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宗佑磨はなぜ打撃が覚醒したのか

どうも、yoです。暑くなってきましたね!先週軽い熱中症による?体調不良を起こし、その中で仕事を行っていたら非常にしんどかったので皆さんもお気をつけください。

さて、今回は好調な猛牛打線のキーマンとなっている宗佑磨選手の打撃について書きたいなと考えています。去年、期待されながらも結果を残せなかった宗選手ですが、今年は何が変わったのでしょうか。

1.今年の宗選手の成績

まず、今年の宗選手の成績などについて軽く振り返っていきます。

wRC+の値もリーグの平均的な打力と言われている100を超えているなど、穴と言われ続けてきたサードにガッチリハマる選手となりました。

シーズン全体として見ていくと、開幕時こそ11打席連続無安打など苦しんでいましたが、4月11日の日本ハム戦で9回2アウトから同点となるタイムリー3ベースを放つと調子は上昇気流に。4月30日のソフトバンク戦ではサヨナラタイムリー、5月3日の西武戦では自身2度目となるランニングホームランを打ちました。現在は押しも押されぬレギュラーに定着、5月2日からは全試合サードのスタメンとなっています。

サード守備もリーグ屈指のUZRを記録しており、楽天の茂木栄五郎選手と激しい首位争いをしています。が、今回は打撃に関して取り上げるので割愛しますね。活躍しているということを記したかっただけです。

また、貢献度を表すWARでは、現パ・リーグ打点王のE島内選手と同じWAR(2.1)を記録するなど、押しも押されぬレギュラーとして活躍しています。

このように、今年は記録にも記憶にも残る活躍をしている宗選手ですが、去年と比較してどこが変化したのでしょうか。

ここからは今年のはじめに昨年までの宗選手について書かれているシュバルベさん(@love_uni31)のnoteでの数値などと比較していきたいと思います。

2.昨年との違い(数値面)

ここでは、昨年との指標面での数値について比較していきます。

昨年の宗選手の指標面の特徴として、以下の特徴が挙げられます。

(1)ゾーン管理はできている
(2)2019と比較して打球はあまり弱くなっていない
(3)フライの割合が10%増えていて、打球結果の半分がフライ
(4)ライトへの引っ張りの割合増加
(5)ストレートへの対応悪化

それぞれがどのように変化したのかについて見ていきます。
(詳細な昨年までのデータは上のシュバルベさんのnoteに記載されているので割愛します。)

(1)ゾーン管理について
昨年も非常に優秀なコンタクト率を発揮していた宗選手。今年はどのように変化したのかというと…

今年もストライクゾーンのコンタクト率は90%を超えるなど非常に優秀な数値となっています。ストライクゾーン・ボールゾーンともにコンタクト率はL源田選手とほぼ変わらない数値、というといかに空振りをしない選手であるかわかるのかな…と思います。

またストライクゾーン内でのスイング率は年々増えています。今までは待球型、とも言われることもあった宗選手ですが、今年はパ・リーグで規定打席に到達している全26選手ではゾーン内のスイング率が9位ゾーン外では10位となるなど積極型であることがわかります。

とはいえ、コンタクト率は前述の通り優秀な値となっています。そのため、「振ってくるけど空振りはなかなかしない」選手であることがわかります。

実際、4月に放ったサヨナラのシーンでは3球で追い込まれながらもそこから8球目まで粘ってのタイムリーでした。まさに「空振りしない」集大成だったと思う打席です。

(2)打球強度
打球強度は覚醒の兆しを見せた2019年と大差がなかった宗選手。ここに関しては大きな変化を見せています。

一目瞭然ですね!過去2年と比べてSoft(弱い打球)の割合が減り、Hard(強い打球)の割合が増加しました!1軍で使われるようになった2018年から「強く振る」ことを宗選手は意識していました。

「豪快=大振り」のイメージを抱きがちだが、本人はそれを否定する。
「ただ大振りしているわけじゃないです。強く振る、その中でコンタクトするように意識しています。コーチの方々とも相談して、自分の中でも今の形を理解しているので。調子がいいから打てる、悪いから打てない、という低いレベルじゃないと自分は思っているので」
2018年3月12日付 Fullcount

それが少しずつ形を成しているのでしょう。強く振る=打球に強くぶつかる事ができれば調子が悪い時期でも必然的に強い打球が増えることに繋がるとも考えられます。

ちなみに、このSoft%は同じチームの吉田正尚選手よりも低い割合であり、3つの打球強度の割合としてはE浅村栄斗選手と近い割合となっています(18%-41%-41%)

打球が強くなったことで、今シーズンの内野安打の本数はわずか1本と俊足が持ち味の宗選手にとっては寂しい数となっていますが、その分強い打球が増えたことで生まれたヒットの数も多くなっていると思います。仕方ない!

