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【一般質問から】医療的ケア児の通学支援について:緊急性の認識もってただちに対応を

9月27日に一般質問を行いました。
青森県議会は壇上で30分質問し、そのあと答弁が続き、最後15分の再質問(一問一答方式)があります。

今回の再質問では、医療的ケア児支援のうち通学支援について時間を費やしました。スクールバスに乗れない子どもの通学をどうするか、という問題です。この間、関係者に話を聞き、「この部分だけが乗り越えられない」と声が寄せられている問題です。

昨年11月の一般質問でもとりあげ、その後、検討会が立ち上がっています。ただその検討会の期間は3年で、検討の結果として実施するかどうかはわからない、という場所です。それはそれとして検討してもらいながら、でも、今年度進学が問われている子はどうするのか、という「目の前」の問題=緊急性を踏まえて支援をただちに行うべきだ、と思っています。

質問の様子をテープからおこしたものを紹介します(録音を文字にしたものなので、間違いがあるかもしれません)。

【吉俣議員 壇上での質問】
次に医療的ケア児の支援体制について質問します。
医療的ケア児支援法が成立して3年、その到達と課題を明らかにするシンポジウムに参加してきました。キーワードが2つあると感じたので、それを紹介しながら質問します。

一つは、チャレンジです。医療的ケア児支援のとりくみの一つひとつが、不安から出発しながらも新しいことに挑戦するなかで切り開かれています。
シンポジウムでは、医療的ケア児をもつ家族が一時的な外出や休息ができるように利用するサービス――レスパイトに取り組み始めた鶴田町の老健施設や人工呼吸器が必要な医ケア児の受け入れを始めた浪岡養護学校の事例が報告されました。いずれも、「最初は不安だったが、とりくむなかで手ごたえを感じていった」というもので、県小児在宅医療センターなどと一緒に大事な努力が続いています。こうした努力をさらにひろげてほしいという思いで、それぞれ聞きます。
まず、医療的ケア児を受け入れることができる医療型短期入所施設の状況と県のとりくみについてうかがいます。
次に、県立特別支援学校における医療的ケア児の受け入れのため、県教育委員会ではどのように対応しているのかうかがいます。
レスパイトについて一言述べておくと、あすなろ療育福祉センターなど県の施設で行っているレスパイトの能力を高めるよう要望します。

もう一つのキーワードがチョイスです。現在の課題は、保育にせよ学校にせよ、医療的ケア児とその家族に選択肢がないことにこそあります。この点で課題となっているのが通学支援です。
ここで、このシンポジウムを報じたNHKのニュースを紹介します。
「医療的ケア児の娘と参加した母親は『来年、子どもが小学校に入学するが市外の小学校に行かなくてはいけないなどの問題があり不安です。仕事の復帰を考えているので通学支援に何かいい手段がないかと思っています』と話していました。
県小児在宅支援センターの網塚貴介センター長は『支援法ができ、いろいろなことがよくなっている一方で、解決できない課題もある。特に通学支援は県も含めてしっかり考えてほしい』と話していました。」
私はこの問題を、昨年11月の一般質問で質問しました。その後、通学支援事業の検討会が設置されましたが、ここはあくまで検討の場にとどまります。
通学支援が確保できなければ、その家族--多くはお母さんが送り迎えをせざるを得なくなり、そのため離職せざるを得ないという状況が生まれています。支援法はその目的に、「医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資(する)」とうたっていますが、通学支援の有無は、家族の離職に直結する課題ととらえる必要があります。
支援法の趣旨に照らしても、本県のとりくみの到達に照らしても、通学支援に対するふみこんだ県の支援が必要です。
そこで、県立特別支援学校における医療的ケア児の通学支援事業検討会の進捗状況についてうかがいます。

【教育長の答弁(通学支援の部分のみ抜粋)】
次に医療的ケア児の通学支援事業検討事業検討会の進捗状況についてです。
通学支援事業検討会は、関係部局や有識者、福祉事業者、市町村等の関係者により今年度から設置し、県立特別支援学校に在籍する医療的ケア児の通学に関する現状と課題は明らかにし、保護者の付き添いの負担を軽減して通学できる仕組みを検討しています。今年度は3回の開催を予定しており、7月に実施した一回目の検討会では、通学支援に必要となる車両や同乗する看護師経費等についての情報交換および実態調査の進め方についての協議を行っております。今後は実態調査等を行い、その結果を踏まえた具体的な対応について検討していきます。

