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【ノンセンス・プロンプ】の比喩 ~黛冬優子の原動力とは~

どうも、TK(@TK_HoCliP)です。
【ノンセンス・プロンプ】で気を失ったので感想と解釈をまとめます。Twitterに書いた話の総集編みたいな感じです。
当たり前のようにネタバレばかりなので、まず5050円払って(!?)自分で読むことを奨励します。いつも通りゴリゴリの私見が入ります。

(以下、言及の無いものはすべて【ノンセンス・プロンプ】から引用)

美人

①鏡像異性体と黛冬優子

本カードではタイトルがやたら有機化学です。

鏡像、不斉原子

このことからテーマのモチーフとして、鏡像異性体(光学異性体)が用いられていることは明白です。そもそも鏡像異性体って何?という話を簡単に説明すると、

①立体的な構造が鏡合わせの関係にあり、物理的性質はほとんど同じである
②旋光性が異なる
③生理活性が異なる

のような特徴を持つ2物質の関係のことです。この2物質のことをそれぞれD体,L体と言い、D-○○,L-○○のように表記します。この辺は〇ikipediaとか大学受験のサイトを見たほうがわかりやすいカモです。

以降、これらの特徴になぞらえて解釈を進めます。

1.鏡合わせの関係

構造が鏡合わせであるとありますが、これを表現する方法としては他に「裏表の関係」と言われます。恐らく、鏡合わせの関係を、時計回りと反時計回りのものは裏返すと重なる、という風に言い換えています。

このことから、本コミュでは裏表の関係をもつ二者について述べようとしていることがわかります。

また、2物質が沸点のような物理的特徴がほとんど同じであることから、この二者は一見同じようなものであることもうかがえます。

2.旋光性が異なる

正直ここはうまい解釈ができてないです。飛ばしてもらっても大丈夫です。

非常に似た2物質を見分ける方法として、光を当てたときの反応の差を見る、というものがあります(実際にやったことないのでうまく説明できないです)。

まあようするに光を当てると二者を分離できるということです。だからなんなんだろう…視点によって見え方が変わる=ふゆと冬優子だったりするのかな…

3.生理活性が異なる

この二者は構造の違いと旋光性の違い以外はほとんど同じであると述べてきましたが、生物の体は2物質を識別することができます。
例えばグルコース(ブドウ糖)。ヒトのエネルギー源として重要である点が有名ですが、自然界にはD-グルコースしか存在せず、人間はL-グルコースを栄養とすることができません。

このことから、裏表の関係の二者について、その一方のみが適切であると解釈されます(ただし本コミュでは後述の理由により、全てにこれが当てはまるわけではないようです)。

4.「鏡像異性体」は何の比喩か part1

さて、本コミュ中でも裏表の関係の話は出てきていました。『周縁回帰』のコインです。

『周縁回帰』より

このコインの裏表ですが、【三文ノワール】を読んでるとわかりやすいらしいです。なんで伝聞かって?持ってないからだが…

話を戻して、ここでは観覧車と、それが回るのをやめようとするまで整備し続けると言う整備士の話が出てきます。この整備士は最初の客である、という点も語られていました。
ここに、更に【三文ノワール】の「アイドルとプロデューサーはコインの表と裏みたいなもの」という発言を合わせると、比喩の一つが「アイドルとプロデューサー」であることは間違いなさそうです。プロデューサーのあなたが、冬優子の1人目のファンであることとも併せて整合性が取れます。
そしてこのことから、全ての比喩でどちらかが正しい、という意味が込められているわけではないことも言えます。

また、「ふゆと冬優子」もあてはまると考えました。
一般に不斉原子というと炭素であることが多いですが、14族元素であれば不斉原子となり得ます。一般に使われる「不斉炭素原子」ではなく、わざわざ「不斉原子」をタイトルに採用していることから何か意味がありそうです。
14と冬優子の関係性を考えてみるとTwitterのフォロワーから次のような指摘が…

