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#32 世界遺産検定の勉強法(9)

《承前》

◾︎プロット(アウトライン)について

主題(結論)を概ね固めたら全体の構成を考えてみます

いきなり全体の構成を思い描ける人はそれでもいいのですが、構成するための個別の素材(パーツ)を作ってそれを組み上げるというスタイルだと色々な設問に対応できるかなと思います

論文の素材のヒントは設問に書かれています
(設問にヒントの提示がない場合もありますが、その場合は設問の文章から発想を広げて自分なりの素材を捻り出します)

前回参照した2022年7月の問3からその素材のヒントを抜き出してみます

『紛争や戦争などがあった際に、軍事活動や人々の生活の維持などが文化財や自然環境の保護よりも優先される。また戦後においても復興が優先されることを考えると、文化財や自然の保護は平和時にしかできないことになってしまう。ユネスコの平和理念を踏まえ、平時だけでなく戦時においても文化財や自然環境の保護がどのような意味を持ち得るのか、具体的な遺産の例を取り上げながら、1,200字以内で論じなさい。』

こちらが問題文になりますが、前段の2つの文の部分は設問の背景を説明している部分ですね
「ユネスコの~」以下が設問として問われている内容になります

まず論文として主張するべき、主題(結論)の部分です
『戦時においても文化財や自然保護がどのような意味を持ち得るのか、(中略)論じなさい』
と問われていますので、必ず書く必要があるのは「戦時において世界遺産の保護がどのような意味を持つのか」ですね

この主題以外の部分で書くべき内容は
「ユネスコの平和理念」
「具体的な世界遺産の例」
になります
設問において明示されている内容ですので、これが抜け落ちてしまうと設問に対する回答としては内容が不足することとなります

次に、この書くべき内容(素材)について、具体的にどのような内容を書くのかを定める必要があります
この際に重要なのが論文の着地点となる『主題(結論)』の部分ですね

模範解答というわけではないのですが、この記事を進めていくためには必要なので私なりの結論を一つ例示します
一つ前の記事でも書きましたが、今回は
「緊急的登録推薦や危機遺産リストへの登録等によって、戦争や紛争による遺産の破壊に対する抑止効果が期待できることから、戦時平時問わずに遺産の保護を継続し、その価値を広く周知することで、ユネスコの目的である平和の達成にも貢献することができると考える(121字)」
を結論にしてみます

続いて、残り二つの内容(素材)をどのように論文に盛り込んでいくのかを考えます

「ユネスコの平和理念」については、憲章前文に謳われている、「戦争は人の心の中に生まれるものだから、人の心の中にこそ、平和の砦を築かなければならない」という文章を軸にするのが素直な構成かなと思います

「具体的な遺産の例」については、少し難しいのですが、この出題のあった2022年7月時点ではロシアによるウクライナ侵攻が始まってはいるものの「オデーサの歴史地区」は緊急的登録推薦される前なので、「バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群」を軸に主題との関連付けを行ってみることとします

これらの素材を組み合わせて、私なりに作ってみたプロットは以下の通りとなります

(序論)
ユネスコの平和理念を踏まえて、平時における遺産保護の意義を述べ、戦時においてこれが無意味となることがないことを説明したいという道筋の提示
(本論)
世界遺産条約の仕組みの中で戦時において活用可能な制度として緊急的登録推薦と危機遺産リストへの登録を例示する
具体的な世界遺産の例として「バーミヤン渓谷」を挙げ、登録の背景と意義を簡略化して説明
これらを受けて、世界遺産として(緊急的に)登録されること、危機遺産リストに登録されることによる効果を論じ、世界遺産という仕組みによる文化財や自然環境の意義を論述
(字数に余裕があれば)緊急的登録推薦や危機遺産リストに登録するにあたっての課題についても触れる
(結論)
本論を踏まえて、再度主題(結論)を簡潔に説明し論文を閉じる

といった流れになります
実際の検定の場ではここまでを下書き用紙にしっかりと書くということは難しいと思いますので、ある程度のところまでは頭の中で組み立ててしまうというのが必要ですね

記事を改めてになりますが、このプロットに沿っての私なりの1,200字論文を書いてみます(そちらは有料記事にするかも)

こちらにて講師を務める予定ですので、興味を持っていただけたらご参加ください

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