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第1部

22
第1回~22回
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#モテ

【1】男女の非対称

とにかく結婚しない日本人 2021年版「人口統計資料集」によると、日本人の生涯未婚率〈1〉は男性が23.37%、女性が14.06%だという〈2〉。これは5年に1回の国勢調査で出される数字で、現在(2021年5月末時点)確認できるのは2015年調査時のデータである。  過去の推移を見ると1990年以降急激に上昇中である。これから発表される2020年調査時の数字も間違いなく前回より上昇しているだろう。日本には事実婚という習慣がほとんど定着していないので、これはそのまま単身者が激増

【13】進化心理学で考える性差(5)女が惹かれる男とは ①

いいか悪いかは別として 前回と前々回の記事では男性の女性に対する選好について考えた。「男性は若くて容姿の良い女性に惹かれる」という、極めて当たり前の事実について、それは文化や慣習によるものというより(それもある程度はあるが)生得的な、つまり生まれつきの心理である可能性が高いことを述べた。  この見方は女性にとってあまり気分の良いものではないと思う。年齢は自分の意志でどうにかできるものではないし、生まれ持った容姿も基本的には変えられない(現代の美容整形技術をもってしても変えら

【14】進化心理学で考える性差(6)女が惹かれる男とは ②

石器時代に資産家はいなかった〔前回の続き〕  前回の最後の節で、女性が男性に経済力を求める心理には進化的な基盤がある、というデヴィッド・バスの主張を紹介した。  人間社会では男性間の資源格差が激しく、より多くの資源を持つ男性を配偶者にした女性の方が、そうでない女性より子孫を繁栄させることができた。それが何世代にもわたって繰り返された結果、女性は、より豊富な資源を持ち、かつそれを自分と子供たちに気前よく提供してくれる男性を好むよう進化した、というのがバスの考えであった。  

【15】進化心理学で考える性差(7)女が惹かれる男とは ③

男はたいして役に立っていない?〔前回の続き〕   第8回でも述べたとおり、現代の狩猟採集社会を対象にした研究によると摂取カロリーに占める動物の肉の割合は30%程度でしかない。イヌイットをはじめとした北極圏に住む狩猟採集民は、オットセイやセイウチなどの肉を中心とした食生活を送っているが、それ以外の地域では主に女性たちが採集する植物性の食料が摂取カロリーの大半を占めている〈1〉〈2〉。  パラグアイのアチェ族では、男性はイノシシやシカといった大型哺乳類の狩りと森でのハチミツ集め

【16】進化心理学で考える性差(8)女が惹かれる男とは ④

女性は地位の高い男が好き?  あまりに長くなったこのシリーズも今回でいったん終了である。今回は女性が地位の高い男性を好む理由について考えてみたい。世の中では一般に、経営者や管理職、大企業の社員、医者や弁護士など社会的地位の高い職業に就いている男性はモテるとされている。実際、そうした肩書に魅力を感じる女性は多い(これもまた全ての女性があてはまるわけではないが)。  これはなぜだろうか。まず思いつくのが「地位の高い職業はたいてい収入も高いから」という説明である。しかし、例えば学校

【22】改めて、男女の非対称〈第1部 終〉

こんなに手間がかかるとは 昨年6月から約8カ月にわたって続けてきたこの連載、ここで一区切りである。私は第1回の終盤でこう書いた。  なぜ「順序だてて体系的に書かれたもの」が見当たらないのか、その理由の一つがよくわかった。本気でやろうとすると、すごく大変なのだ。  いやー、大変だった。「進化心理学で何がどこまで言えるかを私なりに整理する」というのを、前回までで一通りやり終えたつもりなのだが、可能な限り資料を集め、読み込み、自分なりの推論や解釈も加えつつなるべく科学的に正確な