おすすめ
「オススメの映画教えてください!」
映画好きにとってこのひと言は、ほとんど告白のようなものと言っても過言ではない。
年間百本以上鑑賞するような映画好きが観てもらいたい映画は大抵、地中の深くに埋まっていて、サブスクの「あなたへのおすすめ」になんて出てこない。わざわざ探さなければ出会えない作品を見つけてもらいたいし、もっと言うとそれを見た感想について語りたい。そう、結構面倒くさいのだ。
だからそのセリフを言われると、え、良いの?教えて良いの?本当に観てくれるの?となる。それで「へぇ!おもしろそう!今度見てみるね!」なんてことを、例えば気になっている人から言われたりなんかした日には、マスクの下で口角が逆ジョーズになってしまうことを避けられない。
だけど実際のそれに大した意味はなく、お世辞とか社交辞令の類いであることがほとんどである。基本的にはこれを理解しているからこそ、好きな分野の中から選ぶとき、誰かにオススメするときにはかなり慎重になる。
なのに我々ときたら、いつまで経ってもその映画を観た感想を言ってこないからといって「そういえば〇〇観た?」なんてデリカシーのない言葉を時々口にする。すると大抵何かを思い出すような顔をしてから「あ、ちょっと忙しくてまだ…」と彼女は答えるのだ。無論、今の一節のフィクションに登場した“彼女”は何一つとして悪くない。
別に何かを期待しているわけじゃない。
でもさ、そりゃあホントは(ここから早口)週末とある映画の同時上映でたまたま観た市川準監督『ざわざわ下北沢』に出てる若い頃の小澤征悦がかっこよかった話とか、シュワちゃん主演の『ラストアクションヒーロー』のメインテーマを帰り道で久々に聴いて、テンション上がったからサビが来るたび一人で歌ってたら前を歩いていた女子高生が急に早足になった話とか、すれば必ず盛り上がるはずだって…期待しているわけじゃない。
とはいえこれがたまに、ほんのたまにヒロインとしておれの目の前に登場することがあったとしても「おすすめの映画、DVDあるんだけど今度ウチに観に来る?」という正解や模範解答みたいなオチを筋書きすることはなく、「あ、よかったら貸すけど…あ、でもBlu-rayだから観れないか…あ、そっかじゃあゲオとかでレンタルするしか…あ、でもほんとに暇な時で良いから…」みたいな誰のためかわからない気遣いの台詞を採用するわけで、自分の人生というシナリオをどんどんつまらなくしていることに気づく。
でもさぁ、ただ好きなものをただススメているだけなのに、どうしてこんなにも気を遣わなければならないのだ!勘違いすんなよな自分!これはあくまで「おすすめ」の話であって、それ以上でもそれ以下でもないのだから。
だから、何が言いたいかというと、おれは映画に限らず人に勧められたものは出来るだけ観るし聴くようにしているということだ。なんなら勧められてはなくても話の中で出てきたものに、次その人に会うまでに触れておく努力をする。「あ、そういえばこの前…」みたいに話すとこれが案外喜ばれたりすることを知っているからだ。
少し前、K-Popファンの友人からTWICE(多国籍ガールズグループ)を勧められた時、とりあえずサブスク会員のApple Musicで聴いてみようと検索したが、その友人にどの曲を聴けば良いのかを聞き忘れたことを思い出した。ランキング上位の曲かそれとも最新の曲か迷っていたが、そこで見つけたのが『はじめてのTWICE』というプレイリストだ。Apple Musicが厳選した、そのアーティストの曲を入門編的にリストアップしたものである。
早速シャッフル再生で何曲か聴いてみた。普段はほとんど好んでは耳にしないジャンルの音楽と言葉に戸惑ったが、聴いているうちに心なしか元気になっていて、なんなら頭でリズムを取っている自分がいた。
この「はじめての〇〇」というプレイリストはある程度人気のアーティストにはそれぞれ作成されていて、その人の曲を初めて取り入れようとする人にはとっても便利だと思う。さすがApple、おすすめというのはこれで良いのかもしれない。ちなみに今のところ最も気に入っている曲は『What is Love?』だ。
後日、TWICEをおすすめしてくれた友人に、この話をするとやはり喜んでくれた。ただ、喜んでくれたのは間違いないのだが、曲のMVなどの映像はまだ一つも観てないと話すと呆れた顔をされた。K-Popはダンスなどのパフォーマンスもありきで楽しむものらしい。
急いで観たけど『What is Love?』のMVめちゃくちゃ良かった!好きな映画のワンシーンが沢山出てきたし、なによりみんな可愛い…。
そもそもTWICEというグループ名の意味は「いい音楽で一度、素晴らしいパフォーマンスで2度魅了させる」というのも今更ながら初めて知った。それもめちゃくちゃ良い。
みんなのオススメ教えてください。
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