以上のようなやりとりのあと、再質問を続けました。

〇吉俣議員
医療的ケア児支援について再質問します。
大前提の話なんですが、この分野は当事者や関係者はもちろん、県当局も教育委員会も努力が続いていて、それが前進をつくってきた分野だと思います。
だから直面する課題はあるんですが、その解決の道は、今の努力の延長線上にあると思うことは少なくありません。今日質問したのは、レスパイトや学校の受け入れ体制の問題などもそうしたものの一つだと思っています。
ただもう一方で、今の努力の延長線上では解決が見えてこない課題も生まれています。それが通学支援です。
ここで通学支援というのは、スクールバスに乗れない児童生徒への支援のことです。いまスクールバスで通っている医ケア児についても課題はあると思っていますが、ここで議論したいのは、スクールバスにも乗れずもっぱら家族の手に頼って通学している子どもたちへの支援という話です。
そこで教育長に、この意味での通学支援の重大性と緊急性をどう認識しているかをお聞きしたいんですが、重大性の認識については、検討会をつくって努力されていることからも(認識をもっていることは)分かります。
ただこの検討会は3年間検討することとなっており、しかもその結果、支援するかどうかは分からないというものです。腰を据えて、ふさわしい検討をするということは大事だと思いますが、それだけでは目の前で進学が迫っている子どもや家族には支援の手が届かないんです。結局、お母さん方が仕事を辞めないといけないよねっていう話になっていく。だから今年度――今年度というか毎年度、目の前で問われる子たちがいると。この緊急性を正面から受け止める必要があると思っているのでお聞きしますが、通学支援のこの重大性と緊急性を教育長はどのように認識しているでしょうか?

〇教育長
県立特別支援学校における医療的ケア児の保護者の負担を軽減して通学できるようにする仕組みを検討することは、医療的ケア児の学習環境を整備する上で、ご質問にありましたように重要であり、喫緊の課題というふうに考えております。
したがって、地域資源や一人一人の医療的ケア児の実態が異なるため、現在検討しているところでございます。

〇吉俣議員
検討は大事だと思っているんですが、同時に、目の前に迫っている人をどうしますか、ということを聞いています。
もう少し具体的にお聞きします。
実はこの課題では国の補助金があります。二つあります。
一つは、福祉タクシーなど交通手段への補助です。 特別支援教育就学奨励費がそれで補助率1/2。埼玉や静岡県などいくつかの県でこれを使えるようにしています。
もう一つは看護師の配置への補助です。教育支援体制整備事業費補助金(切れ目のない支援体制整備充実事業)がそれで補助率は1/3。本県でも、学校への(看護師の)配置には使っていると思いますが、交付要綱には、医療的ケア児に対し登下校時における送迎車両への同乗など校外での対応も差し支えないものとすると書かれています。
ところが移送手段についてと看護師の配置(登下校への補助)、本県では両方とも対応されていません。その理由をうかがいます。

〇教育長
補助のことは今のおっしゃった通りでございまして。そういったことも含めて、いま、様々なところから検討しております。

〇吉俣議員
様々に議論されているわけですが、今の議論のペースでは、今年度対応が問われる子には届かないんですよね。 そこをどうするんですか、という話を聞いています。
この問題で厚労省が事務連絡を出しているのを見つけました。「公立特別支援学校に在籍する医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の学校生活および登下校における保護者等の付き添いに関する実態調査」という長いタイトルの事務連絡です。私が探せたのはあの平成29年のもので、もう少し新しいものがあるのかもしれないんですが、手元にあるのはこれしかないので、これにもとづいて質問を続けます。
こう書かれています。
「(医療的ケアを必要とする)幼児児童生徒の登下校における保護者の付き添いの負担を軽減させる工夫に努めること」
工夫してほしいと言ってるんですね。私には知恵を出してほしいとも読めました。私もこの知恵を出したいというふうに思って聞いています。この事務連絡にも、特別支援教育奨励費が対象になるよということも言っています。
特別支援教育奨励費ともう一方のこの教育支援体制整備事業費補助金をやっぱり使う決断すべきだと思うんですね。目の前に、この通学支援がないから、来年度子どもが進学すれば、お母さんは仕事を辞めざるをえないと、こういう状況にぶつかってる方がいらっしゃるわけです。その人にどうするんですかということを聞いています。
この二つの補助金の活用を決断すべきと考えます。教育長の見解を伺います。

