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映画「さかなのこ」
「さかなのこ」がもう上映終了し始めているらしい。
あんなに素晴らしい映画がもうじき観られなくなってしまうのか。さみしい。あんなにホカホカじんわりとあったかくなれる映画をスクリーンで見られたことを誇りに思う。
そして、本当におもしろかった。「いやー!!我はいい映画を観たゾ!!」と思える映画です。ギリギリまだやっている所もあるので、この機会を逃してほしくないと思い、「さかなのこ」の素晴らしさを伝えようと思います。
コメディシーンが全部おもしろい
なんでこんなに満足できたのか考えてみると、「作品内に満遍なく散りばめられたコメディ要素が全くスベッていなかった」ということが7割ほど占めていたと思う。
本当にちょうどよく、クスッと笑えて、登場人物全員が愛おしく思えた。
小学生の時にミー坊(幼少期のさかなクン)が近所の変なおじさん「ギョギョおじさん」に遭遇するシーン。
このギョギョおじさんをさかなクンが普段のまんまで演じるんですが、映画の役と普段のみんなから愛されるさかなクンとのギャップがおもしろかった。
ギョギョおじさんは見た目はまんまさかなクンなんですけど、さかなクンがおさかな博士として成功しなかった世界線の人なんです。だからみんなからヤバいおじさん扱いされている。だから子どもからは逃げられるし、本人は友だちがいない。そこがコメディタッチで描かれているのですごく笑えます。
また、ミー坊の高校時代に関わるヤンキーたちのシーンが本当におもしろい。あのシーンを見るためにもう一度映画をみたいと思うくらい。ぜひ皆さんに見てほしい。
キャラクターが愛おしい
出ているキャラクターが本当にみんな愛おしいんですよね。みんなツッコミどころあるし、変なやつで、やさしい。
磯村くんが演じるヤンキーの総長
岡山天音くんが演じる他校のライバルヤンキーのカミソリ籾
柳楽さんが演じる幼なじみの狂犬ヤンキーのヒヨ
夏帆さんが演じる幼なじみのシングルマザーのモモ
みんながみんな愛おしい。
特にヤンキーたちが大変愛おしくて、同じクラスになって端っこでずっと観察しておきたいと思うくらい。
みんなツッパって荒れた言葉を使ってるけど、ミー坊につられて魚のこと「おさかなさん」て言っちゃうおバカで優しくてかわいい高校生。
総長を演じた磯村勇斗くんが本当に素敵で、今でもテレビに映るたび顔がほころぶ。本当に磯村くんはヤンキーが似合う。
不良たちから「総長!!」と信頼されるカリスマ的存在な彼。自分の愛用してるバイクをミー坊が作る新聞のネタにされてキレるんですが、その時の怒り方がとてもかわいい。
総長「人が嫌だって言ってることはやっちゃいけないんだぞ!」
そうですね、やっちゃいけない。それをリーゼントで短ランのヤンキーが言ってるんですよね。かわいい。
カミソリ籾を演じた岡山天音くんも本当に良かった。大好きになった。いい感じに気持ち悪くて、いい感じにかわいそうで、そしてとても愛おしいんです。あと、喋り方がふにゃふにゃねっちょりしています。
過ごしたかった青春、大切にしたかった大好きなものが詰まっている
この映画は、ただ「好きなものを追い続ければ、いつか芽が出て大きな花が咲くよ!」というように、安易に誰かの背中を押す作品というわけではないと感じました。
ミー坊にはまず、理解の良すぎる母親がいる。そして、「おさかな博士になる」という夢を馬鹿にせず、むしろそんな変わらない姿に憧れてくれる友人がいる。
大人になったミー坊は、たまたま高校時代に仲良くなったカミソリ籾(岡山天音)に再会し、彼が新しくオープンさせる寿司屋の内装のイラストを任され、それがきっかけでイラストレーターに。
さらに、テレビ局に就職した幼なじみヒヨが自分を使った企画を提案し、それがきっかけでおさかな博士に。
偶然、奇跡が何度も連なって、大好きなおさかなさんと過ごすミー坊がつくり上げられた。
ただ頑張ったから、努力をしたからではなく。その頑張りの上に、人に恵まれて、うまれた。
だから、やさしい空気が漂っているのに、優しくない。ただの一般人がこうはなれないんだなと思わされた。
でもやっぱり、夢を追いかけるのを諦めたくないと思えた。それくらい、沢山の人に支えられて夢を叶えたミー坊の笑顔が素敵だった。
そして、ミー坊の過ごした時間が本当に素敵だった。
ミー坊が小学生の時に、幼なじみのヒヨと腕をブンブンまわしながら土手を走った日々。
地元のヤンキーとおさかなさんを巡って喧嘩を繰り広げた後、イカを仲良く分け合って食べた日。
幼なじみのモモとその娘の3人で同棲し、ふたりの幸せのために好きなものを少し手放した日。
全部が愛おしく、なぜか時代も背景も違うのに懐かしく、切なく感じる。
こんな日々を過ごしてみたかった。くだらなくも笑い合える大好きな人に囲まれ、上手く行かない時も、好きなものにまっしぐら。
そんなミー坊がまぶしかった。そして、そんな姿を見られてとてもうれしかった。しあわせだった。
いろんなシーンがおもしろかったのはもちろん、とても満たされた気持ちになる映画でした。ぜひ、ぜひ、まだやっている映画館見つけて観に行ってください。好きなことにもう一度向き合いたくなる映画です。
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