国際会議CHIからみる生成AIの勃興とknowledge navigatorの実現

こんにちわ。国際会議CHIに5年ぶりに行ってきたので感想のpostです。


1.CHIとは


CHI(コンピュータ・ヒューマン・インタラクション会議)は、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)分野における国際的な学術会議です。この会議は、アソシエーション・フォー・コンピューティング・マシナリー(ACM)のスペシャル・インタレスト・グループであるSIGCHI(Special Interest Group on Computer-Human Interaction)によって主催されています。
1982年: 初めてのCHI会議が開催され、以降毎年開催されています。
CHI会議では幅広いトピックが取り扱われますが、主なテーマには以下のようなものがあります。

  • ユーザーエクスペリエンス(UX)・インタラクションデザイン・ユーザビリティ・ユーザーセンタードデザイン(UCD)

  • 新しいインターフェース技術・情報ビジュアライゼーション・ゲーミフィケーション

  • 社会的インタラクションとコミュニティ・ユーザー調査とフィールドワーク・人工知能とHCIの統合


CHI会議は、HCIに関連する最新の研究や技術を発表し、世界中の研究者や実務家が交流する場として、非常に重要な役割を果たしています。

2.なぜAI屋がCHIに行くのか


(広い意味で)AI屋の国際会議といったら、
NeurIPS・ICML・AAAI・ACL・CVPR・KDD・IJCAIとかがぱっと思いつくと思います。
少なくともCHIをAIの学会という人はいないでしょう。
ですが私は、企業内で、データサイエンスや機械学習などの産業応用で
仕事する人として、CHIは参加したり論文を読んだりする意義があると考えています。
その理由は、「人間との接点に特化していて、応用が必ず触れられている」ことです。

CHIの論文を見て、Accuracy Precision Recall lossなどの言葉が殆ど出てこないのが逆に新鮮で楽しいです。
精度よりもユーザーの評価の方が本来大事なので、産業応用視点では、生成AIもそれでよいのだと思います。
精度はおいておいて、LLMは何をするものなのか、 を考えたい人にとってはCHIコミュニティは適していると感じます。

3.CHI2024と生成AI

まずお断りするのは、CHIのfullpaperの投稿は、2023年の9月しめきりだ、ということです。GPTもgeminiもclaudeも1世代前しかない頃の話だということです。おそらくCHI2025は、最近のモデルを使って、さらにさらに生成AIを使った研究が増えることだと思います。

ざっとpaperを検索すると、

  • 2024年 「LLM」で166件「generative」で108件

  • 2023年 「LLM」で24件「generative」で32件

上記の通り、1年でLLM関連の発表が急増しています。猫も杓子もLLMという感じで、圧倒的に多かったです。9月締め切りであったことも加味すると、来年はさらに激増していくことが明らかであると思います。

ざっと見た限り
生成AIによるプロダクトデザイン/生成AIの教育応用/生成AIのヘルスケア応用
などの応用領域がありながら、
生成AIアプリにおけるファクトチェックの表現方法/生成AIによるpromptエンジニアリング支援方法
などの「生成AIを活用する上で共通的に課題になること」の研究があります。
良い意味での節操なさというか、「使えるものは使って研究にしてしまう」文化が良い方向に作用していると感じます。

4.なぜKnowledge navigatorはないのか?


「Apple's Knowledge Navigator: Why Doesn't that Conversational Agent Exist Yet?」
という発表がありました。
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3613904.3642739
Appleが1987年に作成したKnowledge navigatorというビデオhttps://www.youtube.com/watch?v=umJsITGzXd0
は、CHATGPTが目指している世界観そのものだし、いますでにできていて良さそうなものです。
ですが、なぜないのか?
そこに、生成AIの本質的課題があるのかもしれない、そう考えてこの論文を読んでみたらどうでしょうか。
私は論文の切り口に全面的に賛成するわけではありませんが、生成AIと真なる秘書的な存在の差における
記憶の長さと網羅性・それに基づくパーソナライズは生成AIの課題であると考えています。

knowledge navigatorに近づくことに貢献できるのか、を考えることで、
AIの研究の見方も一つ別の軸ができると思います。

5.来年は横浜だよ!


CHIは、AI研究者やAIの産業応用を検討する人にとって大変面白い学会です。
そして来年は日本で初めて開催されます
ぜひ皆さん投稿・参加しましょう。

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