しっぽ

 お昼ご飯を食べた後の帰り道、公園で猫を見た。その猫は全身真っ白だったのだけれど尻尾の先の方2センチくらいだけが黒かったので、「変わった猫も居るものだ。」と思い近づいてみた。その猫は人に慣れているのか逃げる様子もなく差し出した手の方へ近づいて来たので、思わず抱き上げてしまった。抱き上げてから「服に毛がついたらちょっといやだな。」なんて思ったが、程よい大きさと心地よい重さに、そんなことはどうでもよくなっていた。
 少し経って、事務所へ帰る途中だったことを思い出すと同時に、その猫もするりと私の腕の中から、砂時計の砂が落ちるように地面に降りようとしたので、慌てて手を伸ばしたら、尻尾を掴んでしまった。「あっ」と思っているうちに、猫の尻尾はみるみる伸びて、2、3メートルくらいになったところで「ぷつん」と切れてしまった。猫は、何事も無かったかの様にそのまま通りの向こうへ走り去って行き、私の手の中には先っぽが少しだけ黒い尻尾が残った。
 何が起きたのかわからずに、しばらく唖然としていたが、手の中にある尻尾を見つけて猫のことを思い出した。「大丈夫なのだろうか」とか「どうして尻尾が」とか色々と想像をして見たが、良い理由が見つからなかったので、「そういうこともあるものだ」と納得したことにして、先っぽが少しだけ黒い猫の尻尾は持って帰ることにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?