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短歌

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短歌の連作をまとめています。
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2019年6月の記事一覧

短歌「さよならグッドモーニング」(18首)

g 00 d M oRn I N g 斜陽シテ目がまわり超高速度で落下し定点 オーディオの音を抜き取り味見して噎せた入道雲の終わりに 路の傍に落ちてる花を噛み千切り匂いを嗅いだ探索犬B 朝靄の雑踏の隙間駆け抜ける閃光一筋フラッシュバック 蜘蛛の巣が地球をさらいに来るらしい試験は忘れていい雰囲気だ 貪欲にあの子の窓を這う蔦は血管らしく取り払えない ざらざらと小川に流るる太陽をつまむと白く溶け落ちていく 足元のレールの終わりが見えなくて線路と呼ぶのをやめ

短歌「救済論的滑り台」(29首)

「髪切って、侵略するの、仕方なく。」仕方ないことだ、春なんだから。 足りないと繰り返すだけの機械でも浄土を待ってるノイズ文学 「席に着け、これから描いてもらうのはどちらからでも消費できる絵」 オフィスでは郵便の人もドランカー「宛先ばっかり書いてあるのよ」 紙束をマッハで数える銀行員、真実はひとつセカイ☆征服 「宇宙には何でもあるよ」「amazonも?」「飛田新地も東京タワーも」 教会の壁の張り紙「気をつけよ、隣人の都市はそっとされたし」 揺れ出した電車の中吊り広

短歌「コンサマトリー・グラジュエイション」(30首)

*こちらは『POP & END』に収録された一篇です。『POP & END』のご購入は https://yoruiroyozora.booth.pm/items/665168 から 「コンサマトリー・グラジュエイション」 ミサイルが国境越えて落下するもうすぐ夏休みがはじまる ばらばらと千手観音が降っている きもちがいいあさだねと泣いている

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短歌「四季」

「春START」綻ぶの子は滅ぶのか春に問う 風のいらへはすべて「善し」なり 存在をジャグリングするクラス替え 光の粒子は机に騒ぐ 氷解を求め流離う自己愛が分娩される始業式の日 川べりの卑猥な本が楽しげに新生活を語りはじめる 朝起きて手首に名無しの草が萌え、花が笑って夢をばらまく 「無重力Summer」汗が服を湿らせたあの学び舎が軌道を描いて僕にぶつかる 全人類詩人化計画進行しスペクトルしか見えなくなった シエスタのプールに飛び込むようにして沈む夕陽も夏のいいなり