コウ、訓読みは「あな」です。植物の呼吸口である気孔なんかもこの漢字ですね。
 ドリル、モグラ、《掘削術》から連想するのにぴったりな漢字に思えてきました。そういう意図があったと見てもいいでしょう。なんなら元の名前は「土竜孔」だったまであります。

 ちなみに諜報機関では機関内に紛れ込んだ二重スパイのことを「Mole(モグラ)」と呼ぶそうです。忍者っぽいですね。どっちかというと比良坂っぽいですが。

・【爪穿】そうが

 爪牙(そうが)とは爪や牙の事、転じて主君の手足として働く家来の事を指します。自分たちの名前に同じく転じて手足となって働くものを指す「歯車」の名前をあしらっている斜歯忍軍らしい名前の忍法です。
 「穿」という字には牙が含まれており、元の意味の「穿(うが)つ」も先程の【土竜吼】に通ずるところがあります。なんなら穿孔(せんこう)で穴を開けることを意味しますからね。

 また、斜歯忍軍のルーツである雑賀衆の「雑賀」は苗字に使われていたりもします。それこそ頭領が雑賀孫一ですからね。
 その読み方は源流である雑賀衆の「さいか」、変化して伝わった形の「さいが」、そしてどういう変遷を辿ったか不明(※こればかりは調べても分かりませんでした、ソースがあれば文献やサイトなど教えていただけると助かります。)ですが、その読み方には何の因果か「そうが」が存在しています。

 なお、「穿」という字に「ガ」という読みはなく、恐らく「爪(音:ソウ)」+「穿(訓:うがつ)」という組み合わせをしているか、前述の爪牙のもじりかのどちらかだろうと思われます。

・【不意打ち】ふいうち

 不意打ち/不意討ち(ふいうち)とは出し抜けに相手に攻撃を仕掛けること、そこから転じて予告なしに物事を行うことを指します。
 知ってましたか? 知ってることが殆どだとは思います。一般単語ですからね。

 不意打ちというのは不意に討ってかかることです。「討つ」は「討ち果たす」などのように倒す、攻撃するみたいな意味になりますね。「不意」は思う、考える、意識するを意味する漢字「意」に否定接頭辞の「不」をつけて「意識していないタイミング」とか「思ってもいない時・その状態」を指します。
 意識の否定って意味では不意と無意識って語源も意味もとても似通っていますね。親近感。

 「すっぱ抜く」という言葉があります。
 今でこそ「隠し事や秘密を暴くこと」を指すこの単語ですが、元々は「驚かせる」という意味で不意打ちのことを指していました。
 すっぱとは忍者の事です。漢字で書くと素破抜くや透破抜くと書くのですが、このうちの透波はシノビガミの古流流派にもなっていますね。
 忍者は追い詰められると刀を抜いて不意討ちします、というより追い詰められるまで刀は武器として用いないことが多いんですよね。忍者にとっての刀って鞘含めて便利グッズですから。
 とまぁこの刀を抜いて不意討ちをするところから元々は「突然刀を抜き放つこと」を意味していたそうです。

・【布砦】ぬのとりで

 【布砦】のフレーバーテキストには「まとった衣装を伸ばし、相手にからませてその動きを封じる。」とあります。
 これっておかしいと思いませんか?どこが砦なんでしょう。
 布罠とか布縛とかの方がいい気がしませんか?

