だから測っても「推し」



 リリイベが発表されたとき、どういうモチベーションで行くのが正しいのかな~と考えたりしました。それはネガティブな意味じゃなく純粋に手探りというところで、44RAIDERS以来のCD購入イベントだったので前回の経験からもう3年ほど経っていましたし、何より私は日髙竜太くんを見たことがあったのですが加納嘉将くんとの接触の経験がほとんどない(44RAIDERSはお会いすることがなかなかできず…)。

 もともとアイドルとの接触文化に身を置いていたことがあったため接触そのものの経験はあったんですが、今の推しとちゃんと対話してきた機会が本当になかったため挑みかたがまるでわからず、とにかく先人の知恵と経験に頼ろうとTwitterをぼやぼや眺めておりました。

 そんなメンタリティで初日の大阪のレポを見ていたのですが、カンペ、めっちゃありだ! という勇気をもらえたような気持ちになりました。
 公式でNGとされていたのは「立ち止まって」の行為がNGで、カンペを見せること自体はOKという雰囲気を感じられたのが本当に良かったです。なんなら埼玉のレイクタウンで運営がスケッチブックとペンを販売していたのであちらも好意的だったのが非常に安心でした。
 私は推しに対する緊張によって選択性の緘黙になってしまうタイプで、だからこそ3秒程度のカンペでメッセージを伝えられる今回の仕様が本当にありがたくこれなら行けるかも! と不安が期待に変わっていったのを今でも覚えています。
(竜太くんプロデュースの帽子のお渡し会も緊張が過ぎて言葉少なずになってしまい、そんなオタクに対して竜太くんがたくさん話しかけてくれて事なきを得ました。本当にできる人すぎないか…。)

 じゃあ、行って見せるなら何を伝えよう? とオタクはまた悩みが増えるわけです。

 初日の大阪ではみなさん質問したりファンサをおねだりしたりでなるほど…! と思ったんですが、それをふまえ名古屋で人が増えればいわゆる「剥がし」(※接触でファンが滞留しないようスタッフの手で押し出す方式)も強くなるだろうし、ひたすら流れてくる文字を推しの脳がどの速度感で処理するのかも知らない。ただ、これまでのインタビューにおいて5秒で答える質問にうまく対応していたのを見ていたので、とりあえず言葉そのものは伝えられるんだと思う。
 かといってなんでも伝えていいわけじゃないし、ご本人にとって不愉快になる可能性のあるメッセージは見せちゃいけない。もともと出す気は一切なかったですが、セクシャルや身体に関わるワードがちょっとでもチラついたらそれはよくないし、自分にとって肯定的な言葉でも相手にとってネガティブな印象になる危惧は大いにある。
 そんなことを悶々と考えながら、とりあえず「褒めよう」がスタートラインでした。推しにとってはよくわからないオタクが目の前に来たときの初手としては、まず好きなところを伝えるのが正解なんじゃないかと思ったからです。人間、とりあえず褒められたら嬉しいじゃん…。
 行くからにはその日一日は不快にさせたくないし自身のインプレッションを良いほうに傾けていこうという気持ちはあったため、圧倒的に無難な「かっこいい」が最初のメッセージだった気がします。ぶっちゃけ私ももう覚えてない。何より「かっこいい」は7人全員に通用する最強のメッセージだし、間違いのない意思疎通が確約された魔法の言葉だなと自信があったのもよかったです。

 そのように角が立たない状態で見せるといい印象になるのか、みなさんありがとうと仰ってくださって、アッこの距離感…!(気づき…!)と一回目でようやっとリリイベに参加した実感が出たような気がします。オタクのお気持ちがリアルタイムにお届けできるこの空気を忘れていてようやっと思い出せて、これがパンデミックを乗り越えた世なんだ…と無駄に感動したりもしました。
 オタクは一度理解すると謎に度胸がつくため、そこからはとにかく褒めよう! あといろいろポーズももらおう!(急に欲張り)で気負いなくリリイベで重ねることができたような気がします。とはいえ、推しているグループのアーティストが目の前にいる緊張は凄まじいもので、毎会場の一発目までぐったりしていたんですが…。共通で使えるワードは全員に見せたり推しにしか通用しないよな~というワードは推しにだけ見せたりしていたんですが、みなさんかなり良いほうに受けとめてくださってて、7人とも対応力があってすばらしいなあと感服するばかりでした。