〇教育長
タクシーを対象としての補助金も使えるということでございましたけれども、そういったことも含めて、タクシー利用などを例えば全部了承すれば、いま様々な、スクールバスに乗らずにタクシーを乗りたいというふうなことも出てきますし、そうしたことも含めて、いま検討していただいているというところでございます。

〇吉俣議員
まあそのなんていうか、例えばそういうのは運用でうまくいかないかなと思うんですね。スクールバスに乗れない医療的ケア児や必要な方が対象になる、という形で整理できないものなんだろうかと思います。
冒頭言いましたが、重大性ということは認識されていると思います。従って検討会も開催されていると。で同時に、この緊急性にふさわしく、教育委員会が決断されることを求めたいと思います。
この事務連絡にはもう一つ「工夫」の一つとして、「都道府県の福祉部局との連携し、障害福祉サービスで実施している通学支援などを利用するなど地域特性を考慮し、柔軟に対応できる体制を整備すること」としていますで、この点の努力がどう行われているのか、健康医療福祉部長にお聞きします。

〇健康福祉医療部長
先ほど教育長から答弁のあった医療的ケア児の通学支援事業検討会の委員として、健康医療福祉部からも参画し、医療的ケア児の保護者の付き添いの負担を軽減し、通学できる仕組みを検討するとともに情報共有を図ってまいります。

〇吉俣議員
教育委員会と一緒によく相談しながら取り組んでほしいと思うんですね。
繰り返しますが、目の前で今年度、あるいは来年度どうするんですかっていうことが問われているという問題です。ここに関わるご家族が仕事を辞めざるを得ないとかっていうことにならざるを得ない問題です。
検討会の検討は大事にしてほしいということの前提の上で、目の前の方にどうするんですか、ということを聞いています。
ところで知事は今年3月、「あおばな」(県民対話集会)で医療的ケア児者家族会のお話を聞いています。その中でもきっとこの課題が出てきたんじゃないかなというふうに思います。
知事としてどういった所感を持ったのかうかがいます。

〇宮下知事
私自身は3月にですね、医療的ケア児のご家族のみなさん、あるいはその医療的ケア児の方々もいらっしゃる中で、対話集会を開催させていただきました。
その中で、本当に今議員からご指摘のあったですね、通学に対して非常に困ってる。目の前で困ってる方がいるということと、それから仕事を辞めざるを得ない、あるいはその制限せざるを得ないという声も聞いています。そういうこともあって今現状ですね、教育委員会のところで検討を重ねていただいている、検討をスタートさせていただいているところであるというふうに理解していますので。何もその三年間、検討した結果やるやらないっていうことだけではないと。そういうふうに私は考えていますので、ぜひ検討を進めていただいて、さまざまな場面でですね、公平性も担保しながら、様々な方々がいらっしゃいますので、公平性も担保しながら、医療的ケア児の通学支援あるいは生活支援について、よりいっそう県政として進んでいけるように努力していきたいと、このように考えてございます。

〇吉俣議員
知事から、目の前で困っているということも認識されていて、教育委員会の方で検討会もやられているというお話がありました。
公平性の担保ということも必要ですし、したがって検討会での議論や様々な努力――いろいろな難しさもあるんだろうというふうに想像します。
個々のケースは非常に多様で、医療的ケア児と一言でいっても、(症状の)重い方から軽い方まで、本当に多様で一律に論じられない部分があります。そこに教育委員会の難しさがあるんだと思うんですが、それだけに、県民一人一人の声が県政動かすと旗を掲げた「新時代」の姿が問われる分野でもあるというふうにも思っています。
今日は特別支援学校への通学に絞った話を今してるんですが、そうじゃない学校への通学も必ず問題になってきます。そういう意味では知事部局も教育委員会も市町村とも力をあわせて解決に向かってほしいという風に思います。

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