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第1部

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第1回~22回
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#進化心理学から考えるホモサピエンス

【2】進化心理学は「科学」なのか (1) 怪しいところもある…

検証可能性についての批判 進化心理学に対しては「反証不可能な疑似科学だ」という批判がある。これはある意味では正当な批判だと思う。  人の身体的特徴、例えば体の大きさや手足の長さ、脳の容量などが過去数百万年間どう進化してきたのかということであれば、骨の化石からある程度推測することができる。ただ、これも簡単なことではない。死んだ生き物の骨が化石になる確率は非常に低く、一説には(一つの骨について)10億分の1の確率だという〈1〉。また、化石になったとしても全身骨格がそのまま残るこ

【3】進化心理学は「科学」なのか (2)問題作『進化心理学から考えるホモサピエンス』

金髪と青い目が理想の女性美?〔前回の続き〕  特に「男はなぜセクシーなブロンド美女が好きで、女はなぜセクシーなブロンド美女になりたがるのか」というQで始まる3章の一部の記述には、日本人なら誰もが違和感を覚えるだろう。  著者は理想の女性美の構成要素として、若さ・細いウェスト・豊満な胸・長い髪・金髪・青い目をあげており、それをまるで人類共通の理想像であるかのように書いているのだが、これは完全に西洋基準、というかアメリカ(の白人)基準の発想である。  4つ目までは世界共通で好ま

【14】進化心理学で考える性差(6)女が惹かれる男とは ②

石器時代に資産家はいなかった〔前回の続き〕  前回の最後の節で、女性が男性に経済力を求める心理には進化的な基盤がある、というデヴィッド・バスの主張を紹介した。  人間社会では男性間の資源格差が激しく、より多くの資源を持つ男性を配偶者にした女性の方が、そうでない女性より子孫を繁栄させることができた。それが何世代にもわたって繰り返された結果、女性は、より豊富な資源を持ち、かつそれを自分と子供たちに気前よく提供してくれる男性を好むよう進化した、というのがバスの考えであった。