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人・空間が「地続き」に 札幌市若者支援施設“Youth+(ユースプラス)”

若者の生活に少しプラスできるような、社会教育に関するイベントやまちづくり活動などを実施し、若者と地域を結ぶ拠点として社会活動への参加をサポートするほか、講座・交流イベントの開催を通じて、若者の仲間づくりや交流を促進します。

施設の設置や運営をしている貴団体について教えて下さい。

公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会という、とても大きな法人で設立40年になります。協会になる前はもともと札幌ユースワーク協会といい、40年以上前にユースワークなんていう言葉を使っていたことにびっくりしました。それが青少年婦人活動協会になり、青少年女性活動協会となりました。
札幌市内には児童館が200館あり、一括指定管理の非公募で受託しているので、職員の大半が児童館で勤務しています。


若者支援施設は、もともと勤労青少年ホームでした。そのうちの1か所が若者支援総合センターで、残りの4つが若者活動センターになっています。若者支援総合センターにだけ、サポステとか相談に特化した機能があり、活動機能と相談援助機能の両方が備わっています。活動センターは主体的な活動支援や居場所が中心です。日常的な相談は活動センターでも受けていますが、有資格者をそろえて個別面談を予約とって専門機関といろいろケースのやりとりをしてというのは総合センターの仕事です。

総合センターはどんな空間をめざしていますか?

フロアが二つにわかれていて、相談援助のフロアと居場所のフロアがあって、そこが「地続き」になることを目指しています。弱っている、悩んでいる、困っている人だけの相談場所でなく、ふらっと気が向いたときに、とりあえず行ったら何かやっている、誰か知っている人がいるという「期待値」で人が来る場所を目指しています。

施設のつくりかたとしてコンセプトはありますか?

環境面はもともと勤労青少年ホームの仕事帰りの余暇を過ごす場所という作りになっているので、目的から空間デザインをしたわけではありません。総合センターだけは移転した関係で、広いフロアのどこにパーティションを置くかというところからできたので、ロビーをとにかく広く、と市にかけあいました。市は部屋をたくさん作った方が良いんじゃないか(貸室利用料金を得るため)、私たちは、ロビーはユースワークを生むから、ロビーを広くしたい、というせめぎ合いが10年前のデザインの時はありました。


そして、ロビーは広くできました。フィンランドやデンマークのユースセンターは壁が透明なので、パーティションを透明にしました。色は透明ですが、壁があるというだけで部屋感はでるので、ロビーからすると広く感じるし、中で何をやっているかも見えます。必要な場面で開閉できるように壁にカーテンを設置しました。


もともと勤労青少年ホームだったところは体育室、音楽スタジオ、調理室、クラブ室、講堂と呼ばれるような広い教室、ちょっと前までは和室がありました。総合センターはそれがなくて、ビルのワンフロアを自由に切って使った広さがある場所です。ロビーが広いというのと、調理室は1室絶対作りたかったので、調理機能はあります(現在はコロナのため利用中止)。

センターの利用者は何歳からですか。

15歳から34歳までです。それは勤労青少年ホームのなごりで、勤労青少年ホームからユースプラスに変わったときには、20代後半が利用者層の中心でした。私たちとしては、もっと年齢層を下げたい、ヨーロッパのユースセンターのようにしたいというのがあって、行う事業をもっと若い子が楽しめるものにしました。15歳からがメインの利用対象ですが、その年齢になった年にバリバリ使えるように、プレの機能のような形にして、中学生も参加できるようになっています。


札幌市外からでも利用は可能ですが、中学生は歩いてこれる距離、ということで地元がほとんどです。施設の開館時間は朝10時から夜22時、土日祝日すべて開いています。相談機能の若者支援総合センターの相談フロアだけ、月曜日~土曜日の10時から18時になっています。高校生の利用は21時まで、中学生は19時までです。

イベントはどのくらいのペースでどんなイベントを行っていますか?