フォロワーが天才過ぎるだろ。
【starring F】では冬優子がふゆを確立させるまでの軌跡が描かれており、その中で、中学くらいには冬優子の味方を作るには『ふゆ』が適任だと気づいた、と語る描写があります。これが中2くらいだとすれば、14歳で冬優子が自分の鏡像を作り出したと解釈できます。浅い言い方にはなってしまいますが、ふゆと冬優子の本性は表と裏っぽいですし正しそうです。

ここまででわかる比喩はこのくらいだと思います。
そこで、一旦次に向かいます。

②酸素と電池、ノンセンスなプロンプ

続けて『不斉原子』について考えます。

1.ノンセンスとナンセンス

本コミュでは【ピトス・エルピス】などでも見られる文章と音声が一致しないギミックが使われています。カードタイトルの【ノンセンス・プロンプ】はここのことを指しているでしょう。

ところで、日本語では通常ノンセンスではなくナンセンスを使うと思いますが、この二つには明確な意味の差があります。ある馬鹿げた事象に対して、ナンセンスが「ばかばかしい」と捉えている一方、ノンセンスは「事象の裏には意図がある」と捉えています。

本コミュでもそれは反映されており、「(ばかばかしくて、だからこそ)大切な(ふゆの)酸素」というセリフが存在します。冬優子にとって、この酸素はナンセンスではなくノンセンスなのです。次はここを解釈します。

2.酸素と嘘

この酸素は「嘘」であると書かれており、嘘とは「プロデューサーの言葉」であると考えられます。

『周縁回帰』では新しいコンテンツへと人が流れてゆき、誰も見る人のいなくなるであろう自分の将来を憂う冬優子の独白が描かれます。【三文ノワール】では、この憂いに対する回答として「映画」のような永遠の形が提示されていたようですが、そちらのコミュでも本コミュでも「飾っておくわけにもいかない」「今じゃないものに、それほど価値なんてない」というように、冬優子は否定的です。彼女はトップアイドルを目指しているのですから。

この憂いに対し、プロデューサーは前述の通り「それでも、ひとりだけいるかもしれない」「閉園しようとも(回ることをやめようとしないかぎり)整備をやめる気はさらさらない」と、語っています。彼は「最後の最後まで冬優子のプロデューサーとして付き合う」と誓っています。

「最後まで」のような言葉を嘘であるとしたものに、イベント【ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス】【ワールプールフールガール】などがあげられます。特に前者は顕著であり、「ずっと」や「絶対」という言葉は非現実的であると勘付きながらも、自分含む誰かの思い出になるようにという願いを胸にアイドルをする彼女たちが描かれています。

そして冬優子も「最後まで付き合う」なんていう言葉は嘘であると考えつつもその嘘が枯れるまで、騙され続けることを求めました。

あなた自身
気付くことのない
まだ気づかない
その嘘で

『不斉元素』より

3.酸素と電池、鏡像異性体と異化

ですがヒトは酸素だけでは活動し続けることは叶いません。イルミネが誰かの思い出になるようにという願いを原動力に「ずっとイルミネでいる」のような言葉を使っていたことになぞらえるのなら、冬優子にとっても何かしらの原動力が必要です。この原動力の比喩として、本コミュでは「時計の電池」が用いられています。

コミュ中では冬優子の時計や観覧車の回転が彼女の迷いを比喩するかのように止まっていましたが、動きのおかしかったその時計は「電池を交換」したら直ったとプロデューサーは語っています。これは、冬優子の原動力を正しいものに交換することで、彼女が再び歩み始めたと読めます。

この原動力がなんだったかですが、『鏡像去来』と『周縁回帰』から読み取ることができます。
『鏡像去来』では「不安があるから頑張れる」と語っています。

『鏡像去来』より

この不安は、『周縁回帰』で吐露していた「誰もいなくなる不安」でしょう。つまり、交換前の原動力は「誰かが見てくれるように頑張る」だったと言えます。

さて、不適切な原動力でヒトが動けない例として鏡像異性体の物質がありました。前述の通り、例えばヒトはグルコースはD-グルコースしか栄養とできず、L-グルコースを栄養とすることができません。また、食物を分解してエネルギーとすることを、異化と言います(この異化は生物用語というよりは医学用語)。鏡像異性体は異化してエネルギーを得ることができません。そして冬優子がエネルギーを得れていない描写が『異化憧憬』の選択肢中に存在しています。

