見出し画像

あけぼの大豆の軌跡

1. はじめに

 「身延町のあけぼの大豆」このように言われるまでにはどのような取り組みがあるだろう。
 私たちは身延町役場の産業課の方にインタビューを行った。インタビューを通してあけぼの大豆に関する基本的かつ、具体的な情報が明らかになった。この記事ではその概要をまとめる。

インタビューの様子

2. あけぼの大豆振興協議会

 身延町では、元々生産されていたあけぼの大豆でのまちおこしに力を入れていこうと平成28年に「あけぼの大豆振興協議会」という団体が結成された。
 あけぼの大豆振興協議会には身延町役場、山梨県、JA、商工会、在来種曙大豆保存会(種を作るグループ)、生産者などが所属している。この協議会ができたことにより、あけぼの大豆の地理的表示(GI)保護制度の登録への取り組みも進められたそうだ。
 地理的表示(GI)保護制度とは、地域ならではの特性のある産品の名称を地域の知的財産として保護する制度であり、登録されることで産品の強みや魅力が見える化される。

3. 生産へのサポート

 身延町には、あけぼの大豆生産のために色々なサポートがある。
 まず金銭的な支援として、協議会では手頃な価格で農機具の貸し出しを実施している。また、町では出荷したあけぼの大豆の重量に応じて補助金がもらえる出荷奨励金の制度があり、さらに鳥獣害柵の材料費を最大8割補助するなど、生産者の経済的負担を軽減する取り組みがある。
 その他にも、耕作放棄地を活用して試験圃場を作り様々な栽培方法を試したり、栽培の研修やマニュアルの作成など生産量の向上や品質維持に向けた多様なサポートが行われているようだ。

あけぼの大豆畑の電気柵

4. 生産者と需要の変化

 あけぼの大豆のブランド化を進める身延町。実際に効果も見られている。
 令和元年には281件配布していたあけぼの大豆の種は、令和5年には316件に増加しており、生産者は年々確かに増えている状況にある。
 また、20年前にはあけぼの大豆の枝豆300gで300円ほどだったものが今では300gで600円にまで値上げし、あけぼの大豆の価値は有名な黒豆等にも近づいているとおっしゃっていた。
 さらに、身延町に土地があるが、住んではいないという人も栽培を始めたり、これから作ってみたいという相談を受けている状況もあり、ますますあけぼの大豆の注目度は向上している。

5. 観光やイベント

 あけぼの大豆は身延町外でも人気が出ており、枝豆が収穫できる10月ごろに東京での直売や、山梨県庁の広場での即売会などのイベントを通して、販路を広げている。
 また、身延町で行われる産地フェアの枝豆直売会も平成26年より開催されており、枝豆の収穫体験などを目的に子供からお年寄りまで幅広い世代の方が訪れるという。直売会の来場者数は令和2年に約2200名、令和3年には約2400名と着実に増えている。
 商工会と協議会はあくまで協賛として携わり、約10か所の会場全員が主催者となって各自内容を考え、開催されているそうだ。

2023年 宮木第2会場の産地フェア「枝豆収穫体験」の様子

6. まとめ

 身延町では、あけぼの大豆でのまちおこしのために、役場、山梨県庁、JA、商工会、在来種曙大豆保存会、生産者などが協力して取り組んできた軌跡があった。その結果、実際にあけぼの大豆の需要が増加して価値が向上し、身延町の特産品として注目を浴びている。また、まちでも様々なサポートやイベントなどを行うことで、生産量の増加や販路拡大など課題解決のために取り組んでいる。
 今後も、より知名度を高め、ブランドとしての品質を維持し、さらに増える需要に対応できるように取り組む必要がありそうだ。

(担当:森屋)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?