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早川町の地域運営の今とこれから

1.はじめに

 早川町は山梨県の最南西の国中地方にある町で、「日本一人口の少ない町」として知られている。この町は、面積が広大であるためにいくつかの集落を形成し、それぞれに地域を運営しながら生活している。本レポートでは、現在の早川町における集落ごとの地域の運営方法がどのようなものであるかを地域住民への聞き取りをもとに比較・記述し、今後どのように変わっていくのかを考察することを目的とする。

2. 現在の早川町における地域運営方法

2-1. 奈良田集落

 奈良田集落は10世帯22人が生活している。集落の中の役割として区長と副区長、公民館長、会計、老人クラブの会長、水道組合長、檀家総代、氏子総代、組長がある。区長の仕事は、集落内のお知らせ等の放送や総会への出席がある。副区長は、奈良田集落内の上組、下組の組長が選出される仕組みになっている。副区長は、もともと水道組合長と兼任だったが、業務量の多さへの配慮から組長との兼務に変わったのである。そして、公民館長の仕事は、鍵の管理と公民館運営委員会が行っている大掃除の段取りとなっている。
 続いて、奈良田集落の組合についてである。奈良田集落には、水道組合、テレビ組合がある。水道組合は、水源の管理を主に担っている。テレビ組合に関しては、隣の西山地区の組合であり、奈良田集落からは代表者を出すという形をとっている。

2-2. 本村集落

 早川町の本村集落は、29世帯で人口は60人弱の早川町内では比較的人口の多い集落である。この集落では、集落の中の役割として区長と区長代理、総代、お祭り当番がある。区長の仕事は基本的には集落全体の統括であり、区長会議に出席すること、区の陳情などの際には区の代表者になることも仕事の一つである。また、本村集落では、区長は今まで会計業務も担っていたが、高齢の住民の方にとって会計業務は困難であったため、今年度から会計業務に関しては役場の若手の職員に委託する形をとっている。続いて、区長代理の仕事についてである。区長代理は次期区長として区長の補佐をしている。主な仕事は集落で使用している様々な鍵の管理である。そして、区長が入院などで区長としての仕事ができなくなってしまった場合は区長代理が区長として仕事をする。総代の仕事は、神社経費を使用してお札を購入し、町民からお金をもらって配布することと、お祭り当番と協力したお祭りの準備である。お祭り当番の仕事は、お祭りの際の会計業務と総代と協力したお祭りの準備である。お祭り当番については、本村集落内の4つの組が輪番で担っている。
 次に組合についてである。本村集落には水道組合、衛生組合、テレビ組合がある。水道組合は水道施設の整備・点検・清掃を1年に1回行う。また、検診員を雇っての水道料金の引き落としも担っている。衛生組合は下水を流している場所への消毒液の散布を仕事としている。テレビ組合はテレビ線の障害となる木を切るという有線の部分の整備とテレビの受信料の一括払いを担っている。

2-3. 黒桂集落

 黒桂集落は16世帯人口36人の集落であり、山村留学制度で移住者の受け入れを積極的に行っている集落であるため人口は比較的多くなっている。そしてこの集落では、他の集落に比べ年中行事が盛んである。
 黒桂集落には、まず集落の中の役割として区長と区長代理がある。区長の仕事はお祭りなどの行事の運営と檀家総代、氏子総代の兼任である。檀家総代は町内に住んでいるが区長がお寺の行事も仕切るのが黒桂のやり方である。区長は行事の運営など覚えることが多いため山村留学で移住してきている母子家庭の人や高齢になった住民の人を除いた住民の輪番で成り立っている。しかし、会計業務、公民館の管理や敬老会の運営を担う公民館長、学校周りの交通街頭指導を担う交通安全推進委員については今年から山村留学での移住者の人にも町に関わってもらおうということで担ってもらっている。そして、区長代理は、区長に何かあった時の代役として置かれていて、本村集落同様、次期区長が就任することになっている。
 次に組合についてである。黒桂集落には水道組合がある。この組合の仕事は水源地の管理が主である。この集落では定期的な点検・管理ではなく問題が起こった際に水源を整備しにいくという方法をとっている。

2-4. 柿島集落

 早川町の千須和区には柿島集落と千須和集落がある。今回は柿島集落にお住まいの方に聞き取り調査を行ったため柿島集落について記述していく。柿島集落には5世帯9人が生活している。
 この集落には、まず集落の中の役割として区長と区長代理、組長が存在している。この集落では柿島と千須和を1つの区として区長と区長代理を毎年交代で1人ずつ出し合っている。この集落での区長の仕事は集落内での行事の日程についての放送、会計業務である。そして、組長は区長、区長代理とともに役員として総会で何を話し合うのかといった叩き台を作成する役割を担っている。続いて、区長代理の仕事は他の集落同様、区長が万が一区長としての仕事を果たせなくなってしまった時に区長の代理をすることである。
 次に組合についてである。この集落では、隣の分譲住宅地であるやませみ区と一緒に水道組合を運営している。それ以外にはテレビ組合というものがあり、地域のテレビ環境を改善する際には住民に集金したりしている。

3. 考察

 早川町では、幾つかの役割と組合を作って地域運営がなされている。この町は、面積が大きく、1つの町の中にいくつも集落が存在しているために地域の運営方法は様々であった。例えば、同じ区長という役割の名前でも、黒桂集落ではお祭りの準備・運営の仕事まで区長が担っているが、本村集落だとお祭り当番という別の役割がお祭りの準備、運営を担っている。また、本村集落では、区長は集落の統一を基本として、区長会議に出席したり、区の陳情の代表者になったりするだけで、会計業務は役場の若手の職員に委託しているが、柿島集落では、会計業務は区長の仕事として未だに残っている。
また、組合についても多様であった。水道組合については、今回聞き取りを実施した集落では、どの集落でも存在していたが、その仕事内容や運営方法については独自の方法を用いていた。例えば、水源管理については、1年に1回定期的に行っている集落もあれば、問題が起こらない限りは点検に行かないという集落もあった。衛生組合、テレビ組合については存在していなかったり聞き取り調査では存在の有無が判明しなかったりする集落に分かれていた。そういった集落では組合とは別の方法で組合が担っていた仕事を分担している。
 そして、人口減少や高齢化の流れの中で、早川町では地域の運営方法に変化が出ている。それは、元々は地元住民以外に区長などの役割を任せてはいなかったのだが、移住者の人に任せるというものである。このような流れは、早川町の中でも特に人口が減少している集落から起こる傾向にある。なぜこのような動きが出ているのかというと、こうして体制を変えていかなければ地域の運営がままならないからである。こうして早川町では、地元住民と移住者が混ざり合った地域運営の体制に変化が生じている。そして、今後さらに早川町の人口減少や地元住民の高齢化の進行が懸念される中で求められるのは、従来の運営方法に囚われず、今以上に地元住民と移住者が混ざり合った運営体制を早川町全体に広げていくことだろうと考える。

4. 終わりに

 今回、5回の早川町へのフィールドワークと資料での調査を通して様々なことを学びレポートにまとめた。今回は地元住民への聞き取り調査が主な資料であったために訪問が叶わなかった集落については詳細がわからないままであったし、聞き取り調査を実施した集落でも調査後に出た疑問については解決に至っていない場合がある。しかし、今ある資料を最大限活用してまとめることできたように思う。今後は、ゼミ活動の中でそれらについて解決していき、さらに早川町についての理解を深めることができればいいように思う。(担当:荻原)

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