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祭囃子のそのあとで〜fiesta in chaos

 【ATTENTION!セトリバレ有】
 fiesta in chaos沖縄ファイナルに合わせてUPしようと思ってたら追加公演…あとひと月以上寝かしとくのも忍びないので公開します。がっつりセットリストに触れておりますので、知りたくない方は追加公演のあとでまた来ていただけると幸いです。

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 今年私が参戦したUNISON SQUARE GARDENのライブは3公演(遠征なし・対バン含む)。「君の街まで会いに行く」と公言して、年中どこかでライブをしてくれている彼らの有言実行の恩恵に今日もあずかる。本日『fiesta in chaos』(以下fic)である。
 今回の会場はライブハウス。2021年4月SSSRの時はテープで四角く区切られたエリアが各人に割り当てられた。2022年4月FTH8の時は全席指定で椅子が出た。さて今回は?
 早めの整番で入場。床はテープで横ラインのみが入っている。幸運にも最前エリアの最後尾(柵の手前、絶対押されない)、視界良好なところに陣取ることができた。ドラムとスタンドマイクが思いのほか大きく見える。もしかして超いいポジションかも。そしてこれから始まる音楽は掛け値なしの最上級。ああ始まるのが待ち遠しい!

 いつものように『絵の具』が流れ、御三方が姿を現した。貴雄さんのドラムソロと斎藤さんの「ようこそ!」で始まった1曲目は、『kaleid proud fiesta』ツアー(以下kpf)では本編ラストだった『10% roll、10% romance』。続いて2ndアルバムより『Cordy beats』。とても好きな曲、今日聴けるとは思ってなかった。嬉しくて涙がにじむ。さらに畳みかけるように前回のメインチューン『kaleid proud fiesta』が続く。もうここでkaleid? 早いっ! のっけからトップスピード全開だ。矢継ぎ早に繰り出された初手の3曲は、どの曲も歌詞に「走り出す」意のフレーズがちりばめられていて、疾走感がどんどん加速してゆく。どうやら祝祭はまだ終わってないらしい。ならば遠慮なく乗っからせていただこう!
 それにしてもステージが近い。貴雄さんが立ったり立ったりして(笑)スティックをぐるんぐるん回しながらドラムを叩くのも、斎藤さんがほっぺ膨らませ口を尖らせてギターソロを弾いているのもよく見える。今宵のライブもスゴイものになりそうだ。まあ彼らはいつでも最新が最高にかっこいいのだけれども!
 
 ひと息入れての第2ブロックは、軽快なギターのイントロで始まった。大好きな『スロウカーブは打てない(that made me crazy)』だ。最後のフレーズで 斎藤さんが「レイテンシーを埋めていっ・まっ・す」とちょっと変則的な歌い方になり、おっとっと、とつんのめる。あらら? と思うと同時にぽわんぽわんしたかわいいギターの音で始まったのは、『放課後マリアージュ』だ。素敵な繋ぎ方! この2曲が続いたおかげで、かねてより想像していた『スロウカーブ~』のイメージ「掃除の時間にホウキと丸めた雑巾でやってる野球(もどき)」が一段と鮮明になる。男子目線(スロウカーブ)と女子目線(マリアージュ)の、ハイスクールライフの宝石のような風景だ。
 などと妄想していたら『放課後~』ラストサビ前の手拍子パパンに乗り遅れた。不覚! 悔しがる間もなく、続けて貴雄さんのドラムソロから、kpfでも登場した『サンポサキマイライフ』のイントロ。今度こそ乗り遅れないぞっと斎藤さんのギターに合わせて「ハイ!」と元気よく飛んだら周りの方が跳ねてなくて「あっ……」ちょっと赤面。
 そんな第2ブロックのラストを華麗に飾ったのは『桜のあと(all quartets lead to the?)』。そっか、「恋に短し愛に長し」な2人は、「ありえない不条理を吹き飛ばして」どこまでも行くことにしたんだね。よかったよかった、と脳内妄想は継続中。
 このブロック、4つの曲がドラムやギターの小さなソロを挟みながら途切れなく続いて、まるで組曲のようだ。こんな構成は初めてかも。で、『桜のあと』のアウトロがバーンと決まったところで「UNISON SQUARE GARDENです!」……いやいま名乗り! だいぶ遅いですね、私たちはもうすっかり盛り上がっちゃってますよ――ちょっと笑った。 

