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[ 日本書紀 ] スサノオにみる精神的な病を体験したことによる人間の深化(postpsychotic growth)

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概要 スサノオは日本人に愛されている神です。しかしその生き方は破天荒で,ある時期はひきこもっていたり,家庭内暴力をしたりと無茶苦茶です。しかし,その後はひとの役にたつ生き方をしたりします。これは postpsychotic growth,つまり精神的な病を体験したことによる人間の深化があったとみることもできます。スサノオが愛される理由は,スサノオの生き方が,様々な苦難や逸脱があったとしても,いずれそれを糧にして人の役にたつ生き方ができる,再生できるという,一つのケースであるからでしょう。

ひきこもりの時期

スサノオはとても魅力的な神です。とても親近感があります。

スサノオは死んだお母さんに会いたくて,めそめそ,めそめそしています。お父さんからそろそろ仕事をしなさいといわれると,もうこんなところにはいられないと逃げ出します。死んだお母さんに会いに行きますが,途中でお姉さんに挨拶をしておこうと思い,お姉さんに会いに行きます。

神様の話とは思えない,とても親近感のもてるはなしですね。さて,話を続けましょう。

家庭内暴力の時期

お姉さんはスサノオが自分のもちものを奪いにきたと思い,けんかになります。しかし,ことのしだいを占いで見てみたところ,スサノオに軍配があがります。これに気をよくしたのか,スサノオはお姉さんの作った田畑のあぜをこわしてみたり(あぜを壊すことは農家のひとにとってはたいへんな出来事なのです),火を放ったりします。放火ですね。

怒ったお姉さんは,スサノオの手や足の爪を抜いて,お姉さんの家から追い出してしまいます。

放浪の時期

爪をはぐなんて,まるで,昭和の不良の落とし前の付け方のようですね。お姉さんは不良だったのでしょうか。

お姉さんの家を追い出されたスサノオはその後朝鮮半島に渡ります。まるで,日本にいづらくなった富裕層の子どもが海外に語学留学にいくかのようです。

再生の時期

その後,日本に帰ってきて,今の島根県にやってきて,氾濫を繰り返していた河川の治水工事を行なって,住民たちに感謝されます。朝鮮半島に渡ったのは語学留学をしていたのではなくて,最新の土木工事を勉強しに行っていたのかもしれませんね。

めそめそして仕事もしない,ひきこもり生活をしていたかと思えば,兄弟の家にいって乱暴を繰り返す,とんでもないやっかいものであったスサノオでしたが,朝鮮で一人で暮らして,なにか思うところがあったのか,人の役にたつ神様として日本に帰ってきました。若い時はむちゃくちゃでもう穀潰し,厄介者,変人,奇人としか言いようのなかったひとが,後年,がらりと人間がかわることがあります。

Postpsychotic growth

スサノオの生き様をみていると,ある言葉を思い出します。postpsychotic growth,略して ppg。精神的な病を体験したことによる認識の深化や人間的な成長のことをいいます(高橋,2019)。

高橋 (2019)によると,例えば,ソクラテスがそのひとりです。ソクラテスは晩年にはプラトンに影響を与えるほど,人格的に成熟したひとでした。しかし,その若いころは,その変人ぶりが故郷では笑いものになっていたと言います。しかし,故郷を離れ,いくたの精神的な危機を経験し乗り越えた結果,晩年には人の役にたち,自分も自分の人生を受け入れられるような安定したこころをえることができたといいます。

スサノオ,ソクラテスに似てますね。スサノオも家族のうちでは厄介者でしたが,故郷を離れて勉強して人の役にたつ人間(神さま)になっています。こういう例は他にもたくさんあるようで,高橋 (2019)によると夏目漱石もそうだといいます。たしかに,夏目漱石は東京を離れ四国や九州に行ってますしね。若い頃はつきまといの妄想に苦しんだといいます。

まとめ

私たちも今苦しいときをすごしていても,その苦しいときが,もしかしたら,人間の成長につながるやもしれません。自分にも,自分の子どもにも,知人の子どもにも変われる可能性はある。諦める必要はないのではないかと,スサノオのむちゃくちゃぶりをみていると思います。スサノオが日本人の多くの人に愛される理由は,スサノオの生き方が,様々な苦難や逸脱があったとしても,いずれそれを糧にして人の役にたつ生き方ができる,再生できるという,一つのケースであるからでしょう。

子どもは生まれた家を離れて,家族とも離れて,ひとりで生きていくなかで自分自身をみつけていくのでしょう。自分自身を信じ,子どもを信じ,生きていきたいと思います。人は変われる。ただし,相応の苦難が必要なようです。もしかしたら,この苦しみや,あの苦しみも何か別の自分になるためのきっかけになるかもしれない。まるで意味がないことではないかもしれない。

スサノオはいまもいろんな家庭に生きている。

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