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短歌

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短歌の連作をまとめています。
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#短歌同人誌

短歌「コンサマトリー・グラジュエイション」(30首)

*こちらは『POP & END』に収録された一篇です。『POP & END』のご購入は https://yoruiroyozora.booth.pm/items/665168 から 「コンサマトリー・グラジュエイション」 ミサイルが国境越えて落下するもうすぐ夏休みがはじまる ばらばらと千手観音が降っている きもちがいいあさだねと泣いている

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短歌冊子つくりました☆

短歌と小説の冊子つくりました! 可愛い挿絵も満載です! 気軽にチェックしてみてください(❀・x・) https://yoruiroyozora.booth.pm/items/665168

短歌「世界が文字にならないうちに」

また朝だコインを投げたらうら/おもて 夜は深紅のカーテンに散る 換気する音がうるさい めちゃくちゃに海の氷は掻き混ぜられて 東京は3の腹から産まれ出た 012は足掻けども0 背表紙を撫でれば崖を越える日が孵化する いつかの自分が飛んだ 美しき君の裸を見せてくれ 世界が文字にならないうちに 煮えたぎるブルーベリーに溶ける日の少年は重い銃を手にした 灰はただ天に召される父たちよ静かな街を愛した者よ カフェインを摂るようにしてあなたからやさしさ奪う僕の指つき アルバ

短歌「あかあかと砕ける」

愛嬌をさわるこわさは盲目に辿る煙の螺旋階段 褐色に唐辛子舞う水面のどこにいるのか鈴振る者は 連れてゆく列車の夜は夢を切る 明日の天気を教えないよう 腐食するセーブデータの餞にスーツを羽織る父を見送る ザリガニはエビと同じであったろう 傷は報われねどもうるおし 死に至る時流に揺られ往く路の惑わす風の耀かしさよ 恋人は互いの扉を行き来する 星のあいだを横切るように 肉慾の海のごときにうねる夜は錆びつく胸のひずみにとおく できるだけ傷ませた胸つかみとり投げ込む池の声