どれも昨年、一昨年の記事ですが、あらためて読むとこの2年間の気持ち悪さが「政府が新しい生活を提案し、広告代理店が生活を設計し、国民が渋々というよりかは少し楽しみながら新たな生活に取り込まれていったこと」にあると感じます。
ここでは引用しませんでしたが、大塚氏によると戦時中もホットケーキを焼いていたそうです。正確にはカステラだったそうですが、「節約」し、「工夫」してカステラを焼くことが新体制への社会参加となる。これはお手軽な自発的動員であると。
また大塚氏は「鬼畜米英」といった勇ましさのある男文字ではなく、戦時用語にみえないような暮しに関する日常的な言葉が実は戦時用語であり危険なプロパガンダであるとして、それらを女文字と名付けたといいます。
「おうちじかんを楽しもう」
この2年間も私たちはお上に「非常事態だから」と言われて「どの程度の非常事態なのか」も考えることなく、パンケーキ作り、家庭菜園、ZOOM飲み会、オンラインライブ、ウーバーイーツ、どうぶつの森などを楽しみ、外に出られないなら出られないなりに「工夫する」こそが大切だということに多くの人がなんの疑いも持ちませんでした。
しんどい自粛生活を少しでも楽しいものにしたいという気持ちは大事なのですが、「ここまで行動制限されるのはおかしいのではないか」とか、「医療体制が整うまでの時間稼ぎという話はどこへいったんだ」といったことに対する怒りはあっという間に消え失せて、多かれ少なかれステイホームを楽しんでいたような気がするのが不気味でした。
さらに危ういと思ったのは「同じように楽しまない人への攻撃」です。自粛が長期化し、陽性者数の増えた2021年8月には、比較的誠実(だと私が勝手に思っていた)な人たちの口からも「ショッピングモールに行ったら物凄い人がいて怖かった」、「医療従事者のこと考えてないのかな」といった言葉が飛び出したのです。「あんたも出かけとるがな」の一言に尽きるのですが、新しい生活に楽しむことに疲れた人たちが「私はこんなに我慢してるのに!」と言い出した。こうした攻撃が「ウイルスに打ち勝つ」といった勇ましい言葉よりも「おうちじかん」という可愛い言葉から生まれていることと、それに無自覚であることが何よりも危ういと感じたのでした。
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