 その答えは横山光輝の漫画『伊賀の影丸』にあります。
 作中に登場する忍者、「天鬼」の使う忍法にちょうどまったく同じ名前の忍法があるのです。
 こちらの「布砦」は自分の顔に巻いていた包帯を地面に撒いて、踏んだ者をぐるぐる巻きにするもので、布の要害、砦と呼ぶことができるでしょう。

 『伊賀の影丸』自体、60年代の作品なのでもはや現代の忍者コンテンツの中では古典の領域と呼んでもいいかもしれません。
 なんなら横山光輝だってめちゃくちゃ有名ですからね。

・【闇蜘蛛】やみくも

 闇雲(やみくも)とは先の見通しを立てずむやみやたらに事を行うことを言います。忍法のフレーバーテキストとは大きく異なりますね。
 その点も踏まえて調べてみましょう。

 忍者と蜘蛛の関係性について、まず思い浮かぶのは「水蜘蛛」です。
 すごく有名なので解説するまでもない気がしますが一応解説します。
 忍者が栄えたとされる戦国・江戸の時代には城の周りを掘で囲むことで侵入ルートを絞るというのが定番でした。そのため、忍者は水上を移動することに大きな価値があったんです。
 水蜘蛛はそれを解決するために生まれた忍び道具で、脚に装着することで水面を歩けるように作られたものだと言われます。

 また、蜘蛛という動物自体のイメージとして糸を使ったアクロバティックな動きが忍者と通ずるところがあるというのもありますよね。
 こちらはソースとか特になくて純粋な感想なんですが。

 というわけで【闇蜘蛛】の元ネタですが、ここまでの傾向から恐らくひすゎしによる漫画『忍者ボーイとんとん飛丸』に登場する悪役キャラクター、「闇蜘蛛」なんじゃないかと思います。
 なんか思ったより昔の忍者漫画に関係する言葉とかが普通にそのまま出てる気がするんですよね。ジェネレーションギャップですね。僕は若い方ですが。

・【惨撃】さんげき

 惨劇(さんげき)とは悲惨な内容の演劇、また、それから転じて殺人などの惨たらしい出来事を指します。前者は悲劇、後者は惨事の類語ですね。
 《拷問術》が指定特技であるところから、恐らくは忍具を酷く惨たらしい方法で用いた攻撃なのでしょう。それこそ苦悶の梨だとか、小型の拷問器具は意外とあります。

 モチーフと思われる「惨劇」はミステリー小説によく使われる単語で、斜歯忍軍よりは『流派ブック「私立御斎学園」』で追加された下位流派、探偵育成学校「マクファーデン探偵教室」だとかハグレモノの下位流派、殺人請負人「夜顔」などの方が似合っている気もします。
 それでも斜歯忍軍にこの忍法があるのは「惨い」という言葉が使われる対象のほとんどが「常人には考え付かない非人道的な『人間』の行い」であることからでしょうか。

 器術というのは道具を上手く使うための技術であるため、「斜歯忍軍にかかればどんな忍具であっても拷問(攻撃)に利用できる」ということを表現するための忍法なんでしょうね。

・【武器破壊】ぶきはかい

 西洋にソードブレイカーと呼ばれる武器がありました。
 これは片面にギザギザの刀身を持つ短剣で、相手のレイピアやサーベルを挟んでへし折ったり、叩き落とすことに特化した武器です。

 日本にも似たように防御に使われた武器があります。
 十手です。こんな(丩)形の武器ですね。
 こちらも相手の刀を受け止めて叩き落とすことができる形状です。ひっかけるところがある時はだいたい殺傷力を増すためか相手の武器を奪うためな気がします。

 他には釵という武器もあります。
 これは琉球古武術で用いられた武器ですね。こんな(ψ)形の武器ですね。海外では忍者の定番武器になってるらしいです。全然そんなことないんですけどね。

・【奈落】ならく

 奈落(ならく)とは仏教における地獄を、あるいは地獄に落ちることを指します。そこから転じて舞台の床下にある空間を指すようにもなりました。
 シノビガミでは落とし穴なので両方繋がりがあると言えるでしょう。

 奈落で落とし穴って言うとやっぱり思い浮かぶのは《奈落の落とし穴》ですね。対NPC戦でやたら強い罠カードです。実際に蟲惑魔とかで使うなら底なしとか墓穴ホールの方を優先したいですが、今回は遊戯王のnoteではないので割愛。
 どうでもいいですけど割愛って養蚕用語でくっついた蚕のオスメスを無理やり引きはがさないと弱るまでくっついてるからってとこが由来らしいですね。