(3)打球タイプ
長打を狙うために去年はフライ割合が50%を超えていた宗選手。今年度はどうでしょうか。

ゴロの割合が増加し、フライの割合が低下しました。昨年の宗選手は(おそらく)長打を増やす目的のために意図的にフライを打つようにしていたと想います。

しかし、フライを打とうという意識の結果、打球を擦ってしまって内野と外野の間に上がる弱いフライの数が非常に多かったです。

こちらの動画はヒットを打ったシーンになりますが、このような擦った打球が昨年は本当に多かったです。

しかし、今年はこのような打球は減りました。擦った打球が減少し、強くボールを叩けることができるようになったためゴロ割合が増加し、フライ割合が減少したように感じます。

ではなぜ減ったのか。それは、「体幹強化」が考えられます。

今年の宗選手は足の違和感から宮崎キャンプに合流せずに舞洲で調整していました。その期間を使ってじっくりと体幹強化を行うことができたと語っています。

自分を基礎から見直すことができた。「自分が追い求めている形を基本から固めて。キャンプに行けていないので実戦もやれていない。ひたすら体の芯、軸を作りました」。この日、ダイヤモンドを駆け抜けた強靱(きょうじん)な足腰を作り上げた。
2021年5月3日付 日刊スポーツ

体幹強化によってスイングが安定して、自分のスイング・自分の打撃ができるようになったのではないでしょうか。

実際、解説者の谷沢健一さんは今年の宗選手について以下のように語っています。

「以前は変化球に対する脆さがあったが、軸がぶれなくなってスイングがしっかりしてきた
2021年5月3日付 BaseBallKing

こちらに関しては打球強度にも影響してそうですね。

また、今年に関してはフライアウトの数と宗選手の成績は反比例します。

調子が良かった5月はフライアウトの割合が減少していることがわかります。また、3試合で1本しかヒットを放てなかった広島との試合は6本のフライアウトを打っています。

今後の注目ポイントになりそうです!

(4)打球方向

昨年は打球方向がライトへの引っ張りが強く現れていた宗選手。今年はというと、

レフト方向への流しの割合がライト方向への引っ張りの割合を超えていることがわかります。これはコース別打率を見るとなぜかがわかると思います。

対戦打数がインコースが41打席に比べてアウトコースが75打数と極端に多くなっていることがわかります。アウトコース中心の配球に対して逆らわずに流し打ちができているために、レフト方向への打球割合が増えているのでしょう。

また、「逆らわずに打つ」事ができているというのは、力まずに自然体で打席に臨むことができている証拠ではないでしょうか。

自然体で臨むことができている結果として変に力むことがなくなったため、フライの割合が減少したと考えることもできると想います。

(5)ストレートへの対応
基本的には「速球に強い」イメージを持たれがちな宗選手ですが、昨年のwFA(速球に対する得点貢献)は-4.5と速球に弱い選手となっていました。

しかし、今年は+3.0と見事に+の数値へと復活を遂げました!(2019年は+2.9)

これに関しては、毎年行われているフォームの修正が大きく影響していると思われます。次の章でそれについては記載しようと思います。

また、フォーム以外でも速球に強くなった理由としては先ほどと同じように「体幹強化」があげられます。

体幹強化によって、体の軸を鍛えることができたために、昨年と比較して強い・早いスイングができ、速球へのアプローチが改善したと考えられます。

では、ここで昨年との違いについて軽くまとめます。

(1)ゾーン管理は優秀、今までと比べて積極打法に
(2)強い打球が明らかに増えた
(3)ゴロの割合増加
(4)流し打ちの割合増える
(5)速球をしっかりと叩ける

3.昨年との違い(フォーム面)

前の章では数値を用いて昨年との違いについて記載しました。ここではフォーム面での変化について書きたいと思います。

正直、フォームなどの技術面はあまり詳しくないこともあり、書きたくはないのですが宗選手の場合避けられないかなと感じています笑

昨年のフォームは「ノーステップに近い2段ステップ」と簡潔に言うことができるのではないでしょうか。

こちらは、昨年のランニングホームランの動画になりますが、1段目のステップとしてややオープン気味の構えをピッチャーに対して平行に戻し、2段目のステップとしてタイミングを合わせているように感じています。

昨年、速球に対して良い数値が出ていなかった理由として、2段ステップによる球に対する反応の遅れも考えられると思います。

こちらは2019年のフォームになりますが、昨年のような大きなステップではなく小さなステップとなっています。そのため、スムーズにバットが出ているために速球への対応ができていたのではないでしょうか。

