don't look back in anger

1年以上前に書いた話をいい加減供養のために下書きから出しておく。ソフィカルの限局性疼痛とララランドに触発されて書いた、あくまで私目線の一連の失恋話。どこにでもありふれていて零れてしまったこと、人に話すには旬を過ぎてしまったもの。だからもう真実ではなくなっているだろう。彼には彼のお話が、彼の妻には彼女のお話があるだろう。でも、これは私の話。

これはしょうもない失恋話である。

彼と出会ったのは春で、彼は職場の新人だった。私がメンター。その後恋愛関係になった。
初めて彼からの好意を感じた時、自分の自惚れかもしれないと言い聞かせた。確信に変わったのは誘われて2人で仕事帰りに飲みに行くようになってからで、私は浮かれていた。それでも初めて彼の家行った時は帰った。2回目はそのまま泊まった。
しかし、ここで落とし穴。この後しばらくお試し期間として付き合うことになった。私は現実に彼が気付いて離れていくのが怖くて、彼は関係をはっきりさせることを怖れた。前向きなお試しでなかったから、終末を迎えるしかなかった。

それからの数ヶ月は本当に楽しかった。職場に私の家の方が近いのもあり、半同棲で過ごした。一緒に生活していてもストレスはなくて、でもそれは私の家だったからである事に後に気付く。
翌春、彼は異動になった。予め決まっていた事で、私達のお試し関係が始まった時には分かっていたことだ。
そうは言っても会いに行けない距離ではなく、私は空いた週末は必ず会いに行っていた。彼の家に。そして彼はそれを負担に思い始めた。異動の引越しは私も全面的に手伝って、買い物も家具の組み立ても荷解きも全部一緒にやった。だから何となく2人の家のつもりだったけど、私は失念していた。彼の家だったのだ。
異動直後の不安な時期を乗り越え多忙な日々に飲まれてしまえば、彼には毎週のように私と会う必要性がなくなっていた。私は気付かないふりをした。義務みたいに会いに行く週末に正直私もマンネリを感じていたのに。
私は、彼の自由な週末のノイズになっていく。

異動の前にお試し期間の終わりについて話し合った。私は正式に付き合いたい、彼は気持ちが付き合う所まで行かない、と。
私は泣いた。彼は私を傷付けた事に傷付き、そして結局、遠距離恋愛がうまくいくか、お試し期間を延長する、という方針になった。それを良しとした私を殴ってやりたい。泣き落としになったことで私はリードを取れなくなり、お試しという関係であることが彼の罪悪感を和らげた。彼にとって私はいつ別れても構わない存在に過ぎなかった。

ある日電話で、プライムビデオで週末は楽しく過ごせるから来なくていい、前の関係に戻りたいと言われた。プライムビデオは私も大好きだが、そもそもプライムビデオの楽しみ方を教えたのは私だ。
いやいや、ちょっと待ってと2人で話し合いをしたけれど無駄だった。もう好きじゃなくなったの一点張りであった。
結局さよならをした。

他の女性に乗り換えるのに、中途半端に私が通ってくるのは彼が彼自身を許せないという意味だったのだと、程なく気付く。予感はあったのに一人で違和感を抱えるだけで確かめなかった私はアホだ。物分かり良く別れるのではなくて、めちゃくちゃごねて、責めて、ごねまくれば、彼の私に対する罪悪感を刺激できたろうに。

彼が居心地よくあるように整えたあの部屋で彼は別の女性と過ごしていた。一緒に整えたあの家で、と思うと怒りと悲しみでどうにかなりそうだった。

別れ話の日、これからも先輩後輩として仲良くしたいと言われて、そうせねばと思った。
気の置けない友人達に泣きながら笑いながら事の顛末を話しまくり気を紛らわせた。家も職場も思い出だらけで、涙が湧くのをどうにもできない日が何度もあった。
職場には内緒にしていたから、最も多くの時間を過ごす場所で、ひたすら孤独だった。彼自身のことを知っている人に感情のままに話を出来れば、これほど引きずらなかったのかもしれない。私の友人達と彼は接点がなかったから、どんなに話をしても彼の事を生身の人間として評せるのは私だけだった。私は彼を一方的に責めることが出来ず、知らない人を悪く言うには私の友人達は優し過ぎた。(後に、私がかつてないほど憔悴していていたからそもそも話題にしていいかどうかすらを友人達が悩んでくれていたことを知ったけれど)

個別の繋がりが残ってしまい、私は未練がましく復縁を期待した。しょうもないラインを送っては彼からは素っ気ない事務的な返信が届いた。
結局不安定な関係が始めからずっと私を蝕んでいたことをようやく認めた。そして、この後に及んでわざわざけじめをつけようとした私は大馬鹿だ。付き合っていると私が思っていた期間中、どうしても話せなかった事があり、それをずっと後悔していたのでぶちまけてスッキリしたかった。あくまで私の事情であり、自己満足に他ならない自覚はあった。
彼女がいるから他の女性とは電話しない、が彼の答え。それで終わりだと思ったので、彼女の件を言祝ぎ、自分のけじめのために連絡を取ろうとした事を謝罪した。誠意なのか少し良心が痛んだのが、彼はいくつか電話可能な日時を指定してきたが、都合がつかないことを伝えて調整できるかお願いしたらブロックされた。彼の怒りは当然で、ずっと前からブロックしたかったけど私が先輩だからブロック出来ずにいただけだった。
どうでもよくなったので仕事用アドレスで話したかった内容と今までの謝罪と感謝について一方的で自己満足の長文メールを送り、微妙な関係を木っ端微塵に破壊したらスッキリした。読まずに削除したかもしれないし、そもそも迷惑メールとして目にも触れなかったかも。彼からの信用はなくなった。重い女で構わない。二度と連絡はしない。あと二度と仕事メールは私用しない。
ちなみに最後のやり取りが未練だと思われたのは心外だったが、その時まで未練が全く残っていなかったかと聞かれれば嘘は付けない。


反省点
①私は典型的な重い女であった。重くなる理由を素直に話せない、という意味で救いようのない重さである。人と繋がりを持つときは素直でならなければならない。
②クロージング能力が壊滅的に低く、問題を先送りにした。プライドが高くて、感情が高ぶると泣いてしまうのでそれが嫌で取り繕うのだが、泣いてもいいから素直になって問題解決に向けて正直に積極的にリード取らないといけなかった。
③相手に遠慮して好きな物すら途中から伝えられなくなった。一緒にいる時に遠慮する人間といて楽しい人は普通いない。自分の好きなこと、楽しい事を伝え、それに相手が共感できるかは相手次第であるという気楽な視点が必要だった。

共通するのは自分への自信のなさである。
途中から私は必死になっていて、客観的に見て彼に依存していた。振られたのは当然の結果だった。
こんな失恋、普通は思春期に経験しているのだろう、恥ずかしい。でも、幼稚ながらも私が彼を一生懸命好きだった事だけ覚えておく。
彼には彼の事情があっただろうけれど、私には私の問題があった。彼を信頼できなかったのは私だ。彼が正面から向かい合おうとした時も確かにあったけれど、そのタイミングは過ぎてしまった。
夢の様な恋だった。私は現実を見ていなかった。独りよがりな思い出は箱の中。たまに飛び出てくるけれど苦さを思い出してまた箱へ。

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