早川町の自然環境とその活用
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早川町の自然環境とその活用

山梨県立大学・箕浦ゼミ

はじめに

 山梨県南西部に位置する早川町は、南アルプスの自然とそれによって育まれてきた文化の息づく町である。そんな早川町に住む“早川の子どもたち”を全体のテーマとした今年度ゼミでは、これまで日本上流文化圏研究所・南アルプス生態邑の職員さんや町内の子どもたちへのインタビュー、早川子どもクラブのイベント参加などの調査を重ねてきた。
 個人テーマを“早川町における自然教育”としてゼミ活動に参加してきた私は、調査を通して、早川町を囲む豊かな自然とそれを活用する人々の営みについてより詳しく知ることができた。本記事では上記の調査をもとにして、早川町の自然環境とそれを活用した取り組みなどについて述べていきたい。

1. 早川町の自然

1-1. 早川町の動物
 3,000mを越える南アルプスの山々、その懐を流れる早川に沿うようにして集落の点在する町、それが早川町だ。町土369km²の90%以上を森林が占めていることからも、その山深さの一端が窺える。このような早川の自然について、「早川のように山がちな地域には崖などの急峻な場が多く、これはニホンカモシカの生息地に適している。」と教えてくださったのは、南アルプス生態邑所長 大西信正さんだ。南アルプス生態邑とは、早川町の温泉宿泊施設ヘルシー美里と野鳥公園を拠点として、自然体験プログラムなどを展開している総合施設である。
 大西さんのおっしゃったニホンカモシカは、上記の通り山地・丘陵を好む大型の哺乳類で、国の特別天然記念物に指定されている。最近は保護の甲斐もあって生息数を増やしているというが、比較的に都市部で育った私にとっては、20年生きてきた今でも写真の向こうがわの存在だ。
 大西さんは早川町の動物について、ニホンカモシカの他に、ヤマセミやクマタカなどの希少な鳥類、10種類(希少種を含む)近くのコウモリ類、ツキノワグマ・シカ・イノシシ・タヌキなども生息しているとおっしゃった。

早川 山


1-2. 早川町の植物
  またこのような野生動物が生息する早川町の森林は、人工林に多いカラマツやヒノキ、スギなどの針葉樹の他、クヌギにナラ、クリやケヤキなど多種多様の広葉樹によって構成されている。大西さんによれば、ワラビやコゴミ、またタラノキをはじめとしたウコギ科の植物など、食用とされる草本・木本の種類も挙げたらきりがないほどだという。町内でも、お年寄りの方ではそのほとんどが山菜を採るそうだが、30代くらいの若いひととなると、どれが山菜なのか分からないということが多いようだ。
  またこれは余談だが、12月FWの際に早川町内の林縁でマメヅタを見つけたとき、私はかなり興奮したことをよく覚えている。山地を生育地とするマメヅタは、私のふだん暮らしている平地や低地ではめったに見られないからだ。これも、早川町という山中の地域だからこそ見ることのできたものだろう。

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(マメヅタ)

1-3. 早川町の河川
 最後に、早川町の河川についても述べておきたい。まず町の北から南へ貫流する早川は、日本三大急流にも数えられる富士川の支流である。
 陸上運送の未発達な時代には、早川町の地域で産出された木材の流送にも利用されていたそうだ。富士川と同様に急流とされた早川だが、複数のダムや水力発電所建設の影響から、現在は水量が低下している。
 かつてはアユ・アマゴなどのたくさんの魚が見られたというが、それも水力発電所などによる影響だろうか、現在はほとんど見ることができなくなっているという。ただ、早川でも(ダムなどより)上流、あるいは支流では、現在でもアマゴやカジカ、サワガニ、カワムシなど多数の水生生物を見ることができるようだ。


2. 早川町における自然環境の活用

 早川町では林業や農業の他、観光業、市民活動、学校・地域教育、日常生活のうちで自然環境を利用している。本項では観光・サービス業、学校・地域教育での活用についてそれぞれ簡単に述べていきたい。

2-1. 観光・サービス業
 早川町の観光には、南アルプスの豊かな自然、そしてそれらとうまく調和しながら成り立つ文化などが活かされているようだ。“日本で最も美しい村連合¹”・”南アルプスユネスコエコパーク²“にも登録されている町内の自然・文化の姿を、早川町では自然体験や景観保全などの形で観光客に提供している。インタビューを受けてくださった大西さんが所長を務める野鳥公園でも、自然体験のできる施設として観光・自然環境教育向けの活動を行っているそうだ。またシカなどの野生動物が多いことから国の認可を受けたジビエ加工処理施設を町内につくり、ジビエ肉・ジビエ料理を提供する取り組みも存在する。

¹日本の農山漁村の景観・文化を守り、最も美しい村としての自立を目指すための支援を目的とした特定非営利活動法人
²生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的とするモデル地域

2-2. 学校・地域教育
 2-1.で触れた野鳥公園による活動をはじめとして、早川町では学校・地域においてそれぞれ特徴的な自然教育が実施されている。
 学校による自然教育の一つとして、早川北小学校で行われている“BEANS”を挙げたい。これは南アルプス生態邑(ヘルシー美里/野鳥公園)と早川北小学校が共同で行っている授業のことで、早川北小学校の3~6年生の児童が早川町の自然環境にまつわるテーマをそれぞれもち、学校の先生や野鳥公園スタッフさんの協力を得ながら研究活動を行うものだ。
 もう一方の地域による自然教育としては、“早川こどもクラブ”の活動を挙げたい。こちらは上流研が教育委員会から事業委託を受けて実施してきたもので、月に1、2回の参加型活動を行っている。活動内容は歴史・文化体験、あるいは川遊びや工作など多岐に渡り、活動に参加することで自然との直接的なふれあい、文化や工作を介した間接的なふれあいの機会を得ることができる。

3. 早川町の自然環境とその利用について 私の所感

 初冬の早川町へ入ったときにまず目にしたものは、落葉してその枝ぶりをまざまざと見せつける広葉樹林と、夏と変わらずに深い緑を湛えた針葉樹林のコントラストだった。私にはこれが人間の営みと自然が隣り合っているように見え、それは大西さんや上原さん、早川町の子どもたちへのインタビューの内容からも、あながち間違った認識ではなかったように感じる。私はFWやインタビューを通じて、早川町が、日常生活から観光・教育に至るまでのあらゆる分野で持ち前の豊かな自然を活かしていることがわかった。
 しかしその一方で、町内には発電所やダムなどによる環境への悪影響という大きな問題もある。ただこれは、早川町の豊かな自然環境や文化と、ときにはそれらを脅かしてしまう人間の活動が隣り合う様をより近くで、見て知る機会にもなるのではないかと感じた。
 私はこれらのことから、早川町は、老若男女が自然との関わりかたを多面的に学ぶことができる最適な場であると考える。
 続く記事では、そのような環境を活かした教育として、2-2でも触れた“BEANS”を取り上げ、その理念から実際の活動について、詳しく述べていきたいと思う。(文責:内山)

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山梨県立大学国際政策学部・箕浦ゼミ(環境社会学・地域社会学)のnoteです。ゼミ活動の報告を中心に投稿します。