では、今年はどのようになっているのでしょうか。

去年と比較すると最初の構えがオープン気味になっていないことがわかるかと思います。

これによって、昨年と比べると始動が同じでも対応がワンテンポ早くなるために速球への対応が向上したのではないでしょうか。

また、インタビューなどでは目先の結果を追い求めるのではなく数年後の安定した結果を求めるために様々なことを試している様子が伺えます。

「試合になってどうなるか分からない。最初は打てないと思う。そういう過程だと想定している。最初はしっくり来ないと。続けられれば、合ってくる日がいずれ来るので、我慢しながらやりたい」
2019年2月13日付 スポニチアネックス

この考えが3年後になって「しっくり来る」フォームになったのでしょう。それに伴って安定した成績を残せるようになったのではないかと考えられます。
(このニュース記事、宗選手の意識の高さをかなり感じる記事なのでぜひお読みください)

また、フォームについては自分は素人なので全くわかりませんので、批評等ありましたら遠慮なくDMなどいただけたらと思います笑

4.今後の課題

では、今後の課題はどのようなものになるでしょうか。データなどを見ると主に3つの課題があげられます。

(1)変化球への対応
(2)左投手へのアプローチ
(3)真ん中低めへの対応

それぞれについて説明します。

(1)変化球への対応
先ほど、ストレートへの対応が良くなったと記載しましたが、変化球への対応は課題となっています。

今年度の球種別の得点増減を見ると、ストレートとカーブ、ツーシーム、シンカーの得点数値こそ+となっているものの、それ以外の変化球(スライダー、カットボール、フォーク)の得点数値は-となっています。 

これまでは、打線でも特段警戒されていなかったために相手投手がストレートを投げる機会が多かった(ストレートの投球割合はオリックスの規定打席に到達している3選手で一番高い44%)です。

しかし、「ストレートに強い」という指標と「チームの主力」という2つの理由から今後宗選手に対して変化球を投げる割合が増加すると考えられます。そこでのアプローチをどのように改善するかは注目ポイントになりそうです。

(2)左投手へのアプローチ
宗選手は過去3年の成績を見ても左投手が苦手です。

打率で比較すると今年や2019年は左右で大きな差がないですが、OPSは毎年.100以上の差があります。

では、このような差はどこの部分で生まれてくるのでしょうか。宗選手の今年度の左右別での空振りをするホットスポットで比較します。

一目瞭然ですね。右投手に対する空振りは真ん中低めのボールゾーンに集中していますが、左投手に対しては局地的に存在しています。特に、インハイは空振りが多いゾーンとなっています。

まずは、対左投手のインハイの空振り数を減らすことが左投手攻略に繋がるのではないでしょうか。

(3)真ん中低めへの対応
こちらに関しては先ほどの続きに近いものとなります。1の(4)で紹介した打球方向別の割合でも真ん中低めの打率はなんと、.032(32-1)となっています。なんとかしないと。

また、上で紹介した空振りのホットスポットでも右投手に対する空振りの大半が真ん中低めに集中していることがわかります。

とはいえ、今までの紹介した3つの課題の中で最も改善が期待されるのはこの真ん中低めになります。理由は三振数です。打率こそ低いものの、三振数はわずかに3。この数は得意としているインローやアウトローよりも少なくなっています。

つまり、「当てることはできるけど強く打てない」ということです。当てることはできているので、全く対応できていない。ということではありません。今後の対応に期待が持てると思います。

(上であげましたが、これに加えてフライアウトの割合も注目ポイントになります。詳細に述べたのでここでは語りません)

5.おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。今回の内容を簡潔にまとめると以下のようになります。

今季の覚醒ポイント
(1)強い打球を打てるようになった
(2)ストレートの対応力向上
(3)コンパクトなノーステップ
今後の改善ポイント
(1)変化球への対応
(2)左投手へのインハイ
(3)インローを強く打つこと
(4)フライアウトの割合

一時期はOPSが.800を超えていた宗選手ですが、現在はOPSが.750近くになり、直近6試合での打率は.200を切るなど疲労と敵チームの対策によって少し壁にぶつかっているような印象を持ちます。

しかし、やっとの思いで固定できたサードということもあり、替えがきく選手では現在ないです。苦しい時期だと思いますが、その中でも踏ん張っていただきレギュラーとしてチームの勝利に貢献し続けてほしいですね!

胸の奥で熱く滾る想いすべて出し切り、シーズンという壮絶な争いに最後まで勝ち残ってほしい(優勝してほしい)です!

◇出典

また、所属するサークル「ネクストバッターズサークル」ではロバートさんからコメントを頂きました。ありがとうございます!

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