WEEKLY人工無脳【第16号】(2018.8.13~8.19)
※しれっと、はてなからnoteに乗り換えてみました。これまで書いたWEEKLY人工無脳の記事はこちら
① 「生産性の低さ」の裏打ちになっている原因はこれではないだろうか
Yahoo!JAPANのチーフストラテジーオフィサー(CSO)安宅さんの資料。安宅さんといえば「イシューからはじめよ」が有名でしょうか。データサイエンティスト協会の理事もされており、データサイエンティストのスキル定義策定などデータサイエンス業界への貢献もすごく大きなお方。
資料を雑にまとめると、結論的には以下
1. 高齢者へ国家予算が多く割かれており若者層(未来・成長)にお金が配分されていない
2. 現状の予算運営では地方までお金が回らない(地方都市の消滅)
というような、色んな人がいろんなところで言っている話ではあるが、実際にデータを示しながらわかりやすく説明されているありがたい資料。日本の課題を具体的な数値をベースにした規模感を把握するのに一読の価値あり。
個人的に刺さった数字は、
- 国の予算はシニアと過去に大半を投資
- 世界的にみても高等教育に予算が無い。大学教員の給料も数十年据え置き
- 主要国で唯一Ph.D.取得にお金がかかる
- 日本は博士号取得者が減少する世界的に異例な状態
科学技術発展に予算を使わない国家に将来はない。日本は間違いなく貧困国になっているという事実を早く受け入れて各個人レベルからでもアクションを起こさないといけない。
”IT”は少人数の天才だけでゲームをひっくり返せる分野。そして人も金も少なくなった日本が唯一逆転できる分野はもはやここしか無い。
② デジタルリテラシーは教育するものではなく、もはや生活習慣レベルで身につけているもの
スマートフォンやソーシャルメディア、ストリーミングサービスが生まれた頃から身近にあった1997年以降に生まれた世代を「ジェネレーションZ」と呼ぶらしい。そのZな世代の最年長組が大学入学の世代となり、彼らのデジタルツールリテラリーに合わせて大学の教育ツールなどがupgradeされてきているという話。※これはデジタル後進国日本の話ではなくアメリカの話です
- 出欠確認→ツイッター
- 授業の課題発表→slack
- オフィスアワー(教授に質問できる時間)は動画会議アプリ「Zoom」でニーズの多い夜10時から行う。
という具合らしい。
確かに授業ごとにslackチャンネルとかあるとめちゃ便利そう。大学が独自に情報共有アプリを作ったりする必要は全く無い。
慶応SFCとかはだいぶんデジタルツール先進な大学だったと思うが、今はもっと便利に進化しているのだろうか。他の大学も昔と一緒ではないことを祈るばかり。
上記の「日本の高等教育現場のコストが異常に高い」ことも、こういったツールの不活用に大きな原因の一端があるのではと思ってます。
情弱への教育よりも、下の代からの圧倒的な効率化と最適化の暴力にさらされたほうが社会(高齢者)は変わりそうな気がしている。若い方々はガンガン便利なツールの暴力を年長者に奮って欲しい。デジタル決済とかも、飲み会で若い人たちが全員LinePayとかで割り勘してるところで、「え、先輩、現金しか持ってないんですか…(面倒くさい顔)」とかしてくれることがデジタル化への最短ルートだとマジで思ってる派です。
③DeepMindの眼病診断AIシステムは医師に寄り添う最高のパートナー
DeepMindが発表した眼病診断に関する医療AIシステムの公式アナウンス。50種類以上の眼病を94.5%の精度で見つける。簡単な日本語版はこちら
これまでにも公開されていたように、この医療AIシステムは「ブラックボックス」にならないよう配慮がきっちりと行われている。医療に置いては”すごいAIがそう言ったから”ではダメで、なぜその診断結果なのかを「説明できること」がめちゃくちゃ大切。
内部は2つの深層学習モデルが走っているらしく、一つはセマンティクスセグメンテーションによる目の画像の領域抽出(眼組織および出血、病変、不規則な体液または眼疾患の他の症状などのそれが見える疾患の特徴などの可視化)で、もう一つはそれらの情報を元にした診断結果(分類結果)を提示するらしい。診断結果には確率値もついており、臨床家が分析に対するシステムの信頼性を評価できるようにしている。
将来的には、医師が緊急治療が必要な患者の優先順位をすばやく決定するトリアージも可能になることを目指しているらしい。人間のオペレーションに寄り添っている感じがマジで素敵。
この検査装置が動いている様子はこちらでも見れる
④中国の交通AIは「渋滞」を過去の遺物に変えつつある
DeepMindの医療AIすげー!という感じだが、中国のシステムも全然負けてない。
2017年にアリクラウド(アリババ傘下のクラウド部門)が開発した「ET都市ブレイン」という交通AIシステムが、動的に交通信号を制御するようにしたところ社会問題となっていた交通渋滞が嘘のように消えたという話。社会インフラにガッツリ機械学習が絡んでてビビる。
内容をざっくりと箇条書すると、
- AIシステムの試験運転を最も渋滞のヒドいところで実施 <- 効果が見えやすいため
- AIシステムは画像解析で交通量を把握し、交通信号の点滅を制御。単に通行量の多い方向の信号を青にするのではなく、地域全体の車の平均速度を高め、平均通過時間を短くなるように信号を制御
- 効果てきめん。高架道路渋滞15.3%減、通過平均時間が4.6分短縮。特に渋滞がひどかった地域でも渋滞が8.5%減り、通過時間は約1分短縮。
- 別の場所でも実施。導入された地域は約66平方kmで、交通信号が208カ所、交通監視カメラが1447個あり、毎日58テラバイトの画像が保存される
- 成功。渋滞改善だけではなく、車の走行速度も20%up
- 画像解析から事故発生を自動検知。自動通報。緊急車両通過信号をオールグリーンにする(くそかっけえ!!)
