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【SNS大学】日本最速で登録者1000万人を達成した男を見て、情報社会の到来を痛感した話

かつてヴァンゆんチャンネルというカップルチャンネルがあった。数あるカップルチャンネルの中では最大手だったチャンネルだ。

私はカップルチャンネルの魅力が一切わからない。よくわからん男女がイチャイチャしてる(しかもビジネスで)光景を見て何も面白いと感じないからだ。なのでどういう層が見てるのか、どの世代から支持されているのか全くわからない。ただ一時期は凄い人気があった。それは確かだ。

しかし2021年のクリスマスに行われた「登録者250万人達成したら結婚する生放送」をきっかけに炎上(当たり前のことである)、オワコン化が続き登録者は激減。結局解散してしまった。

女の方(ヴァンゆんの"ゆん"の方)はフィッシャーズという大手グループYouTuberのリーダー、シルクと結婚したが、男の方(ヴァンゆんの"ヴァン"ビの方)はスパイダーメーンという新しいYouTubeチャンネルを作り、なんと日本最速で登録者1000万人を達成したのだ。実に対照的な2人だといえよう。

そんな彼が今年3月、とある発表をした。それは「SNSの大学を作る」と言うものだ。

発表動画の内容は要約すると以下の通りだ。


•現代社会の中心にはSNSがあるということ

•SNSには無限の可能性があり、家柄や才能の有無で夢を諦める時代は終わったということ

•僕(ヴァンビ)自身才能が無い人間で、何度も失敗してきたが、スパイダーメーンとしてSNSをフル活用したら日本最速で登録者1000万人を達成できたということ

•だから君たちにもそんな無限の可能性があるSNSのノウハウを提供したいということ



…まあ色々思う人もいると思うが、現代の若者には支持されそうな内容だ。現にSNS大学には早速入学応募が殺到しているらしい。

しかしTwitterやYouTubeでの反応は冷ややかだった。私もあまり賛同できない。かつてYouTube専門学校(最近全然聞かなくなった)があったが、それと似たような末路を辿りそうだからだ。

そして同時に情報社会の到来も痛感した。

物申す系YouTuberの代表格、シバターも自身の動画で語っていたが、こういうビジネスは情弱を相手にしたものなのはヴァンビ本人が一番わかっているはずだ。しかも彼は登録者が1700万人以上いる超大物YouTuberだ。単純計算ではヒカキンを上回る知名度だ。稼ぎも十分にあるはずなのだ。

しかしこういうビジネスを行うということは、表の華やかな仕事が少ないということが読み取れる。これだけ登録者がいるのに情弱を相手にした商売をせざるを得ない。しかもSNS大学と称しておきながら、この大学を卒業しても大卒の資格は得られないのだ。完全に確信犯だろう。ちなみに弁護士曰く学校教育法第135条違反にはならないそうだ。

要は何が言いたいかというと、彼は知名度があるにも関わらずそれに見合った実益が得られていないのだ。

ビジネスはいつだってお祭り会場のような人の集まるワイワイした場で生まれる、人がいればアイデアが集まり、活気に満ち溢れ、金が動き、更に人が集まる。そのお祭り会場を開催できるのは資本や知名度のある人や店だ。インターネット、特にSNSが普及してからはフォロワーや登録者の多い著名人がそこに当てはまる。

したがって本来であれば知名度が上昇すれば、結果的に実益も伴うはずなのだ。

しかし彼はどうにも満足する収益を得られてなさそうなのだ。これは一体どういうことなのだろう。

理由は先程私が言ったことだが、情報社会があまりにも発展しすぎてしまったからだ。

先ほど例として出したお祭り会場には一つ前提がある。それは希少性だ。お祭りは限られた日程や場所で開催されるからこそ先述したような価値があるのだ。SNS上ではそれはフォロワーや登録者の多さに当てはまる。かつては100万人のフォロワーや登録者がいるのはとんでもないことだった。

しかし情報社会が進展し、時代は変わった。目に目止まらぬ速さで情報は行き交い、割とネットジャンキーである私ですら知らないようなインフルエンサー、YouTuberがゴロゴロいる。100万という数字の価値はかつての30万程度かそれ以下に下落してしまったのだ。

