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その世界が生まれた理由

       その世界が生まれた理由

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 その惑星は地球ではないが、しかし、かなり地球に似ている。全く同じと言っても良いくらいだ。その惑星は地球から遥か遠く離れた場所に存在している。地球からその惑星まで向かうとすると、光の速さを持ってしても百年はかかる。現在の地球人のテクノロジーレベルではとてもその惑星まで向かうことはできない。いや、時間さえかければ、今の技術でも決して行けなくはないのかもしれないが、しかし、それにしても歳月がかかり過ぎる。……そう、そうするには、あまりにも長い歳月が必要だ。気が遠くる程の……。

 既に述べたように、その惑星は実に地球に似ている。その惑星もやはり地球と同じように太陽とほぼ同程度の大きさと明るさを持った恒星の周囲を公転しているが、その惑星も地球と同じような幸運に恵まれて恒星との距離をちょうど良い位置に保っている。従って、その惑星は灼熱地獄になることもなければ、氷点下何百度という極寒の世界になることもない。水が液体で存在することができ、気温も暖かく……もちろん、地球と同じようにその位置によっては暑すぎたり、寒すぎたりするわけだが、しかし、ほとんどの位置においては過ごしやすく、少なくとも耐えがたい程ではなく、地球と同じように生物が繁栄している。更にはその惑星には地球と同じように月まで存在している。……そう。何度も述べているように、その惑星は極めて地球に似ているのだ。俯瞰で見ると、全く地球と区別がつかない。もし、一目で違いがわかる点があるとすれば、それはその惑星が存在している宇宙の位置だけということになるだろう。既に述べたが、その惑星が存在しているのは、我々が存在しているこの太陽系ではないのだ。

 先程、この惑星では生物が繁栄していると述べたが、その惑星で繁栄している生物の姿もだいたいにおいて地球と似ている。もちろん、何から何までも同じというわけではないが、しかし、だいたいにおいて似ている。植物においてもそれは同じことが言える。だいたいにおいて似ている。しかし、だいたいの話なので、詳しく見ていくと、やはり地球とは違った点が存在することもまた確かだ。いつくかの生物は、地球に存在する生物とはその姿がかけ離れて違っている。恐竜ように、いやそれを超えて遥かに図体が馬鹿デカく、グロテスクで、凶暴な生物が存在する。またそこまで大きくはないが、しかし、その凶暴性においては大型生物と引けを取らず、やはり外見はグロテスクという生物が存在する。そしてそのうちのいくつかの種は、その惑星の代表的な知的生物と匹敵するくらいの知能を持ち、ある種の文明さえ築いている。更には、植物と動物の両方の特性を合わせ持った生物が存在する。それらは植物でありながら、移動することができ、動物と同じように意志を持つ……。

 というわけで、その惑星に住む生物の様相は、多少、地球とは異なっている。でも、大まかに言えば同じである。朝になって日が昇り、夜になると日が沈む。春があり、夏があり、秋があり、冬がある。あるいは全く四季が存在しない地域も存在する。空は青く、海も青い。海には大小様々な形をした大陸が散らばって存在している。もちろん、小さな島々も存在する。強い者が弱い者を食べるという食物連鎖が存在し、だいたいの生物は交配によって子孫を残す。

 ところで、先程簡単に述べたように、この惑星には地球と同じように知的生命体が存在する。そしてここで述べるのは、その惑星の代表格である知的生命体のことだ。前述した、知性を持つ、怪物のことではない。彼らは驚くべきことに、地球人とそっくりそのまま同じ姿をしている。どうして進化の過程が全く異なっているはずなのにそんなことが起こり得るのかと疑問に思った方がいるかもしれないが、しかし、そんなことを私に訊かないで欲しい。とにかく、いるものはいるのだ。二本の脚で直立歩行し、猿から進化したのだろうと思われる、知的生命体が。ひとと全く同じ姿形をした種が。そして、ここでわたしが語りたいと思っているのは、この惑星に存在する人型の生命体についての物語だ。この物語は、あるひとにとっては興味深く感じられるだろうし、またあるひとにとってはひどく退屈に感じられるかもしれない。いや、もしかすると、ほとんど全てのひとにとって、この物語は退屈と感じられるのかもしれない。しかし、だとしても、私はこの物語について語りたい。なぜならば、物語がわたしに物語られるのを望んでいるのを感じるからだ。だから、わたしは語る。とはいえ、先にも述べたように、これからわたしが語る物語は退屈である可能性が高い。従って、あらかじめ申し上げておく。少しでも時間を無駄にしたくない方は、即刻この本を閉じられんことを。

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