『異化憧憬』より

ここでは、時間が止まった(=迷っている)中で空腹を訴える冬優子が描かれます。これは誤った原動力で動いていることにより、エネルギーを得ることができていないからと解釈できます。『異化憧憬』は栄養の渇望、空腹と言い換えられそうです。

以上のことから、本コミュでも鏡像異性体のように非常に似ているが表裏の関係にある原動力に変化していると考えました。

(本来であれば電池、酸素と言えばATP/ADPを持ち出すべきなのでしょうが、自分の理解では不斉原子と関連させられないんですよね…)

4.「鏡像異性体」は何の比喩か part2

では、鏡像異性体のような変化を遂げた言動力について考えます。

転換点である『周縁回帰』でのプロデューサーの言葉が「でも、ひとりだけいるかもしれない」であることを踏まえるとこの変化は、

「誰かが見てくれるように頑張る」
 から
「最後まで見てくれる人がいるから頑張れる」

だと思います。アイドルを見る誰かの視点に重きがあるが、その捉え方が「0にならないように」なのか「絶対に1人いるから」なのかという点で対称的です。

前者について言えば、それこそ【三文ノワール】の映画のように、媒体に収めてしまえば解決するため、アイドルを続ける彼女の原動力としては不適切であったと言えます。

彼女は、「最後まで見てくれる人がいる」という事実を原動力にして、「それがプロデューサーである」という嘘を酸素にして活動をするヒトなのです。

5.酸素と電池、そして『二酸化炭素濃度の話』

ちょっと脱線。
さて、食物を酸素を用いて異化すると出る物に二酸化炭素があります。呼吸で二酸化炭素を吐く理由はそういうことです。

円香wing『二酸化炭素濃度の話』より

二酸化炭素と言えば円香wing『二酸化炭素濃度の話』は避けられません。このコミュでは『心臓を握る』への道として、オーディションやひいてはアイドルそのものに対する不安や恐れといった感情を他のアイドルに投影する円香が描かれています。

円香はプロデューサーのことを「嘘つき」であると言っています。この点は【ノンセンス・プロンプ】と同様であり、二人ともプロデューサーの言葉が嘘であるとは考えています。
ですが冬優子はその言葉を「酸素」と捉えているのに対し、円香は言葉への言及をせず「二酸化炭素」という酸素を使用した結果に着目しているように見られます。

この差を解釈するならば、冬優子は「その言葉が自分を突き動かしてくれる」と肯定的に捉えている一方、円香は「その言葉に従った結果、自分の中に怯えや憧れ、怒りといった感情が生まれた」と否定的に捉えていると考えられます。プロデューサーの言葉を嘘と捉える二人の視点の差が見受けられて面白いと思います(最も最近の円香はプロデューサーの言葉に肯定的な面も出てきていますが)。

③シュレディンガーの幽霊

ここまでを踏まえた上でImitation Ghostの歌詞を冬優子パートメインで解釈してみます。

Crazyな浮世は 斬新なNews 貪むさぼるEveryday
無情に進化して 変わりゆく世界 私は何処だ

『Imitation Ghost』

ここはコンテンツを消費する世の中を見たことで、【三文ノワール】や【ノンセンス・プロンプ】で自分を失った冬優子の様子が描かれているように見えます。

存在をCry 光り輝いて
魅せたいわ 最後の最後は誰よりも Shiny (Flash) Shiny (Flash)
本当の自分であれ

『Imitation Ghost』

これが2番では消費されるコンテンツである自分を嘆きつつも、最後までアイドルとして輝き続ける彼女の覚悟と願いが描かれています。

全体を通して【三文ノワール】と【ノンセンス・プロンプ】の答え合わせとも言えそうです。8月に出した曲をその後のカードで答えにしてくるのキモいな!?(褒めてる)

