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天体の波長とフィルターとセンサーのお話

宇宙空間にある美しい星雲の色のお話です。
(趣味の範囲で学術分野のお話では有りません)

北アメリカ星雲とペリカン星雲

宇宙空間には様々な星雲があります。その星雲の色はどうやって彩られるのでしょう?


波長と色

それは遠く遠くに存在しているガスが放出する光の波長によって決まります。その主なガスの種類と波長が以下の4つです。

  • Hα(水素): 波長 656.28nm → 赤

  • Hβ(水素): 波長 486.13nm → 青

  • OIII(酸素): 波長 495.9nmと500.7nm →青

  • SII(窒素): 672.4nm → オレンジ

グラフで表現するとこの様になります。
左からHβ→OIII・OIII→Hα→SIIです。

この中のHαはオリオン座のバーナードループで赤く広く大きく写真に写るので有名ですね。
実は宇宙空間に存在する元素は水素が大半を占めていて、その水素が反応して発生する光が地球まで届いています。

上記の4種以外にも他の元素が存在していますが、天体写真を撮影するうえではこれらが主要な情報になります。


ナローバンドフィルター

天体撮影をするときには様々なフィルターが利用されますが、この特定の波長のみを通すフィルターをナローバンドフィルターと言います。

私が使っているナローバンドフィルターはデュアルバンドフィルターと呼ばれるもので、Antlia ALP-T Dual Band 5nm Ha&OIII Filter という製品を利用しています。

これは製品名の通り、HαとOIIIの波長だけを通します。
下図がその透過率を示したグラフで左側にスパイクしているのがOIIIの波長、右側にスパイクしているのがHαの波長となります。

このフィルターを利用することで鏡筒からカメラのセンサーの間で、HαとOIIIの以外の波長の光が遮断されます。そうすると光害や月明かりの光も遮断され、光害地の満月期でも天体撮影をすることが可能になります。


カラーカメラのセンサー

カメラのセンサーの重要な要素としてセンサー素子というもがあります。
センサー素子1つが受光する最小単位となります。

カラーカメラの場合にはベイヤー配列といって、4つのセンサー素子でRGBの色を分けて担当して受光しデータ化します。その4つの配列の並びが下図(RGGBの例)です。

なので先程のHα&OIIIのフィルターを通して受光すると、Rの素子にHαが反応してデータ化され、GとBの素子にOIIIが反応してデータ化されます。


モノクロカメラのセンサー

モノクロカメラのセンサーも同様にセンサー素子が並んでいますが、素子の1つ1つに担当する色が設定されているわけではありません。なのでモノクロカメラの場合にはHαを撮るときにはHαだけを通すフィルターを、OIIIを撮るときにはOIIIをだけを通すフィルターを利用します。

そしてHαフィルターを利用したときに4つの素子の受け取る情報はこの様になります。

4つのセンサー素子で受け取る情報がすべてHαになりました。
これは同じセンサー製品のカラーカメラとモノクロカメラで情報量が4倍違うことになります。

またカラーカメラのデュアルバンドフィルターではHαとOIIIの情報量比率を変えることは出来ませんが、モノクロカメラであればHαとOIIIの撮影時間を変えてあげればそのまま情報量の比率が変わります。
それはHαとOIIIの両方を含む対象で、OIIIが淡い対象のときにしっかりOIIIの表現をしてあげることが可能となります。

自分もまだモノクロカメラには手を出してませんが、そのうち取り組んでみたいなと考えています。(沼)



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