 再びの小休止後、始まった次の曲は『8月、昼中の流れ星と飛行機雲』。ライブで聴いたのはDr.Izzyツアー以来か。前のブロックからハイスクールライフ妄想が続いているので、さしずめこれは夏の終わりあたり? 「彼」は「君」の心にたどり着けたんだろうか、などと考えた。続いて季節が移り『5分後のスターダスト』、kpfからの続投だ。 好きな曲なので嬉しい……んだけど。
 赤から金木犀のオレンジ、そして紫へと変わりながらステージ全体を染める照明が、なぜだか不穏に感じた。なんでだろう、綺麗なバラードのはずなのに。kpfのときと照明が変わっているせい? それとも曲順のせい? まさかここから繋げようとしてるんだろうか、今日はまだ来ていないきていない「治安悪い」ブロックへ?
 モヤモヤしながら待ち構えていた次の曲は、イントロが軽妙でいて絶妙に不穏な『フィクションフリーククライシス』だった。前曲のオレンジに変わってステージを照らす鮮やかな青の照明が、いままでのきらきらハイスクールライフにちょっとずつおかしなズレ感を足してゆく。来る――絶対次来る、ヤバいやつが! 予感で胸がざわざわしてきた!
 予想通り、ここから怒涛の「治安悪い」ブロックに突入。「行儀よく侮ってんじゃねえよ」と『Hatch I need』、斎藤さんの「オンドラム、タカオ・スズキ!」コール、それに応えて貴雄さんが激しいドラムセッションをはさみ込んできたヤバイヤバイ『流れ星を撃ち落とせ』が続く。さっきまでのキラキラハイスクールライフはどこへ行っちゃった? どうしたハイスクールボーイ、何があった?! カラダは踊りまくっているけれど、予想外の展開に脳内妄想が追いつかない。そして貴雄さんがヘッドフォンを装着した。これは! ついにあの曲が来るか?!
 果たして次の曲は今ツアーの主役『カオスが極まる』、イントロ開始とともにいきなりステージに炎があがった! 御三方の左右に1本ずつ、リアル松明(?)登場。UNISONのライブではかつて見たことのない演出に軽く混乱する。だが月末に控えたW杯を思わせるような演出、カッコいい! ドラマチックな炎、激しく打ち鳴らされる貴雄さんのドラム、ベースを振り回す田淵さん、斎藤さんの「邪魔だ、すっこんでろ!」に聴衆のテンションは爆上がり。まさに「極まってしまった」——そしてステージが真っ暗になった。
 うわあ……なんだこれ。暗転の中、茫然と立ち尽くす。音が、大きなうねりになって襲い掛かってくるようだった。すごいものを見てしまった。この後いったい何が来るんだろう。興奮冷めやらぬ中、息を詰めて次の曲を待つ。

 「また春が来て僕らは 新しいページに絵の具を落とす」

 斎藤さんの声とギターが再び会場に響いた。『春が来てぼくら』しかもサビをギターだけで――美しいメロディと、まっすぐな透きとおった声が、散々揺さぶられた情緒に、身体に、染み透っていく。あぁ、終わってしまったんだね、ハイスクールライフ――なんだか寂しくなる。斎藤さんの優しい「花マルだね」に寄り添うようにイントロのドラムが入り、本日最後のブロックが幕を開けた。

 ライブが終わってからセットリストを何回も聴き返していて、この最後のブロックが、UNISON SQUARE GARDENというバンドの現在(いま)から原点まで遡る、彼らの集大成のようなラインナップだったのではないかと思った。最新曲『カオスが極まる』から田淵さんの自信作『春が来てぼくら』、最大のヒット曲『シュガーソングとビターステップ』と少しずつ時代をさかのぼり、初期の曲『フルカラープログラム』『箱庭ロック・ショー』、そして「ラスト!」の声と共に彼らにとっての特別な曲、『シャンデリア・ワルツ』
 『フルカラープログラム』では、若かりし頃のUNISON SQUARE GARDENがどんな音楽を鳴らしたいと思っていたかがこう歌われている。

