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万華鏡みたいな、輝く夜に〜『kaleid proud fiesta』ライブ

 チケットをご用意されてから5ヶ月、指折り数えて待ちに待ったその日がとうとうやってきた。我が最愛のバンドUNISON SQUARE GARDENシングルツアー『kaleid proud fiesta』今宵はついに私の街で祝祭の鐘が鳴る。
  ツアー開始から2か月余り、「様子は知りたいけど、セットリストは知りたくない」という背中合わせの葛藤の中、開催日ごとにSNSをうろうろし、全国の皆さんの「ヤバい」「すごい」「楽しい」「カッコいい」の声を聴き、期待は高まるばかりだった。セトリばれ上等の私にしては珍しく、内容の詳細は知らないままその日を迎えた(多少の誤爆はあったけど)。
 さて当日、いよいよ開演時間。場内が暗くなり『絵の具』が流れ始めた。荷物を置いていそいそと立ち上がる。今日の席は過去イチステージに近くて真ん中寄りだ。紗幕越しに3人がそれぞれの定位置につく。そして、ピアノのイントロが始まった。
 ……いや、これは反則でしょ? 1曲目から『harmonized finale』? On the Seatでは最後の曲だったこの曲を初手で持ってくるなんて! しかも紗幕は下りたまま。時折うっすら見えるシルエット、ゆらりと揺れる大きな影。しょっぱなから盛り上がっていくぜぇ! と身構えていた思惑は見事に外された。昂ぶっていた気持ちが次第に凪いで、そしてサビでステージ上が一面の星空になる。あれこれ、もうライブ終わりだっけ? なんだか涙がにじんできたんですけど……斎藤さんの歌声が会場全体に満ち、みんながじいっと聴き入った。
 そしていきなり始まる2曲目『箱庭ロック・ショー』。照明がつき、幕が消え、いつもどおりの3人がおっきな音を鳴らし出す。我に返ったように会場全体が踊りだし、楽しい時間が始まった! この曲をライブで聴くのはもしかしたら初めてかもしれない。嬉しい! そのまま『世界はファンシー』(もちろんダブルピースで「ハッピー!」)、そして『シャンデリア・ワルツ』と続く。なんですかこのライブ終盤みたいなラインナップ! 何回も言うようだけど、まだ始まったばっかりですよね? と思っていたら4曲目の間奏で斎藤さんが! 目の前でソロを! いつも右か左に寄ってる席で、田淵さんは縦横無尽に来てくれるからこちらも「オー来た来た! やってるねえ!」なんて手を振っているのだけれど、斎藤さんのソロを間近で観たのは初めてだ。恍惚としてギターをかき鳴らすその姿のあまりのカッコよさに、心の中で「ギャーーーーー!!!」と叫びながら千切れるほど手を振った。眼福でした。
 ここでインターバル。こちらもいったんクールダウンする。1曲目の夢まぼろしのようなあの時間が嘘のようなその後の展開。初期・直近・そして特別な曲と、ラインナップもバラエティに富んでいる。この先いったい何が出てくるんだろう。わくわくが止まらなくなってきた。
 ひと呼吸おいた第2セクションは、<MMM>ブロックとでもいいましょうか(勝手に名付ける)、やや不穏な『capacity超える』から始まり『silent libre mirage』でちょっと持ち直したかと思ったら、そこから『Own civilization』『ラディアルナイトチェイサー』『fake town baby』と怒涛の過去最高「治安悪い」エリアに突入である(個人の感想です)。『ラディアル〜』はBSSS以来だろうか、MMMの悪コンビ『own〜』と『fake town〜』はお久しぶりだ。どれも好きな曲ばかり。いやー治安悪いの最高! 甘いか苦いか自分で決めるなら、絶対甘い方がいいじゃないですか。心中「わっるー!」(注:褒めている)と大笑いしながら堪能させていただいた。でも今回、田淵さんあんまり動いていない気がする。いつものあの暴れベースは何処へ? 調子悪いのかな、働き過ぎ? ちょっと心配になる。
 2度目の小休止を経て、斎藤さんが次の曲のイントロをつま弾き始めた。おお、『5分後のスターダスト』! またもやBSSSからの登板だ。
 この、普段のアルバムとはちょっと違うテイストの曲がてんこ盛りの『Bee side sea side』というアルバムが私はとても好きだ。だからBSSSツアーの時に「もう2度とやらない曲もあるかもしれないので、空に還すような気持ちで歌ってます」と斎藤さんに言われて「いやじゃ―そんなこと言わないでもっとやって!」と泣いた(心の中で)。今回、そこから2曲もエントリーされてとっても嬉しかった。しかもゴリゴリの『ラディアル~』とバラードの『5分後~』。バランスの取れた選曲はさすがである。
 続いて『弥生町ロンリープラネット』。パトベジツアーでは登板の機会がなくて残念だったので、ここで聴けて素直に嬉しい。さっきの治安悪々ゾーンとの対比がえぐいけれど、どちらも聴かせられてしまうのはやっぱり彼らの演奏の底力なのだろうなぁ。優しい声と美しい旋律の2曲、じっくりゆっくり聴かせてもらった。

