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あけぼの大豆が生みだす交流

はじめに

 2023年度、私たち箕浦ゼミは身延町でのフィールドワークを行ってきた。一年間の活動において特産品であるあけぼの大豆について話を聞く機会や実際に収穫の体験を行ってきた。そうした機会の中であけぼの大豆は身延町において多くのものをもたらしていることが分かった。この記事では特産品であるあけぼの大豆について、特にその栽培の難しさを中心に、これまで行ってきたフィールドワークやインタビューをもとに考える。

あけぼの大豆生産の難しさ

 あけぼの大豆とは身延町のブランド大豆であり、標高300~700mの昼夜の寒暖差が大きく、霧が多く発生する身延町あけぼの地区で採取した種子を使用して町内で栽培されている。あけぼの大豆には限られた気候条件や土壌でのみ栽培を行うことができるという栽培における難しさがある。また、畑ごとや畑内でも育ち方が異なり、常に必要な育て方を模索し続けなくてはならないことや、栽培のほとんどが手作業であり、大量生産を行うことも難しい。そうした栽培の難しさ、希少性から幻の大豆と呼ばれるほどである。
 こうした栽培の難しさを知った時、希少性からあけぼの大豆に価値を生み出しているかもしれないが、栽培する人々にとっては壁になってしまっているのではないか、とりわけ、移住者の方にとってあけぼの大豆栽培に関わる仕事を選択することが難しいのではないかと考えていた。

移住者の方の話

 移住者の方にインタビューを行う中で、やはり、あけぼの大豆栽培の難しさを語ることがあった。しかしそれに加えて、あけぼの大豆を栽培する中で地域の方から声掛けをしてもらうこと、そこから会話が広がっていくことや、畑を見てもらう中で町内の方々との交流を行うことができるという話を聞くことができた。
 また、話だけではなく、あけぼの大豆の畑見学などのフィールドワークを行う中でもそうした姿を実際に見る機会があり、移住者の方が町民の方と畑について、育ち具合やよく育っている畑についてはどのような工夫をしているかなどの情報共有を行っている様子があった。

考察

 こうしたことから、あけぼの大豆が身延町において担っているのは、希少な作物であり特産品であるというだけではなく、あけぼの大豆の存在によって人間関係を円滑に進める効果をもたらしていると考えた。特にその栽培の難しさが情報共有などの盛んな交流を生み出しているのではないだろうか。
 また、移住者の方があけぼの大豆の生産を仕事とする場合、その難しさが後ろ向きな印象を与えそうだが、難しさから生まれる情報共有などの交流、助け合いが、あけぼの大豆の栽培をするということに対して後ろ向きではなく前向きな印象を与えているのではないだろうか。

まとめ

 あけぼの大豆の持つ栽培の難しさは一見すると良い特性とは言えないかもしれない。しかし、それらが生み出す情報共有や交流といった行為は町民や移住者の方々のコミュニケーションの一助となっている。そうしたコミュニケーションは特に移住者の方にとって壁になり得る仕事という面においても互いに助け合う姿勢があることで、その難しさが、後ろ向きな影響を与えにくくしている。
 あけぼの大豆が持つのは特産品としての価値や希少性だけではなく、その栽培の難しさが身延町に暮らす方々と移住者の方とをつなぐというような特産品としての役割以上のものをもたらしているのではないだろうか。

(担当:野田)


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