 そうして褒め言葉をたくさん伝えていくなかで、私は推しの好きなところがこんなにたくさんあるんだという良い発見がありました。
 正直に言えば「積む」というところまではできなかったんですが、とはいえそれなりに権利を購入するなかであれも言いたいこれも言いたいがぽこぽこと湧いて出てきて、私、推しがすごく好きなんじゃん! と改めて噛み締めることができました。普段推しから与えられる作品なりSNSなりを受動で満喫していたので、推しを推しと思ってはいたんですが一つずつ言語化するとこんなにちゃんと「推し」と思っていたんだなあと思わされました。
 なるべくポジティブな有象無象的な感じで、日ごろから要所に応援の旨のコメントを残すようにはしていたんですが、それがインターネット上ではなく対面でオタクの気持ちを産地直送! という感じが自分にはとても合っていたようです。何より褒めや好きに対して推しがどういうリアクションを取るのかが目の前で見られるの、本当にすごく幸せ。CDを1枚購入することで、推しをもっと好きになる権利を買っていたんだ…これがこの二か月で得られた代えがたい経験でした。
 歌やダンス、ご本人の特性や推しケミの良さなど、本当に伝えたい限りを一方的に伝え続けていたんですが、これまで一度も事故や齟齬なく受けとめてくれていたのは推したちの技量の賜物だなと思います。「ありがとう」の一言にオタクは本当に助けられましたし、伝えてよかったなと毎回大満足で帰れたのは彼らがちゃんと傾聴してくれるからだからこそです。みんな本当にすごい。
 そしてある種一番のライブ感があったのは、東京のむさし村山の会場で嘉将くんのヘアスタイルが大変貌を遂げていたときで、あのときリアルタイムで「最高」の二文字だけ掲げて去ることができたのが”妖怪お気持ち伝えたがり小僧”としてはまさに「最高」の瞬間でした。読みやすいようカンペは事前にデジタルで入力したものを準備していたのですが、こんなに汎用性の高いカンペを作っていた自分を褒めたい。
 目に見た良さを、ご本人を目の前にして言葉として伝える機会って本当にレアなチャンスだと思うんですよ。だから、気合いを入れたビジュアルの名残に対して賛辞を送れたのが本当に嬉しくて、わずかな言葉でも伝えられたことがありがたくてしょうがなかったです。めちゃくちゃ良かったよ…でもびっくりして一緒にいたkikiさんにずっとしがみついて耐えてたよ…。
 ちなみにそんな私の敬愛する奥田力也くん推しの戦友kikiさんが、力也くんの眼鏡をかけたビジュが大好きだったため、褒めるために当日どのビジュで来てもいいように眼鏡を褒める意を込めて印刷して用意してたの最高だなと思いました。オタク、賢い。

 推しに伝えたいことって、本当はものすごくたくさんあるんです。竜太くんに対して思っている「かっこよさ」(強く頼もしく信じて背中を追えるところ)と、嘉将くんに対して思っている「かっこよさ」(優しく穏やかであり人知れず努力を惜しまないところ)は同じワードでも別物で、とはいえあの3秒に籠められる言葉って結局は「かっこいい」の一言でしか表せない。でも、オタクのある種の怨念を籠めた想いの一言を見せて単純に「ありがとう」をもらって、とにかく「推しと対話ができた」ことが私としては自分勝手ながら本当に嬉しかったです。
 それなりにリリイベを満喫し、こちらのエゴでしかないたくさんの言葉をここに書ききれないほどに見せ続けました。なんなら覚えてくださっていると理解したタイミングで推しに突然職業を明かしたりもしました(身分証明を安寧と思っているタイプのオタクの奇行)。
 でも、推したちはずっと優しく読んでくれて、何に対してもいつも丁寧な対応をくださいました。感謝を伝えても伝えきれないほど、オタクを優しく肯定してくださる素敵なアーティストだなと心から思いました。
 お金を払ったことで対話を許されメッセージを伝える機会がもらえたことがすごく嬉しかったですし、この二か月間お仕事と折り合いをつけながら行ける限りの会場に行けたことが大満足です。7人みんな、スケジュールもぎちぎちだったろうに本当にありがとう。
 お仕事が炎上しなければ31日は絶対に行こうと思うし、これからこういうメッセージを伝える機会があれば足繁く通うオタクでいようとも考えているんですが、一旦はこの二か月間で得た喜びやありがたみをしっかりと言葉に残そうと思った次第です。
 とにかく楽しかったし、今回のリリースイベントのレギュレーションが自分に合っていたし、推しをはじめとしたメンバーみなさんが優しく(全員好きすぎて緊張でぶっ倒れそうだった以外は)心穏やかにいられた最高の二か月だったことを形に残しておきたいです。関わったすべての方に「ありがとうございます」と伝えたいですし、瑞々しいファン層の末席を汚す大人としてこれからもよろしくお願いしますと併せて伝えたいです。


山口公演のリハーサルの規則に従い、写真のみ掲載しております。
山口公演のリハーサルの規則に従い、写真のみ掲載しております。



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