 再び小休止が入り、貴雄さんのドラムソロが始まった。斎藤さんが規則正しく刻むメロディーに乗っかって、貴雄さんがマイクスタンドを叩く。でもそこ、楽器じゃないですよね? ちっちゃなアクションで叩いているのがとても可愛らしくて、先ほどまでのダイナミックなドラミングが嘘のよう。なんだか照明も可愛らしい色になっている。田淵さんはとみると、ベースを弾かず、そんな二人の掛け合いを、ニコニコしながら見ている。
 貴雄さんのテンションがだんだん上がってきた。そろそろ始まるかな、次は何だろう? ドキドキしながら待っていたら、始まったのは『ワールドワイド・スーパーガール』、続けてお初の『ナノサイズスカイウォーク』、どうしよう! カワイイが大渋滞です! ピンクからオレンジへという暖色系の照明が、曲の雰囲気に似合ってる。今まで青とか白の寒色系が主だった彼らのライブに暖色系の照明を持ち込んだ照明スタッフの方、本当に天才的である。ありがとうございます!
 ここからステージは最終章へ一気に加速。『サンポサキマイライフ』で一緒に「ハイッ!」と跳ね、『オリオンをなぞる』からのツアー表題曲『kaleid proud fiesta』へ怒涛のタイバニリレー。曲に合わせて光の粒が後ろへと駆け抜けてゆく。ああ、『オリオン~』のMVみたい。いまより若かった彼らが唄い、その脇を歌詞が駆け抜けてゆくあのMVと似ている気がして、なんだか懐かしい気持ちになる。走り抜ける光粒が星のようで、「かくして、快進撃は始まる!」という歌詞とともに、我々もヒーローと一緒に宇宙をハイパードライブしている気分だった。
 星空を走り抜けた余韻に浸る間もなく、次の曲のイントロが始まる。このイントロ、なんだっけ……あっ『CIDER ROAD』? じゃああれは星ではなくてサイダーの泡だったのね! なんてちょっとした驚きも仕込まれ、「ラスト!」の声とともに『10% roll,10% romance』。会場の興奮は最高潮のまま、本編は終了。前半、大人しい? と思っていた田淵さんだが、ラストパートではいつもの暴れベーシストになっており、通常運転のご様子。すると前半のあれはいわゆる「ペース配分」というやつだったのだろうか? そうだとしたら大人になったんだなあ……などと失礼なことを思ってしまった(スミマセン)。
 いやーでもまだここまでじゃ終われないでしょ! と拍手を続ける我々に応え、再び登場した彼らは、間髪入れずにいきなりの『cheap cheap endroll』。本編からの”roll”繋がり? お久しぶりの大好きな曲! 続いて、『シュガーソングとビターステップ』、やっぱりこれがなくちゃね! そして疾走感MAXの『場違いハミングバード』で、90分余りのfiestaは終演を告げたのだった。

 噂には聞いていたが、ほんとにMCは最小限だった。ツアー終了後のお話によると、「なんか要らないような気がして」なしになったとのこと。たしかに、MCなしでも成立しているセットリストだった。特に本編ラストパートは圧巻。『サンポサキ~』でエスコート、「心配ない、大丈夫さ」と誘い、『オリオン~』で「つながりたい」「一緒に探そう」、『kaleid ~』でともに走り出し、『CIDER ROAD』で「次はどこへゆこう?」と問いかけ『10%~』で「4年ぐらい(本音はこれからもずっと?)」踊っていたいと謳う。まるで一編の恋愛小説のようだった。
 もちろん田淵さんはいつも通り、どんな曲をやったら会場が沸くか、観客の反応が楽しいか、で決めていったのだろう。そこにストーリー性を見出しているのは私の勝手な妄想だ。しかし前回のパトべジツアーの時も今回も、終わってみると各々の曲が最初から最後までしっくりまとまって、きれいな円環を描いているような印象だった。春先に開催されたかかみが原航空宇宙博物館でのライブでも同じように感じた。
 そういえば、いつも始まってしまうと「体感5分」といわれる彼らのライブだが、私は今回、いつもより長く感じた。もちろん退屈したとかそういうことでは全然なくて、曲と曲の繋がりや彼らの奏でる音の厚み、演奏技術の巧みさや照明等の演出の妙など、見るべきところがたくさんあったからだ。その結果、終わった後の充足感が今までになく満ち足りており、それが「長い」という印象になったのだと思う。
 今、彼らは「円熟期」なのかもしれない。でもだからといって、今のUNISON SQUARE GARDENが「安定」とかいう言葉で言い表せるかというと、そんなことは全くない。ツアー中に発表された新曲『カオスが極まる』リリース(アニメとのタイアップ、『ブルーロック』は100万の味方を得たと思っていい)、それに伴う追加公演『fiesta in chaos』、そして「THE FIRST TAKE」への3人での登場……怒涛の攻勢に我々物好きたちはうれしい悲鳴である。これは次のアルバム、そしてその先のもうすぐ訪れる20年目のあれやこれやへの布石だろうか。期待はいやがうえにも高まっちゃうのである。

 ライブが終わったらすぐに感想を書けばいいのに、余韻を楽しみながらゆっくりと書いているものだから、いつもその間に「今後の新展開」の情報が出てしまう。そして毎度最後は同じような言葉で締めているような気がする。学習しないなぁ、自分。
 御三方は今日、この瞬間にも考え、動いている。その活動はUNISON SQUARE GARDENのみに留まらない。見ている方が心配になるほどであるが、「出来ることは全部やりたい」と常々公言している彼らなので、これでいいのかもしれない。我々は余計なことは心配せず、彼らに翻弄されながらついていくのが正解なのかな、と思う。そうしていれば、常に今よりもっとすごいところへ連れていってくれる。最新が最高にかっこいいのがUNISON SQUARE GARDENなのだから。
 次は『fiesta in chaos』。自由度の高いシングルツアー、セットリストは変わるだろうか? BSSSからの登板はあるか? 『カオス~』が悪そうな曲だから(偏見)アレとかアレとかと一緒に聴きたいな。あっでもアレとかアレみたいな綺麗めの曲も聞きたいな。
 そしてその次は? 予想(妄想)と期待はまだまだ続くのである。


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