「どうせなら この際なら 虹を作ってみよう」

 《虹》という単語に象徴される彼らの目指す音楽は、その後10周年・15周年の『Program continued』でも「あの日に見た虹みたいな音楽」と繰り返し歌われている。そしてこの夜のステージでは、虹色の光が歌う彼らの背後に立ちのぼっていた。その光景は「バンドが始まった時から、目指すものはたぶんひとつも変わっていない」ということを象徴しているかのようだった。
 そして『箱庭ロック・ショー』。kpfツアーで久しぶりに聞いた。あの時は2曲目だったが今回はラスト前、『フルカラープログラム』の次。この曲にも彼らの目指す音楽の形が歌われているのではないか、ということにいまさらながら気がついた。

「全てのストーリーを流線型にしたいくらい
 溢れ出す風景をステージ、そこに見たいくらい」

 kpfではMCがほぼ皆無で、参戦した物好きたちの間でも話題になった。もともと少なめではあったけど、今回も名乗りと挨拶だけ(他のアーティストのファンの方にこの話をすると驚かれることが多い)。でもficの前にいくつかのインタビュー記事を眼にする機会があり、田淵さんがその中で「前からMCなしのライブをやってみたかった」と話されていた。もしかしてこのスタイルが「全てのストーリーを流線型にしたい」ということなのかもしれない。kpfもficも、非常に緻密な構成のセットリストだった。もし途中でMCが入っていたら、ライブ全体の流れがわずかだが止まっちゃったかもしれない。斎藤さんのお喋りは聞きたいけれど、この形で良かったんじゃないかな……そんなことを考えた。
 そして今の御三方に、ステージから見えている風景はいかがですか? と聞いてみたくなった。あなた方の音楽にもらっている喜びとか楽しさとか幸せとか、そういういろんな思いが溢れ出ている我々物好きたちは、「溢れ出す風景をステージ、そこに見たいくらい」と歌っていた景色に近づいているだろうか。
 そう考えると、今回の2つのツアーにおける『箱庭ロック・ショー』は結構大事な存在だったんじゃないだろうか……なんて思った。まあ勝手な思い込みだとは思うけど。田淵さん、kpfの『箱庭ロック・ショー』はハズシ狙いで2曲目に持ってきた、みたいなことを言ってたし。でもその割にficで再びセットリストに入れている。しかも本編ラスト前に。
 たぶん、真意は本人にしかわからない、わかるまい。

 貴雄さんがどこかで「最近の田淵のセットリストはミステリーみたいだ」みたいなことを言っていた。kpf、ficどちらもストーリー性に満ちたセットリストで、私などは妄想が捗って仕方なかった。終わったあとでもこうして、あれこれ考えてさらに楽しんでいる。田淵さんは「ふらっと聴きに来て、『すごいの聴いたな、楽しかったな』くらいでいいんだ」とよく言っているけれど、それだけじゃもったいない。何度もいろんなことを考えながら聞ける、そんなセットリストであり、そんなライブだった。
 まあでも、こんなふうに勝手なことをあれこれ考えている私のような輩は、アンコールでやっつけられちゃうかもしれない。「偉そうなやつ 勘違いな奴 全部記載から除外してエンドロール」(『Cheap chaep endroll』)だし「目が覚めるまでそっとしといてほしい」(『ラディアルナイトチェイサー』)だし。「言葉にしようものなら 稚拙が極まれり」って、シュガビタでがっつり言われているし。それでも最後に「僕の手 握っていいから」(『君の瞳に恋してない』)なんて優しいことを言われて、えーやっぱり好き~! となってしまう。まったく……最後まで油断ならないな。

 今年の予定はこれにて終了。年明けあたりから【新曲→FTH8→kpf→新曲→fic】とずっとお楽しみが続いたが、年末の一連のフェスに遠征する予定はないので、あとは年明け、kpfの円盤が届くのを待つのみである。今、とても寂しい。そして早く新情報が来ないかな、とMMMのジャケのキリンさんのように首を長くして待っているところである。
 やっぱり私はUNISON SQUARE GARDENの全部が好きだ。来たるべき2023年も、できる限り追いかけていく所存である。          《了》

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