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No.95 『シグマ光機』 超ものづくり企業

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『翔んで埼玉』のヒットで注目された埼玉県が発祥の光学機器メーカーとして、社名がまず思い浮かぶのはレンズ専業メーカーのタムロンである。一眼レフカメラ用交換レンズやビデオカメラ用レンズ、監視カメラ用レンズなど、レンズの設計と研磨技術を強みに、キヤノンやニコンとはまた違う渋いポジションを築いている。

タムロンがなぜ埼玉県を選んだのかと言えば、戦時中、陸軍や海軍の拠点に光学機器を納入する立地として適当であったからかもしれない。同じような文脈で言えば、東京都の板橋区も光学機器メーカーを輩出した地として有名である。代表企業はニコンやトプコンであろう。双眼鏡を中心に「光学の板橋」と呼ばれていたらしい。

埼玉県を発祥とするもう一社の企業、シグマ光機の決算説明会へ少し前に参加した。タムロンが主にB to Cであるのに対して、シグマ光機はB to Bが中心の企業である。そして、超ものづくりの企業だ。レーザー光技術に紐づく製品ばかりを取り揃え、防衛省や理化学研究所などにレーザー加工機や球面レンズ、三次元検査装置などを納入している。イメージで言うと、浜松ホトニクスや日本電子とキャラクターが近い。ハゲタカのファンドに狙われた光学機器メーカーのように、とにかく研究開発力と製造技術力で生き抜いてきた企業である。日本が国際的に競争力を維持する分野として光学機器がいまだ健在であることを改めて感じた。

最近の決算説明会には珍しく、代表取締役社長が出席していなかった。経理部長が決算概要を、管理本部長が事業戦略を、営業本部長が営業戦略を、そして技術本部長が開発動向をそれぞれ説明するスタイルはニプロの説明会を想起させる。表に出ないことが、もしかしたら社長のポリシーなのかもしれない。ホームページの会社紹介にも社長の写真は掲載されてなかった。「おれは裏方」、亡くなったジャニー喜多川さんのような風貌を勝手に想像した。

開発動向の説明で関心を引いたのは医療関連の話である。眼科領域をターゲットに検査機や治療機の開発を進めているようだ。緑内障や黄斑変性など眼科領域は特に治療機の需要が見込める一方で、すでにトプコンやニコンが注力している分野でもある。技術に優れるシグマ光機が狙うのだからそれなりの勝算があるのだろう。場合によっては、トプコンやニコンが同社を傘下におさめて競争力をさらに強化する選択もありうるかもしれない。特にニコンに関しては、新たな領域として光加工機に力を注ぐ構えだが、その要素技術の一つであるレーザー加工機をシグマ光機は備えることもあってシナジーを感じる。

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