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難航する入寮手続き

とうとう、年が明けてしまった。

錦林小学校から「本当に左京区に引っ越して本校に入学するつもりなのか」と電話が入った。転居を証明するものを提出するように言われる。
すでに左京区に引っ越していれば住民登録の写しを、賃貸物件を契約したのなら、その契約書の写しを提出するよう求められた。

加配(※)を得るためには、学校側が早めに申請しておく必要がある。一日も早く書類を提出して欲しいと言われた。
吉田寮に対して再度
「錦林小学校は基本的には息子の受け入れを了承しているものの、本当に入学する意思や準備があることを証明するものがないから、障碍児を受け入れる際の公的な準備ができずに困っている」
と伝えたが、理解してもらえない。 

埒が明かないので、彼らの話し合いの場に出て窮状を説明したいと訴えたが「その必要性や緊急性は認められない」と、相変わらずの答え。
私たちは「大学入試の時期まで待って正規の入寮手続きをとるから、何とかしてほしい」と頼んだ。

ようやく、入寮面接を(例外的に)早い時期にしてくれることになった。
面接は、夫婦と言えども個別に受ける。大学生になりたての彼らの口調は、まるで取り調べのよう。「自治とは何か」などの説明が延々と続く。
私たちは一刻も早く入寮手続きを終えたい一心で、じっと耐えたのだった。

結果が出たのは、ずっと後だった。小学校に提出できる書類もない。
学校には「吉田寮の面接を受けたので、春には引っ越せる」と報告した。
書類なしの報告だったので、学校は加配の申請も根回しも一切できないまま入学式を迎えることになってしまった。
就学にあたり、息子には保育園の時と同様「保護者同伴」という条件が付いた。

「同伴」……。
力が抜けてしまった。
これからの生活を決断したものの、先行きの暗いスタートとなる。

※加配
生まれつきの発達障害などによって、他の子供たちと同じように保育園や学校での生活を送ることが難しい子供に配慮を加えて、子供の生活を支えること。
当時は自閉症のほか、現在で言う発達障害の多くが認められておらず、息子の場合は保育園時代は「1/2加配」だけが(無理矢理)付けられたため、「保護者同伴」の条件で預かるという状態だった。

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