一般人にもわかりやすいようにColaboの住民監査請求結果を検証してみた

1.はじめに

 2022年1月4日に「Colabo(コラボ)」に委託料の不正受給があるとした「暇空茜」氏による住民監査請求の結果が発表されてからネット上ではその内容を巡って様々な議論が行われています。
 具体的には「結論で本件精算には不当な点が認められると書いている。つまり不正はあった」「暇空氏の請求内容のほとんどは「主張は妥当でない」とされている。つまり不正はなかった」など真っ向から意見が対立するような発言も見られます。
 今回の検証においては請求結果の内容を改めて見直し「何が正しいのか」「何がおかしいのか」についてできるだけわかりやすくまとめていきたいと思います。

(自分は法律に詳しくない一般人なので請求内容の正否については書きません。なので法律に関する事についてはコメントで指摘してくださると幸いです)

2.抑えておくべきポイント

 まず、今回の検証を読み進めるにあたって以下の資料を読んでおく事をオススメします。

・東京都監査事務局:
 住民監査請求結果
・一般社団法人Colabo(コラボ):
 活動報告書

 その上で今回の請求結果で抑えておくべきポイントとして、

1.「請求人が提出した資料(表1)はcolaboの事業書と実施状況報告書に基づいて作成されたものである」
2.「法人側が提出した資料(表3)は台帳に記録していた経費(本件経費)により作成されたものである」
3.「請求人の請求のほとんどは表3の内容に基づき主張が妥当でないとされた」
4.「『本件経費の検証について』において本件経費は、
 1.委託事業の経費として計上するに当たり不適切な点があるもの
 2.委託事業の経費として計上するに当たり妥当性が疑われるもの
 と認められている」
5.「結論において『本件精算には不当な点が認められ、その限りで本件請求には理由がある』とされている」

 の5つのポイントがあげられます。特に「表3」と「本件経費」に関しては請求結果を読み解く上で重要な単語になるので良く覚えておきましょう。
 それでは以下より上記の5つのポイントについて説明していきたいと思います。

3.表1について

 ページ16の30行目で表1は「本件事業計画書」と「本件実施状況報告書」に記載された事業実績額とされています。
 これらの資料の内容は「暇空茜」氏が公開している「Colabo戦記第二部 資料 4団体令和4年事業計画書と令和3年実施状況報告書と議事録全ページ」から確認することができます。

4.表3について

 18ページの1行目で表3は本事業の実施に必要な経費として法人Aが台帳に記録した経費(本件経費)とされています。
 これはcolabo内の帳簿、領収書などを調査した結果(本件帳簿記録)に基づいて作成されたものです。これらは一般に公開されていないので1月10日の現在において内容を確認する事はできせん。

5.請求人の主張を検討した結果について

 主張の内容は18ページの6行目から21ページの28行目にかけて計9つの内容に分けて説明がされています。
 それぞれ結果としては以下の通りです。

5-1.宿泊支援費

・宿泊支援費に係る本件経費は(表3)に書かれてあるとおりである。
本件事業計画書の記載とは異なるが費用を本件経費として計上してる事が確認できる。
・よって本件活動報告書に基づいた請求人の主張は妥当でない。

5-2.車両関連費

・車両関連費に係る本件経費は(表3)に書かれてあるとおりである。
・新たなタイヤやドライブレコーダーの購入、月6万円の駐車場の賃借については本件経費に計上されていない。
・月極駐車場代やタイヤ交換費用は本件経費に計上してる事が確認できる
本件実施状況報告書に記載されていないが車両に積載する備品類の購入等が(本件経費に)計上されていることは確認ができる。
・よって請求人の主張は妥当でない。

5-3.旅費交通費

・旅費交通費に係る 本件経費は(表3)のとおりである。
本件実施状況報告書ではガソリン代、 移動交通費の内訳の記載はないものの、実際に要したガソリン代や移動交通費を本件経費として計上していることが確認される。
・よって試算に基づいた請求人の主張は妥当でない。

5-4.通信運搬費

・通信運搬費に係る本件経費は(表3)のとおりである。
・携帯電話代を本件経費に計上していることが確認はできる。
・本件事業所要額内訳の合計額は誤記。

5-5.会議費

・会議費に係る本件経費は(表3)のとおりである。
・会議代などを本件経費に計上していることは確認できる。
・よって本件活動報告書を根拠とする請求人の主張は妥当でない。

5-6.各種保険

・各種保険に係る本件経費は(表3)のとおりである。
・法定福利費などを本件経費に計上していることは確認できる。
・よって本件活動報告書を根拠とする請求人の主張は妥当でない。

5-7.医療費

・医療費に係る本件経費は(表3)のとおりである。
本件活動報告書で支援があったとする医療費とは別の実際の医療受診費用等を経費に計上していることが確認できる。
・よって請求人の主張は妥当でない。

5-8.人件費

・人件費に係る本件経費は(表3)のとおりである。
・税理士及び社労士の報酬自体は報償費に該当すると認められ、人件費として計上すること自体は問題は無い。
・しかし税理士及び社労士報酬を全額計上しており本事業の実施に必要な経費以外の経費が含まれることになるため適切でない
・よって請求人の主張の一部には理由がある。

