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#考察 そば屋のうどん

いま緊急で記事を書いています。

おすすめに『うどん屋にはそばがなくて、そば屋にうどんがある』のはなぜ? 的な記事が流れてきた。以前からぼくも気になっていたのでこれをきっかけに一考してみる。あくまで考察なので参考にしないように。

歴史

江戸中期に蕎麦切りブームが起きたときにうどん屋がそば屋に転身したって話は伝え聞いていたんだけど、それがきっかけであるとすれば『うどん屋はうどんのみ』『そば屋はそばもうどんも』提供してきた文化があるということになる。

当時の京阪ではうどんが人気、江戸ではそばが人気だったので、京阪ではそばを提供する理由がなく、江戸では新興のそばはもちろん食べなれたうどんもたまには食べたいって感じだったのかもしれない。

うどん屋もラーメン屋も基本的に他の麺は扱わない

慣習としてうどん屋もラーメン屋も他の麺を扱っている店はあまり聞かない。あるとしても顧客の要望に応える一部の店舗だけであって、丸亀製麺やはなまるうどんのようなチェーン店でさえもそばの提供はない。ラーメンショップにはうどんもそばも置いてないよね。

人気うどん店であれば麺種を増やすより天ぷらの品数を増やした方がコストもよく店の人気につながるだろうし、ラーメン店であれば醤油・味噌・塩などスープのバリエーションを変えたほうがやはり客入りが良いはず。何より専門店のイメージを保つ方が他業態と差をつけやすいからね。

そば屋をひとくくりにすると沼る

おそらくみんなが誤解しているのが本格そば屋と老舗そば屋の違い。本格そば屋というと、昭和に入ってからつなぎの少ないそばを『せいろで蒸す』ことで冷たいそばが提供できるようになったのがきっかけのはず。そばはもちろん手打ちだし、二八や十割などのそばが香り高く好まれ、穀物ではなく疑似穀物であるのにもかかわらず、うどんにもひけをとらない麺として人気になったのであればうどんの提供はもはや不要だ。

いっぽうで『藪』『更科』『砂場』など、江戸時代にうどん屋からのそば屋に転身して屋号を守ってきた店舗は、歴史から見ても新興のそばと歴史のあるうどんの両方を提供してきた。のれん分けした○○庵などのそば屋は、しだいにかつ丼、カレー、ラーメンなど人気メニューを拡大し、町の大衆食堂へと形態を変えてきた。本格そば屋では日本酒に板わさだとしたら、町のそば屋はビールにからあげなんてことも。

うどんを提供しているそば屋は町の大衆食堂であるそば屋であって、それを本格そば屋と一緒にして考えてしまうと『なんでうどんを?』って考えに至ってしまうんじゃないかな。つまり理屈じゃなくってそういう文化があるってこと。吉野家のイメージってやっぱり牛丼屋で、松屋のイメージは牛丼+定食、すき家は牛丼+カレー。実際には吉野家でも定食は提供しているけど、本格そば屋=吉野家、町のそば屋=松屋やすき家なんじゃないかな。確かにぼくは吉野家なら牛丼一択だ。

立ち食い店にヒントがあるかも

立ち食いそば屋は多いけど、立ち食いうどん屋って聞いたことがない。立ち食いうどんの文化がまったくないのであれば、本来ならそば専門の立ち食い店にすれば効率がいいはず。けど立ってでもいいのでうどんを食べたい人が一定数いるんだよね。ぼくもそう。

話を戻すけど本格そば屋でうどんが置いてあったらぼくは頼まないと思う。本格うどん屋にそばが置いてあったらそばを頼むかもしれない。立ち食いラーメン屋の横に店舗のラーメン屋があれば店舗を選ぶと思うし、本格そば屋の横に立ち食いそば屋があれば、むしろ立ち食いが食べたいと思うかも。

牛丼をトップメニューにしている松屋で定食を食べている人を見て、なんで牛丼食べないんだろう? 定食なら大戸屋で食べればよくない? って感じる人は少ないはず。そこに疑問を持ち始めると、ラーメン屋なのにビールと日本酒が置いてあるよ。日本酒なら居酒屋で飲めばよくない? って話になりかねない。

Disでないのなら食に疑問を持つことは楽しいことだ。けどそういう文化もあるんだよってことに気付けるとより食が豊かになるはず。

ぼくはそば屋でうどんを頼むって『粋だなあ』って思うけどなあ。

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