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CT検査、MRI検査の【造影剤】とアレルギー

医療現場ではお馴染みの【造影剤】ですが、皆さんにとって「なんのために造影剤なんて使うの?」と思われている方も多いかと思います。今回は疑問に答える形でまとめていこうと思います。(今回は一般の方向けです)

1.なんのために造影剤を使うの?
A.病変の範囲をしっかり捉えて適切な治療につなげるためです。
通常のCTやMRIはただの白黒画像で、それだけでもある程度の事がわかります。ただし病気の情報の中で大事な情報の一つが「血流」です。この血流を見る事で、病気の「存在・範囲・良性・悪性」の区別がつくようになります。造影剤は血管に注射する事で血液を光らせ、流れを浮かび上がらせてくれますので、病気の状態がわかり、適切な治療が出来るようになります。(画像*1)

2.どんな種類が有るの?
A.ざっくり分けて【CTのヨード造影剤】と【MRIのガドリニウム造影剤】の2種類があります。
それぞれ違いがありますが、CTの時と、MRIの時の造影剤が有るんだなと思って頂いて構いません。

3.造影剤は注射してどれくらいの間、体の中に有るの?
A.24時間でほぼ全量、(腎臓から)体外に排出されます。
CTのヨード造影剤もMRIのガドリニウム造影剤も腎機能が正常の場合は2時間で60%以上、6時間で80%以上、24時間でほぼ全量が排出されます。もし、腎臓の機能が悪い場合は体内に止まる時間が長いため、使用しないことの方が望ましい場合もあります。

4.造影剤の副作用はどれくらい起こるの?A.CTのヨード造影剤:軽いものが3人/100人、重いものが1人/10万人MRIのガドリニウム造影剤:軽いものが1人/1000人、重いものが3人/10万人
CTのヨード造影剤の方が一般的に副作用の頻度が高いですが、そのほとんどが悪心、嘔吐、蕁麻疹、血管痛やくしゃみなどの軽度なアレルギー反応です。

5.どういう人が造影剤使えないの?A.主に腎臓の機能が悪い人と気管支喘息の人です。どちらも副作用が出やすいため使わない方が無難ですが、多少のリスクを負ってでも造影剤を使用した方が良い場合は点滴や薬などを使用しながら造影剤を使う事があります。小児や高齢者は上記の問題がクリアしていれば問題はありませんが、妊婦さんの場合は医師とよく相談してください。そのほか、糖尿病でビグアナイド系薬剤を服用している方は医療機関によっては服用中止を指示される場合があります。重篤な肝疾患・心疾患・甲状腺疾患が有る方なども制限がかかりますので、ご自身の持っている疾患は医療機関にお伝えするようにしましょう。また、小児喘息であった方は5年以上無治療かつ無発作であれば投与しても良いとされています。

6.重篤な副作用には何がありますか?
A.アナフィラキシーという激しいアレルギー反応があります。
起こる確率はかなり稀(1万人に1人程度)ですが、急激な血圧低下や呼吸障害、意識障害などを起こす事があります。2回ハチに刺された時に見られるような症状です。この時に使用する薬剤がアドレナリンとステロイドという薬で、CTやMRIの側に常に用意されています。もし心臓が悪くβ遮断薬という薬を使っている場合はアドレナリンの効果が期待できず、グルカゴンという薬を代わりに使用しますので、必ず服用している薬は医療機関に伝えるようにしましょう。

7.結局造影剤って使った方が良いの?A.医師に勧められた場合は使用した方が良いです。造影剤を使う事で診断が正確になり治療もより効果的で副作用が少ないものになります。勿論、わずかながら副作用の問題もありますので、造影剤を使用せずに診断出来る疾患に対しては医師も造影剤を使うことを勧めたりはしません。勧められた場合は「正確に診断して、効果的で副作用の少ない治療に繋がる」と思って頂ければと思います。

画像引用
*1)社会福祉法人恩賜財団済生会福岡県済生会福岡総合病院
https://www.saiseikai-hp.chuo.fukuoka.jp/department/hosyasen/zoeizai/index.html

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