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【3/21ミニ自由研究】サツガイ=サンの日と春分の関連

緒言

 「サツガイ」の語呂合わせからなるサツガイ=サンの諸祝日は、見出そうと思ってカレンダーを眺めれば年中の至る所に発見できる。良いサツガイ=サンの日(11月32日および13月2日)と異なるサツガイ=サンの日(3月2日および3月21日)の魅力は、「良い」に囚われないが故に、どう見ても善良とは言いがたいサツガイ=サンのえぐみや渋みも含んだ総合的な滋味に思いを馳せられる点にあるだろう。

 良いサツガイ=サンの日はいずれも冬かつ存在しない日付(12月3日と1月2日に仮託することになる)なのに対し、サツガイ=サンの日はいずれも春の実在する日付であることも無性に味わい深く、晴雨入り乱れて徐々にむせかえるような命が蠢き始めるこの春という季節を、サツガイ=サンと重ねて迎えられることを嬉しく思う。

本文

 緒言に述べたとおり、毎年3月21日と言えばサツガイ=サンの日でおなじみだが、今年は不幸にも国民の祝日ではない。サツガイ=サンの日とバッティングする日本の国民の祝日・春分の日が年により移動するせいだ。

 『国民の祝日に関する法律』を確認すると、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日として記載されている。自分も含めたあらゆる存在を慈しまないことでおなじみサツガイ=サンの日がこんなめでたい日に被るのも面白いが、ここでより重要となるのは日付が明記されていないことだ。

昭和二十三年法律第百七十八号『国民の祝日に関する法律』より

 祝日・春分の日は、前年の2月までは日付が確定していない。前年2月の官報で「来年の春分の日はこの日です」と公告されてはじめて明確な日付が決定する。ただし、春分の日は基本的に太陽の春分点通過イベント・春分に合わせて公告される祝日なので、未確定の状態ながら今後の日程推測は可能である。

 祝日・春分の日は、天文イベント・春分によって決まる。ではこの春分とは何か。ごく簡単に説明すると、地球が図1下部のような位置にくる瞬間のことだ。

図1 春分という瞬間

 よく春分に対して「昼と夜の長さが同じになる日」という説明が使われるしそれはほとんど正解だが、どちらかというとそれは春分の日の説明になってしまい、春分というイベントが特定の瞬間であることが伝わりにくいので図示した。

 なお、春分から次回春分までの周期=地球が太陽の周りをちょうど一周する周期(太陽年)なので、春分周期こそが太陽光角度の基準であり、つまりは季節を定める基準であり、真の一年である。

 しかし、春分周期=太陽年は約365.2422日ある。図1を見ていただければ分かるとおり、日本が昼だろうが夜だろうがそれとは全く無関係に春分の瞬間はやってくる。つまり、地球の自転ベースで管理されている人類の暦(暦年)は、地球の公転ベースで動く真の一年(太陽年)より約0.2422日短い。なにぶん星は自由なので、自転と公転のペースの間には特に法則性とかはない。

 しかし季節というものは太陽年に支配されているので、暦年と太陽年をある程度一致させなければ、暦と季節がどんどんずれていく。それでは暦の意味がない。

 この問題を解消するためにあるのがうるう年だ。人類の暦が取りこぼしている0.2422日の余りは4年分蓄積すると0.9688日分となり、ほぼ1日分。これがうるう年の2月29日として消費されている。このうるう回収作業があるおかげで、春分の日はおおむね3月20日の周辺から動かずに済んでいる。

うるう年の基本原理
(今回は日本の祝日「春分の日」について考えたいため、グリニッジ標準時ではなく日本標準時を記載)

 ただお分かりの通り、0.9688日ぶんの蓄積を1.0000日として消費している以上、うるう回収においては過剰な巻き戻しが発生する。4年につき0.0312日ずつ、うるう巻き戻しすぎ分のずれにより春分は早まっていく。

 サツガイ=サンの日が国民の祝日になる年(以降、サ祝年と呼称)を考える上では、このうるう巻き戻しすぎ現象が非常に厄介となる。ここ100年ほどサ祝年が減る一方だからだ。

 うるう巻き戻しすぎ現象それ自体には、すでに対策が取られている。100年に1回、世紀末年での調整だ。400の倍数年はうるう年にして、それ以外の世紀末年はうるう年にしないことにより、残りの誤差をなるべく片付けているのだ。前回の世紀末うるう年は2000年、次回は2400年。うるうキャンセルの対象は前回1900年、次回2100年となる。

 しかし裏を返すと、徐々に巻き戻っていく春分の日は、少なくとも2100年までは遅らせる側の調整を受けない。3月21日は春分にしては遅い部類の日付なので、世紀末が近づく(春分が徐々に早い日付になりゆく)につれサ祝年は減少していく。事実、2055年までのサ祝年は4年に1回発生する一方、2056年から2100年まではずっとサ祝年がない。

 2100年のうるうキャンセルにより、約0.0312×25=約0.78日(100年間あたり)の巻き戻りすぎを1.000日分として返されるので、2101年からはサ祝年がコンスタントに発生する状況となるが、この頃になると筆者の寿命が怪しい。

 これを踏まえると現実的に自分が祝えるサ祝年は、2027、2031、2035、2039、2043、2047、2051、2055の合計8回しかない。サ祝年がいかに貴重か、お分かりいただけただろうか。

 今年はプレーンなサツガイ=サンの日だったが、それゆえに国民の祝日であるサ祝年の貴重さに想いを馳せ、残ったサ祝年を割り出すのにいい機会となった。限りある祝日資源をなるべく大切に祝ってゆきたいものである。諸賢もぜひ各自のやり方で祝っていただきたい。

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