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身延の名産品「あけぼの大豆」

1.はじめに

 「身延町と言えばあけぼの大豆である。」
 私は自信をもってこのように言い切ることが出来る。フィールドワークで繰り返し身延町を訪れるなかで、あけぼの大豆が身延町にとって欠かせないものであると感じることが出来たからだ。私たち箕浦ゼミでは身延町の名産品であるあけぼの大豆に注目しており、この記事ではあけぼの大豆について記していく。

2.あけぼの大豆とは

 あけぼの大豆は山梨県南部に位置する身延町のブランド大豆である。令和大嘗祭の供納品にも選ばれたあけぼの大豆は、限られた気象条件や土壌が必要とされる生産の難しさや、手作業での生産のため大量生産が出来ないという希少性の高さから「幻の大豆」と呼ばれている。現在、あけぼの大豆は「曙(あけぼの)地区で採取した1年目の種子を利用し、身延町内で栽培したもの」と定義づけされている。
 あけぼの大豆の歴史は明治時代まで遡る。明治時代初期に関西地方から仕入れた大豆を栽培したところ、身延の地域の気候と土壌が影響し、通常の2倍の大きさの大豆が収穫されたことがはじまりと言われている。
 あけぼの大豆の特徴としては「粒が大きいこと」「甘みが強いこと」があげられる。一般の大豆の大きさは0.8㎝なのに対しあけぼの大豆は1.2cmと粒が大きく、重さも2倍ある。また、あけぼの大豆は糖類の含有量が多く、特にショ糖(砂糖の主成分)は一般の大豆より4割多く含んでいる。一般的な大豆は10月末から11月上旬にかけて収穫されるのに比べ、あけぼの大豆の収穫時期は11月下旬から12月上旬と、時間をかけて成長する分甘みが増すという。

3.あけぼの大豆拠点施設

 身延町内には、廃校となった小学校を活用したあけぼの大豆拠点施設がある。ここではあけぼの大豆を使った商品の開発、製造、販売が行われ、6次産業化の拠点となっている。校舎の外には、枝豆のさやを取る機械や、豆を選別する機械が置かれ、校舎内には加工を行うための設備が置かれている。
 この施設では、希少なあけぼの大豆を無駄なく利用すること、多くの人に知ってもらいたいという理由から、あけぼの大豆を使った加工品が多く開発、生産されている。毎年10月になると、朝から晩まで枝豆の選別が行われ、そのまま枝豆となる「A品」と、サイズが小さいものなどの「B品」に分けられ、B品は加工されて販売される。加工品としては、シュウマイやスープ、味噌、コーヒー、モンブラン、きなこなどがある。

4.地理的表示(GI)保護制度

 身延町では、あけぼの大豆のブランド力を高めるため「地理的表示(GI)保護制度」の登録のための活動も行っている。「地理的表示保護制度」とは地域で育まれた伝統と品質等の特性が産地と結びついている産品を知的財産として保護する制度で、登録された商品はGIマークの使用が認められる。登録されている商品の例としては、「夕張メロン」や「米沢牛」などがあげられる。地理的表示保護制度に登録されることによって、模倣品の排除や需要者の信頼を得ることができ、名称やブランドの保護につながるといった利点がある。
 あけぼの大豆は、令和4年3月31日に山梨県内の農林水産物や食品では初めて地理的表示保護制度に登録された。あけぼの大豆は昔から身延町特有の大豆であり、今後はブランド力を向上していこうという考えから、地理的表示保護制度に登録しようという動きが広まっていった。地理的表示保護制度に登録され続けるためには定期的に農林水産省の検査を受けなければならないため、あけぼの大豆は今後も高い品質を維持していく必要がある。

町内の農産物直売所にて

5.まとめ

 現在、身延町にあるあけぼの大豆の直売所には県内外問わず毎年多くの人が訪れる。また、あけぼの大豆に惹かれて身延町に移住し、実際にあけぼの大豆の生産に関わっている人も多くいる。このように、あけぼの大豆は地域の活性化に欠かすことのできない名産品となっている。
 しかし、あけぼの大豆には大量生産が難しいことや、鳥獣害による被害、生産者不足といった課題も残っている。地理的表示保護制度への登録や新商品の開発など、あけぼの大豆のブランド力や認知度の向上のための取り組みは行われているが、今後も幻の大豆である「あけぼの大豆」を保護し広めていくための活動を続けていかなければならない。

出典:
・あけぼの大豆ブランドサイト、「あけぼの大豆について」(2023年10月30日取得、https://town-minobu-akebonodaizu.com/about/)
・農林水産省、「地理的表示(GI)保護制度とは」(2023年10月30日取得、https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/

(担当:飯沼)
   

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