 【奈落】ってこれまでのように漢字の意味を解説できないんですよね。
 元々サンスクリット語の「नरक(Naraka、音写:奈落迦)」が由来らしくて、サンスクリット語の方を読みとかないといけないんですが、実は筆者はサンスクリット語が読めないんですよね。
 英語とか古代エジプト語ならともかくサンスクリット語は読めないので解説ができません。どなたかグプタ朝出身の方がいらっしゃったら連絡をください。喜んで勉強させていただきたいと思います。

・【機忍】きにん

 これ説明の必要ありますか?

・【魔界工学】まかいこうがく

 これも正直【機忍】と同じくあんまり解説することないんですよね。
 多分オリジナルの用語なので。

 とはいえ【機忍】ほど解説することがないわけではありませんのでちょびっとだけ解説します。解説するので遁甲符ください。

 魔界(まかい)は仏教における「仏界」に対する概念です。反対概念ってやつです。
 忍者と仏教って関わり深いんですよ。実はなんですが特に斜歯忍軍はその影響が強いと言えるでしょう。【奈落】と【魔界工学】があるからでしょうか。
 いいえ、違います。彼ら斜歯忍軍のルーツは雑賀衆だけではないからです。そのルーツとなる流派は根来衆。雑賀衆と並んで語られる鉄砲で武装した傭兵集団にして、根来寺を本拠地とする僧兵たちです。
 彼らをルーツに持つからこそ斜歯忍軍は少し仏教色を含んでいるのではないかと考察できるでしょう。

 また、「魔界」という単語と忍者について語るなら欠かせないのが山田風太郎の伝奇小説、『魔界転生』でしょう。
 『ドリフターズ』や『Fate/Stay night』など、数々の作品が影響を受けた伝説とも呼べる作品です。
 あまりにもビッグタイトル過ぎて僕がこのnoteで語ると色んな所から火矢が飛んできそうなのでこの場では詳しく言及を避けさせていただきますが、オタクの諸君には是非読んでいただきたい。

 実際【魔界転生】という忍法も存在しており、【魔界工学】の効果自体も妖術を器術から代用できるようにするという隠忍の血統との繋がりを感じさせる忍法になっています。斜歯忍軍、隠忍の血統、根来衆……関わっている流派がどいつもこいつも碌な奴がいません。きな臭すぎてもう直で硝煙を嗅いでいる気がします。

 工学(こうがく)とは数学・化学・物理学などの学問を工業生産へと利用するための学問です。【魔界工学】というくらいですから恐らく意味するところは「妖術を工業生産へと利用する工学の一分野」と読み解けるでしょうか。
 【魔界工学】を持つ斜歯忍軍のキャラクターはオカルトすらもエネルギーに変えようとするようなキャラクターということでしょう。
 でも実際の処理としてはどちらかというと機械で妖術を再現することの方が多そうなんですよね。ままならない。隠忍の血統でも【魔界工学】が使えるような超限定的背景があってもいい気がします。枠が勿体ない気もします。

あとがき

 という訳で基本ルールブックの流派忍法について紐解いていきましたがどうだったでしょうか。キャラクター作成や考察の一助になったなら幸いです。
 というかここまででだいたい9000文字あるらしいです。ちょっとオタク喋り過ぎだと思うよ。

 本当は秘伝忍法も書いていこうと思ってたんですがこの長さだと別で書かないと身が持たないのでかなり長編シリーズになりそうです。
 まぁ調べ物は楽しいのでそんなに苦ではないのですが。強いて言うなら高速タイピングで肩が粉砕されつつあることが一番キツいです。休憩時間含めて丸一日以上書いています。

 次回の探訪帖は恐らく秘伝忍法についてになります。
 note自体、最低でも月一くらいで更新できたらいいなと思います。

 それではここまでお読みくださりありがとうございました。

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