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一本の魚肉ソーセージ


僕はプロ車いすマンになるために、専門の施設に3~4年ほど入所していました。

そこには、入所する100名ほどの人が一気に食べることができる広い食堂があって、贅沢を言わなければ栄養士が考えた健康的な食事を、毎日三食お腹いっぱい食べることができました。

入所したてのころは、不平不満は全くなく美味しくいただいていたのですが、どちらかと言えば病院食のようなメニューが多く、入所期間が長くなればなるほど、味気なさを感じずにはいられませんでした。

※僕がいう病院食というのは、 一昔前の嫌な思い出を引きづっているだけで、最近のものは結構美味しいということはわかってほしいです

そんな僕の心を潤してくれたのが、施設内にあった軽食もできる売店でした。そこに行けば市販のお菓子やカップラーメンが売ってあります。そんなのを食べたら体に悪いのかもしれませんが、長らく施設暮らしの僕には涙が出るほど美味しいものばかり…

なかでも、そこで食べていた「 おばちゃんの焼いた魚肉ソーセージ」の味が忘れられません。

魚肉ソーセージを焼いているおばちゃん
魚肉ソーセージを焼いているおばちゃん

おばちゃんというのは、そこで働いている職員のことです。細身の体型でメガネをかけた少しやつれ声のおばちゃんは、最初はどちらかというと無愛想だったのですが、何度も通う中で意気投合していきだんだんと僕のリクエストにも答えてくれるようになりました。

「これ、焼いてくれますか?」

売り場に置いている魚肉ソーセージを一本手に取ると、おばちゃんにそう言って手渡します。

「しょうがないな〜」

おばちゃんはそう言いながらも、丸ごと一本をそのままフライパンに投入した後にパラパラと塩コショウを振り掛けてから数分転がして、アルミホイルに包んで手渡してくれました。

「わ〜ありがとうございます!」

お礼を言ってから、それを自室に持ち帰って食べるのですが、ほんのりと温かい魚肉ソーセージの味は格別でした!

ただ魚肉ソーセージを焼いて塩コショウをかけただけなのに…

「お…おまえって、こんなにうまかったっけ?」

そう思うほど感動していたのを思い出します。

社会に出ていると、日本は豊かですから、手に入れたいものは簡単にほぼすべて手に入ってしまいます。

しかしながら、何かの拍子で日常に制限がかかってしまうと、なかなか思うようにいかなくなることも少なくないのかもしれません。

そういうときには、いつも以上に「物の価値」や「人の心」を感じるような気がします。

おばちゃんが焼いてくれた、あの「魚肉ソーセージ」が、それを教えてくれていたような気がしました。

応援ありがとう!

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