5-9.実施状況報告書の信憑性に関する主張

・法人Aの自主事業も含む本件活動報告書と本件委託に係る都に提出した実施状況報告書との差異を述べるにとどまっている。
・本件実施状況報告書に不正があることの合理的な疎明はなされておらず、請求人の主張は妥当でない。

 以上の結果をまとめると、1番から7番は本件経費から作成された表3を中心に判断されており、請求人の主張は妥当では無いとされています。その内1番〜3番、7番においては本件実施状況報告書に記載されていない本件経費には記載されているので妥当性が無いと判断されている。
 また8番は、税理士及び社労士に対する報酬は人権費として計上する事は問題が無いとしていますが、事業の実施以外の経費が含まれていたため、請求人の主張の一部には理由があるとされています。
 最後に9番は、活動報告書実施状況報告書の記載内容の違いは不正であるとは認められず、請求人の主張は妥当では無いとされています。
 ほとんどの主張において「請求人の主張は妥当でない」という結果となりました。

6.本件経費に対する疑惑について

 21ページの29行目における「本件経費の検証について」で、領収書等の関係帳簿の調査、関係人調査をした結果、
委託事業の経費として計上するに当たり不適切な点があるもの
委託事業の経費として計上するに当たり妥当性が疑われるもの
といった事が認められています。
 計5つの項目に分けて説明がされており、内容の要約としては以下の通りです。

6-1.人件費、法定福利費について

本件経費のうち本事業の実施に必要な経費を特定するには、本事業以外の事業の実施に要した経費を区分する必要がある。
・給与について、事業への従事割合によって委託事業の経費として按分(割り振り)をしたという説明がされたが、按分の根拠となる考え方が不明瞭で、その実態が不統一であり不適切である。
・按分すべき法定福利費、税理士報酬等については按分せず全額計上しており不適切である。
・一方で給与については総支給額を計上せず、所得税等の税額を控除した後の金額を計上しており、過少計上となっている

6-2.領収書について

・本事業の特性上やむを得ない事由があることは理解できるが、証憑書類(取引の内容をお互いに確認し、成立したことを証明するための書類)としての性質上、領収書として認められるか否か疑義が生じるような領収書が含められていることは不適切である
・また、領収書が示されていない事項が本件経費に計上されていることは不適切である

6-3.事業実績額の内訳の記載について

・本件事業実績額の内訳には実際とは異なる備品や購入していない備品が記 されている
実態を正確に反映せず本件事業計画書の事業所要額の内訳をそのまま転記したものと思われるものが見受けられることは不適切である

6-4.履行確認について

・アウトリーチ支援のうち、「夜間見回り等」では、「声掛けや相談支援を原則として週1回 程度実施する。または、都内繁華街などに常設の相談場所を設置し、原則週1回以上若年被害女性等の相談に応じる」とされている。
・しかし、本件実施状況報告書では、特定の事業によるアウトリーチ実施回数と声掛けをした人数や参加者数しか記載されていないのは、その実態が把握できず不適切である

6-5.給食費、宿泊支援費について

対象人数が不明であるものの、一回当たりの支出が比較的高額なレストラ ンでの食事代やホテルの宿泊代、また食事代とは理解し難い物品の購入代が 計上されている
・さらに、宿泊支援費について都外遠隔地での宿泊代が計上されていることなど、本件契約の仕様書に記載される文言そのものからは委託事業の経費として計上することに妥当性が疑われるものが見受けられる


 どの項目においても事業内容に対して厳しい指摘がされており、「根拠となる考え方が不明瞭」「実態が不統一であり不適切」「領収書として認められるか否か疑義が生じるような領収書」「食事代とは理解し難い物品の購入代」などと、おおよそ日常生活で耳にする事が無いような言葉で問題点を強く指摘されています。

7.結局どういう事?

 23ページの27行目における「結論」において「以上のとおり、本件精算には不当な点が認められ、その限りで本件請求には理由がある」とされています。
 それを踏まえた上で請求結果の要点をまとめると、
1.本件精算には不当な点がある。
2.請求者の主張に対する判断の根拠のほとんどが表3及び本件経費に基づいたものである。
 の2つとなります。つまり「誤った資料を用いて請求者の主張を退けてしまった」という事となります。

8.最後に

 今後の展開について、請求結果の結論に以下の事が書かれています。

令和5年2月28日までに、 (1)監査対象局は、本件契約に係る本事業の実施に必要な経費の実績額を再調査及び特定し、客観的に検証可能なものとすること。 (2)調査の結果、本事業として不適切と認められるものがある場合や委託料の過払いが認められる場合には、過去の事業年度についても精査を行うとともに、 返還請求等の適切な措置を講じること。


 2月末までに再調査を行い正しくかつ客観的に検証可能なものにまとめ直す事が求められており、その結果によっては結論が変わる可能性があります。そのため不正の有無を判断する事は現時点ではまだ出来ません。
 しかし、だからといって何もする事が無いわけではありません。

Colabo及びその関連団体」と「暇空茜」氏の双方の経歴、実績、発言、所属などを調べる事。そして、それらを発信し、議論を交える事で今後の展開に変化が生まれるかもしれません。

 そうした変化を積み重ねていく事で最終的な結果までも変えてしまうかもしれません。

 来たるべき日までに私たちができる事をできるだけやっていきましょう。

※noteの内容に関する修正、削除、追記、もしくはアドバイスがある場合、理由を添えてコメントしてください。手元の資料と照らし合わせた上で修正の判断します。


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