魂はFly 行き場を探して
今日もまた 何度も何度も「此処だよ」って 叫んでるのは

「私」と言う名の偶像 脳裡にProgramしたから
いつかの未来で彷徨ってる Imitation Ghost

『Imitation Ghost』

ここはあさひ&全体パートですが冬優子っぽいので最重要だと思うので引用を。

サビ前は女優としての永遠ではなく、最後までアイドルを選んだ彼女の叫びと言えます。彼女が「ふゆ」と言う名の偶像(アイドル)として「此処が良い」と叫んでいるのだと自分は思います。

では「いつかの未来で彷徨ってる Imitation Ghost」とは何でしょう。この答えが『不斉原子』の猫の鳴き声と箱だと考えています。オタク大好きシュレディンガーの猫ですね。

『不斉原子』より
箱はまだ開けない
夢は近付くとあまり安全なものじゃない

幽霊というと【三文ノワール】で映画に収めることを「素敵な幽霊」と例えていたようですね(伝聞ばっかじゃねえかこいつ)。ですが、彼女はこの未来を自ら捨てました。つまり、「Imitation Ghost」は永遠に残る選択をした彼女のこと、ではないはずです。
更に幽霊が出るコミュとして、凛世LPと【きよしこの夜、プレゼン・フォー・ユー!】があります。

凛世LP『舞台』より
舞踊の心得を幽霊に例えている
【きよしこの夜、プレゼン・フォー・ユー!】『added time アマクナイヨル』より
八雲なみを幽霊に例えている

このことから、幽霊はパフォーマーそのものを示していると考えられます。シュレディンガーの猫を、一般に使われるように「観測するまでどちらの状態か不明なもの」であるとするならば、その状態は「いつかの未来で彷徨ってるImitation Ghost」はステージで幽霊のように踊る様と、そうならず単にアイドルとして終わってしまったもののことであると思います。映画に収められることを含めて、これらは「幽霊の模倣」を比喩として使うには適切です。

未観測であるこの二つの状態は未確定でありますが、もはや彼女は留まることを知らないはずです。なぜなら前述の通り、彼女は「誰かが見てくれるように頑張っているのではなく、最後まで見てくれる人がいるから頑張っている」からです。

以上のことから、ここの歌詞を【ノンセンス・プロンプ】に合わせて解釈すると、
「自分は今を全盛期として残すことではなく、アイドルとして輝き続けることを選んだ。しかし、その未来が本当にアイドルであり続けるのか、それとも終わってしまうかは未観測、未確定である。しかし、見てくれるプロデューサーがいるからそこに向かって頑張り続けられる」
となります。だから彼女はこう歌うのです。

私を叫びたい

『Imitation Ghost』黛冬優子

④おわりに

ということで「鏡像異性体」「酸素」「電池」「幽霊」の比喩に着目してみました。長々ありがとうございます。お前の解釈と俺の解釈で解釈バトルしようぜ!どっちも優勝な!

…真面目にいろんな人が自分の解釈を語ってるのは面白いので、ツイートでもいいから見たいなあ、と思っています。

あとは読んでて黛冬優子というアイドルだけではなく、ストレイライトにも興味が出てきた…
自分はストレイのコミュは【Straylight.run()】しか読めていなくて(恥)、そろそろ読まなきゃな~と言いつつなかなか手が進んでいませんでした。ですが、このコミュで、単純に冬優子への興味は勿論、Imitation Ghostの歌詞を通じて「じゃあ二人は何を考えて歌っているんだろう」と気になりました。とりあえずgradとかLP読みなおそっかな~、あさひgradとか面白いよね。

ツイートの引用は怒られたら消します。フォロワー!許してくれ!

あと【三文ノワール】を限定にしたやつを一回殴らせてください。

グーパン冬優子で〆


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