週に1回程度で、ミニイベントを行っています。人狼大会やたこ焼き作ろうかという気軽なイベントと、きちんと準備をしてプログラムがちゃんと練られた事業とを行っています。昔は職員が事業を企画するからにはきちんと目的を明確にして、定員の6割を満たさないと中止だ、という感じでしたが、そうではなくて、人が来なかったら中止でもいいし、若者が突発的に明日ボードゲーム大会をやりたいとかいいだしたらできるようにということでそれを一括してミニイベントというくくりにして、最低週1回は開催することにしました。


5館分のミニイベントカレンダーのようなものがあって、今日はここのセンターいったらやってる、明日はあのセンターいったらこれやるね、というのが見られるようにしています。

中高生委員会のようなものはありますか?

それはないです。もちろん事業のひとつとして若者たちでボードゲームを開発しよう、自分たちのやりたいことを企画してやってみよう、子ども向けキャンプを企画した等はあるのですが、君たちが施設運営委員会だよとか、いわゆる学校の生徒会みたいな組織化は当面やらないと勤労青少年ホームから変わる時に決めました。


それはなぜかというと勤労青少年ホームのときに利用者協議会というのがあり、利用者がどんな行事をやるか、主体的な参画のもとにホームを運営することになっていたのですが、結局のところ、操り参画から脱せなかったのです。年間行事何本以上と先に決まっていて、そろそろこの行事の季節だよ、と職員が促したり、町内会からお祭りのお手伝いの依頼が来てるから各サークルから一人ずつボランティアを出すように話を持っていったりと、恣意的なもので葛藤していました。


それが何年も続いているうちに、利用者同士の中で派閥みたいなものができてしまい、施設の理念をわかっている「職員にとってありがたい利用者」と、ただ遊びにくるだけで「こちらの成果に全然ならない利用者」に二極化するばかりか、利用者同士でもいがみあうようなこともありました。


そもそも月に1回は利用者協議会ミーティングを開くということが規則として決められている時点で、クリエイティブなものになるわけがないですよね。もともとフットサルをやりたくて利用していたのに、利用者協議会活動が多くて負担に感じて、来なくなったりする子人もいました。


いま、利用者による委員会として施設運営というのは手放したけれど、若者が主体的に社会を考えるきっかけづくりは大切にしています。例えばロビーに模造紙を貼って、みんなの意見を自動販売機に入れるジュースで反映したり、政治やLGBTについてどう思いますかという調査とか、環境のことを伝える掲示など社会問題や彼らの身近な関心ごと、やりたいことありますか、など、とにかく社会に関心をもってもらうワークショップはよくやります。


地域連携を求められたりしますか?

もちろんユースワークにおいて地域連携は欠かせないのですが、札幌はニュータウンというか作られた街で、地域自体が若者を育てる力があまりないように本州出身の私は感じています。


まちづくりに主体的に若者がかかわることを目指して、年間人数5000人とか目標を定めて、今まで地域の町内会に参加してきましたが、社会参加プログラム=地域ボランティアじゃないよね、というのを何年か前から私たちも感じていて、地域ボランティア、お手伝いよりもワークショップや社会に対してアクションできないだろうかと変えてきました。


一方で、どうしても行政は相談援助機能を重視するので、困難を抱えた子ども若者を支援したエピソードや、相談件数の方に目が向いています。活動センター単独で価値をしめそうとしても、残念ながら今は難しいですね。


ターゲットアプローチとの連動があるから、ユニバーサルアプローチの価値を認めてもらえる。単独ではとても大変です。それに対して私たちは、両方あって両方必要というのを札幌の味にしようと思っています。

こういうことできたらいいのにと思っていることはありますか?

札幌の若者支援施設は「Youth+(ユースプラス)」という愛称なのですが、「ミニ+(ミニプラ)」を作ろうというのはコロナ前から掲げています。

キッチンカーで団地の駐車場に行って、そこでご飯を提供しながらユースプラスのロビーのような空間を作ったり、児童養護施設にユースワーカーが定期的に訪問したり、市内すべてをミニプラにするための取り組みを始めたところでコロナ禍になってしまい、悔しい思いをしています。収束したらもう一度チャレンジしなおします。

お

図1

取材日 2020年11月27日





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