彼はそんな今の時代を象徴する人物なのだろう。さっきも言ったが、彼は単純計算ではあのヒカキンを凌駕する登録者を獲得している。にも関わらずそれに見合った実益を受け取れていない。フォロワーは最早フォロワーではなく見物人ほどの価値に落ちてしまった情報社会が生み出した人間なのだろう。

何故これほどまでに情報社会が進展したのかというと、それはショート動画の影響が大きいだろう。

スパイダーメーンことヴァンビは、YouTube shortsに海外向けの尺が短い動画をとにかく大量に投稿することで短期間で1000万人以上の登録者を獲得できた。しかしショート動画には致命的な欠点がある。それはその人の魅力を伝えきれないと言うことだ。1分程度の動画を見て、人々は本当に投稿主のファンになるのだろうか。フォロワーは本来「信奉者」、「追従者」という意味だが、本当に1分程度の動画で人々は投稿主のことを信奉し追従しようと思うのだろうか。

悲しいことに、貴方がショート動画で数十万、数百万のフォロワーを獲得できても、そのフォロワーの殆どは貴方の見物人でしかないのだ。動物園の折(スマホの画面)の向こう側で面白おかしいことをしている動物を眺める感覚でしか動画を見ていない。しかも高評価やいいねを押しても、スワイプすれば次から次へと流れてくる膨大なショート動画の波に飲まれ一つの動画のことなんてすぐに忘れてしまう。

ショート動画は人間が求めていた究極の媒体だ。労力を全くと言っていいほど必要とせず、短く、刺激が強く、そして無数にある。ショート動画は人間をドーパミン中毒にさせる悪魔の道具なのだ。

現に私(高校生)のリア友はもうYouTubeの尺の長い動画は見ていない人の方が多い。じゃあどうやって色んなYouTuberの動画を確認するのかと私が聞いたところ、TikTokか、YouTube shortsで各YouTuberがアップした動画の美味しいシーンだけを確認して終わり、なのである。YouTubeは最早MVと切り抜きとshortsを見るための媒体になってしまったのだ。

その影響は音楽にも響いてきている。ストリーミングサービスが主流になった影響で、イントロが長ければ長いほどダメで、反対にサビに入るまでの時間が短く印象的で、そしてTikTokとかで踊れるような可愛い振り付けのある曲じゃないと売れない時代になりつつあるのだ。

なんというか、時代を移り変わりを痛感する。スパイダーメーンことヴァンビの存在は、人々が無数の情報に簡単かつ無料でアクセスし、凄まじい速度で情報が行き交い、数字の価値が日に日に下落し続ける社会を象徴するものなのだろう。私はまだ高校生だが、なんだか悲しくなってしまった。私は昔からかなりのネットジャンキーで、少なくとも同世代と人よりかはYouTubeやSNSに詳しい自信があるのだが、かつて私が目を輝かせていた時代はもう古き良き(良い時代だったかは微妙だが)時代になってしまったのだ。

これからSNSはどこへ向かうんだろう。先程も言ったが、ショート動画は人類が求めていた究極の存在だ。これ以上発展する未来があるとは思えないと言うか、そもそも2010年代の人類史上類を見ない急激な社会変革を牽引したツールであるスマートフォンも、一時期から目新しいアップデートはないことを考えると、動画媒体の完成系であるショート動画もこれ以上発展しないのかもしれない。

ところでかつてVineというアプリがあった。6秒という非常に短い動画が主体のかなり珍しいアプリで、10年前の2013〜2014年ごろに全盛期を迎えた。今社会人数年目の人々の多くはVineを使ったことがあると思う。そんなVineだが、YouTubeとの競争に敗れたことや、Twitterに買収されてしまった(Twitterに動画投稿機能を追加するためだけに買収されたとも噂されている)ことなどから衰退してしまい、姿を消してしまった。

しかし今の時代を考えると、今の若者が求めているのはVineなのかもしれない。短いほど評価され、人々が飛びつき夢中になるこの時代に求められているのはYouTubeではなく、かつてYouTubeとの競争に敗れたVineである可能性が高いのだ。10年前に全盛を迎え、その後姿を消したアプリが今の時代に最も求められているアプリである可能性を考えると、何か歴史の皮肉を感じてしまう。



最後まで私の駄文を読んでくださり、ありがとうございました!

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