- 緊急車両の平均速度は50%上昇し、到着までの時間は15分以上短縮し、以前の半分以下の時間で到着
- その他、監視カメラ映像16時間分を1分間で解析し交通違反も自動検知
- 目覚ましい成果を上げるET都市ブレインは今後、交通だけでなく治安、医療、旅行、環境などの分野でも横展する
改善された効果が具体的な数値として出されていて一行ごとに驚きがある。
2017年7月から実証実験が始まりいきなり効果をあげたということで、まだ1年位の話。ちょっとぐぐってみると、実は日本でも東日本高速道路(NEXCO 東日本)とNTTドコモが組んで「AI渋滞予測」として同じく実証実験をやっていたそうです。(東京湾アクアライン上り線で、14時~24時の渋滞を毎日予測することを12月2日~2018年3月31日の間実施していたそうな)
しかしこちらは信号機を動的に変えたりせず交通量の予測だけっぽい。中国ほどアグレッシブではない。
⑤25歳になったRの歴史、コミュニティ、文化、将来
統計言語Rが生まれて25年になるらしい。沢山の人が、「え、そうなん?知らんかったおめでとう!」という温かい雰囲気のライムライン。
最近の機械学習ブームのおかげで、初心者が統計や機械学習の勉強を始めるときは「Python一択!!!!」という雰囲気がありますが、やっぱりRが世の中に与えたインパクトはめちゃくちゃ大きかった。
このQiita記事はRの25周年を記念した「R Generation: 25 Years of R」という英語記事の和訳。Rの歴史、コミュニティ、文化、将来に関する話です。
この記事を読んでいると、あるテクノロジーを普及させるためには、そのテクノロジー自体が良いものである事は当然としてそれ以外にも、
- オープンであること・簡単に共有できること
- コミュニティーに天才(憧れの存在的な人)がいること
- 計画的に多様性を増やす努力をするコミュニティーがあること
が大切なんだなと思わされます。
Rの名付け理由はアルファベット順でS(当時メジャーだった統計言語)の一文字前の文字をとっただけというの初めて(?)知った…
⑥明日から働かなくていいよ、でもお金はあげるよ、と言われたら何をして生きていく?
(朝日新聞デジタルへの無料ログインが必要な記事です)
汎用的な人工知能が生まれ、人間の仕事の大部分を代替する時代はきっとくる。その時に、国としての生産や経済活動をAIが行い、人間はベーシックインカム(BI)を得て、「働かざる者も食っていける」社会ができたときの話。
おそらくBIで全国民が生活する国家も50年ほどの時間をかけてどこかでおそらく実現する。
ツイッターの人たちは「5000兆円欲しい!働きたくないでござる」と言っているが、本当に最低限の生活費が勝手に振り込まれて働く必要がなくなった時に、賃金労働がなくても社会との接点が作れる人はどれくらいいるだろうかという心配が日本にはある。
勤労の義務があるくらい労働に価値を重くおく日本人が仕事をする必然性がなくなった時、労働は実は社会との繋がりを強制的に作ってくれるものだったと気づき、労働関係の後押しがなくても引き続きプライベートでも友好な関係を継続できる人間関係を持っているかどうか改めて考えてみるのも良いかもしれない。もしくは、「100万円と3ヶ月の休みをあげるから好きなことしていいよ」と言われた時にパッと「やりたいこと」を思いつけるだろうか。AI時代に求められるのは「ロボットと戦う能力」ではなく、本当の意味の人間性や生き方、人生の意味なのかもしれない。
ところで、労働から開放された人類は、古代ギリシャでは奴隷を労働させて富裕層は哲学をしていたみたいに、みんなずっと大学にいればいい、という指摘は意外にありだなーと思ったりする。大学は金銭関係無しに人間関係を作れる最後の場所だったのだと気付かされた。AI時代の人類はもっと積極的にモラトリアムを行使すべきなのかもしれない。老後の趣味、みたいなものを今の勤労層はもっと早く真面目に考えるべきなのかもしれない。
与太話
運営をやっております、今月末開催のイベントPlatinum Data Meetup vol.1ですが、おかげさまで初回にもかかわらず50名枠に115名もの方が申し込んでいただきました!
受託分析の会社ということもあり、なかなか外のイベントで「日頃こんな分析やってるぜ!」ということを話しにくいのですが、ホームでの開催ということでややアグレッシブなお話が聞けるかもです!弊社分析官との交流かもきっと楽しいと思います!
個人的に楽しみなTalkは、他のイベントでは滅多に聞けないであろう営業部の方のLT「AIで何かをイイ感じにしてほしい人への対処法」です!本職の人からの煽り気味のタイトルが好きw
vol.1を逃した方はvol.2も9月末に開催予定ですのでゼヒconnpassページをフォローしてください〜〜〜
https://brainpad-meetup.connpass.com/
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■「WEEKLY人工無脳」は「独断ニュース(http://dokudan-weekly.hatenablog.jp/)」に刺激を受けて書き始めた、独断ニュースのデータサイエンス・人工知能業界版です。飽きるまで適当に続けます。
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